竹の妖精 1
夕方になり、今日の動物園は終わりです
「じゃあ、タンタンお疲れ様 また明日ね」
飼育員さんはタンタンに言いました
「お疲れ様なの また明日なの」
「タンタン、その竹…」
飼育員さんは言いかけてやめました
「なあに?」
「何でもないよ 大事そうに持ってるから」
「ええ、これは私の大切な子供なの」
「そうだね ではまた明日ね」パタン
飼育員さんは帰っていきました
「さあ、一緒に帰るなの」
タンタンは電気を消して戸締りをすると竹を大事そうに抱えながら家(旧ハンター住宅)に向かう坂道をてくてくと歩いて行きました
カチャ
「ただいまなの お茶を飲んだらお風呂に入るなの」
タンタンは竹にそう話しかけるとお湯を沸かし、洗面器にお湯を入れはじめました
「バスタオルを持ってくるなの」
バスタオルを持ってくると洗面器のお湯の温度を確認してゆっくりと竹を洗面器に入れました
「気持ちいいかしら? ゆっくり浸かるなの」
竹を沐浴させるとバスタオルで包むようにくるんで、暖炉の傍に行きました
暖炉のまきに火をつけるとゆっくりと暖かくなってきました
「風邪をひくといけないからここで大人しくしてるなの」
暖炉から少し離れたところに椅子があり、タオルで包んだ竹をそこに置きました
タンタンはお茶とティーカップ、そして哺乳瓶に入ったミルクを持ってきました
「ミルクを飲むなの」
タンタンはわかってます そこにいるのは「竹」であることを
でも、わかっていてもそうしたい自分がいます
竹にそっと哺乳瓶の飲み口を近づけました
「私はお茶を飲んで少し休むなの」
タンタンは自分用のティーカップにお茶をいれると椅子に座り、タオルで包んだ竹を膝の上に乗せました そして優しくなでました
暖炉の暖かい炎がタンタンを包みます
時折、パチパチという音がしてました
竹の妖精 2
「おかん、おかん」
「あら? 今声が聞こえた気がしたけど」
うとうとしていたタンタンは目を覚ましました
バスタオルにはこちらを向いてる赤ちゃんパンダがいます 膝の上に重みを感じます
「おかん、おなかすいたー」
「あ、ミルクね 今あげるなの」
タンタンはミルクをあげようとして、冷めてることに気が付きました
「まって、ミルクが冷めてるから温めてくるなの」
「ぬるめでいいでー おかん」
「わかったなの」
タンタンは急いでキッチンに向かうと哺乳瓶を湯煎で温めました 程よい温度になり、暖炉の前に戻ると赤ちゃんパンダにミルクを飲ませました
「どう?」
「ゴクゴクゴク うまいで おかん」
哺乳瓶のミルクはあっという間になくなりました
「やっぱりおかんが作ってくれたミルクはうまいわ」
「ところであなたは誰なの?」
「ぼくはさっきからここにおるよ お風呂にも入れてもらったし」
そう、それはタンタンが大事に持っていた竹が赤ちゃんパンダになった姿なのでした
赤ちゃんパンダの割りにはよくしゃべります
「あら、そうなの」
タンタンは嬉しくなってぎゅっと抱きしめました
ほのかな竹の香りがしました
「おかんがずっとあやすから、おかんの想像してる姿になったんやで」
「嬉しいなの」
タンタンは嬉しくて何度も赤ちゃんパンダに頬ずりをしました
「くすぐったいやで おかん」
「いいなの これはおかんの特権なの」
「おかんいい匂いがする」
「そう?」
「うん 安心する匂いや」
タンタンは赤ちゃんパンダを抱きながら眠りにつきました
翌朝、タンタンが目が覚めると赤ちゃんパンダの姿はなくタオルに包まれた竹がありました
よく見ると竹には模様があり、笑顔になってるように見えました
「竹の妖精さんが来てくれたなの」
タンタンは愛おしそうにその竹を見つめていました
おわり
???
泣ける
>>323
タンタンさん…(ノω・、)
前のお話の時もだったけど、タンタンさんが電気消して戸締まりしておうちに帰るところ可愛くて好き
>>322を書いた者です
タンタンがにんじんや竹を抱いて偽育児をしてるという話をヒントに書いてみました
あまり暗い雰囲気にならないように、赤パンにはあえておかんと呼ばせてみました
一日の終わりにじんわりじんわり心に沁みるお話ありがとうございます
おかんの特権に視界がぼやけて鼻の奥がつんとなりました
おしゃべりな赤ちゃんと特権を使いまくるタンタンさんに涙腺崩壊
お話ありがとう!
※見出し画像に写真お借りしております。ありがとうございます。