一杯のラーメン-2020/10/08(木)

「ラーメン一杯いただきたいんじゃが、まだいいかね？」
「まあいらっしゃいませ！お久しぶりですね、どうぞどうぞ」
「お久しぶり、このご時世でも相変わらず繁盛しとるようじゃの」
「ええ、ありがたいことです。お冷やどうぞ」
「ありがとう、お嬢ちゃんは元気にしとるかね？」
「はい、おかげさまで。今夜はラーメンだけでよろしいんです？」
「腹は減っとるんじゃが、これからちょっと出かけるもんでな」
「こんな時間からですか？このご時世に相変わらずお忙しいこと」
「ふふふふ」
「あ、お孫さんには会いました？ママとパパが引っ越して寂しがってないかしら」
「そう思ってさっき顔を出したんじゃが、まあ良う寝とったわ」
「あらまあさすがと言うか、あの子らしいと言うか。将来きっと大物になりますよ」
「そうだといいのう」
「はい、ラーメンお待ちどうさま」
「おお、ありがとう」
「ちょっと暖簾と提灯を下げてきますね、ごゆっくり」

このラーメンを食べたら、ワシは全ての子や孫たちに会いに行くんじゃよ。
達者で過ごせと。いつもワシはお前達を見守っておるぞと、そう伝えにな。

「灵灵さん！外で秋の虫が鳴いてますよ、お帰りになる時にちょっと聞いてってくださいな」
「ほう、では秋の虫に導かれて行こうかの」
「あら、もうお行きになるんです？」
「うむ、ご馳走さん。ありがとう」