茶館・おしゃべりタンタン ~6月のティーパーティー 後編
神戸の素敵なカフェ「茶館・おしゃべりタンタン」の出窓に置かれたローズマリーの鉢植えに、
小人さんサイズの2人の幼いパンダ達を見つけてしまったプミピキプルの3人。
まるで妖精のような不思議な赤ちゃんパンダ達に、プミの目がまん丸に見開かれます。
『ややっ!! こんなところに赤』
赤ちゃんが…と叫びかけたその瞬間、
『シーーーー!!』
2人の子パンダが口に指を当てたので、プミは慌てて口を閉じました。
“シーー…でしゅか…?”
手で口を抑えながら目でそう問うと、子パンダ達は、うんうんと頷きます。
“シーと言われても、こんな不思議なものを見て黙っているのは難しいでしゅ…”
と、そう思って目を白黒させるプミの後ろから、突然現れたキョ…それなりに大きな影が!
『大きな声出して、どうしたの? こんなところに、あか…? あか、ってなぁに?』
様子を見に来たシンコさんに声をかけられたのでした。
プミーーー!!! ピギャーーー!!! プルーーーー!!! 3人は、まるで自分たちが悪いことをしたように驚いて飛び上がりました。
シンコさんには二人の子パンダは見えないようで、にこやかに首をかしげているだけです。
その向こうでは、ファミリーの大人パンダ達も全員こちらに注目していました。
『あか…あか…は…でしゅね、えっと…』
焦りながらプミがちらっと赤ちゃんたちを見ると、やはりシー!シー!と指を口に当てています。
『えっと、えっと、あ、あ、あかっ、あか……』
お母さんの追及と、不思議な子パンダ達のシーシーに挟まれて、滝のように汗を流したプミは頭をフル回転させてついに叫びました。
『あかあか……あああああアカペラでっ!!
あああああ赤べこの歌を唄いましゅ!!! (手拍子パパンがパン)
ア、ソレ♪ あかベコあかベコ♪ あかベコ音頭ぉ~♪ ハァ~ソレソレ♪
こんなトコロにあかベコが! アソレ♪ あんなトコにもあかベコが! ア、ソイヤ♪
赤い牛しゃん、ちょいとつつけば~、お首ふりふり、べっこべこ♪
…はい皆さんでご一緒にでしゅ!!』
2
ご一緒に! の言葉と共に振り返ってこちらを見たプミに、ピキプルの2人は再び飛び上がりました。
『あわわ、こっち見んな! …あああアカペラってうちらも歌うんかいな…あかベコ、あかベコ~♪』
『あうう…あかベコあかベコ…あかベコってなんでちゅか~♪』
3人は必死で赤ベコのように首を振り、ぐるぐる輪になって歌い踊り、最後にはみんな目が回ってコテンと転がりました。
大人たちは『わぁ、上手上手! ヤンヤヤンヤ』『面白い歌ねぇ、でもどうしてあかベコなのかしら』と微笑ましく見てからまたお茶タイムに戻ります。
タンタンは優しい目で見守ってから、背中を向けました。
『フーフーフー…よち、完璧にごまかちたでしゅ。思わず、赤ちゃんがー、と言ってしまうところでちた』
『ゼイゼイ…満腹時のダンスはきつい…目が回った…ヘタリコミー』
『ハァハァハァ…おめめぐるぐるでちゅ……ハァ…あか、あか…べこ…』
『プル子、もうええんや、プル子はよう頑張った! え? 赤ベコって何かって? プル子が生まれた時みたいにヘドバンする可愛いウシさんやで』
床にへたりこんで息を切らす3人をよそに、
『ウフフフ…あかベコあかベコ♪』『クスクス…楽しいね♪』
ローズマリーの枝から、不思議な子パンダ達は面白そうに歌います。
『のんきでしゅねぇ…誰のせいで赤べこダンスするはめになったと思ってるでしゅか!』
『いや、おおむね先輩のせいやで』
『ごめんなさいなの』『でも、ぼくたちのこと、ママにはないしょなの』
子パンダたちは申し訳なさそうに頭を下げました。
よく見ると女の子は手足が短くて可愛らしく、男の子はおっとりした雰囲気です。
赤ちゃんに見えますが、話すことは舌っ足らずながらもしっかりしていました。
『どうしてあなたたちは大人には見えないんでしゅか?』
『そういうものなの』『ちいさい子は、ぼくたちに近いからすぐ見えるの』
不思議な話ですが、確かに年齢が幼いほどこの子達の姿が早く見えるようでした。
『双子でしゅか?』
『ううん、あたしがおねえちゃんなの』『ねぇねは、ぼくよりひとつ、としうえなの』
その割にはお姉ちゃんの方が体が小さいのが謎でした。
『お名前は?』と重ねてたずねると、
『…あたしのおとーとは、おとーとなの』『ぼくのねぇねは、ねぇねだよ』
そう答えて、2人は困ったような顔をしました。
“おとーととねぇね…って、もしかして決まったお名前はないのかもしれましぇんね…”
“そうやな…”
プミピキは目くばせして、ちょっと舌っ足らずの2人の言葉通り、姉は「ネーネ」弟は「オトト」と呼ぶことにしました。
ネーネとオトトは、代わる代わる自分たちのことを話してくれました。
『あたしたち、ふだんは梅梅保育園ってところにいるなの。おともだちはいっぱいいるし、すきなときにママが見られるし、
パパも会いにきてくれるなの。ママのおともだちの錦竹おばちゃまもきてくれたなの。初代コウコウって呼ばれていたそうなの』
『おみせの日はここにきて、ママのおてつだいするの。お客さんがいっぱいきて、ママも楽しそうだからうれしいんだ』
『じゃあ、さっき砂糖壺にお砂糖を入れたのもあなたたちでしゅか?』
『そうだよ。ぼくたち、おさとうみっつずつ持ってはこんだの』
『うん、ママのおてつだい楽しいなの』
プミピキの2人は、ちょっと顔を見合わせました。
『タンタンさんがママなんでしゅか。じゃあどうしてタンタンさんにもあなたたちのこと内緒なんでしゅか?』
『そうや、なんで、シーー! なんや?』
『…あたしたちのことを思い出すと、ママはいつもかなしそうになるなの』
『うん…だからぼくたち、ママのまえには姿をあらわさないようにしようって決めたの』
『そのうちママがこのおみせをはじめて、このドールハウスをつくったから、あたしたちここでおてつだいしようって決めたなの』
『ママはたくさんおようふくつくってくれて、おもちゃもいっぱいそろえてくれたんだ!』
『うん、あたしたち、よるはドールハウスに泊まったりするなの』
2人はとても楽しそうでした。
そしてそんな2人がどういう存在なのか、もうその頃にはプミピキにはなんとなく分かったような気がして…だから、何も言えなくなってしまいました。
黙ってしまったプミピキの2人の代わりに、プルが無邪気に話しかけます。
『お泊り、たのしそうでちゅ。ちっちゃなおうち、とってもかわいいでちゅね』
するとネーネとオトトはローズマリーの枝から飛び降り、3人に向かって手を差し伸べてこう言いました。
『かわいいドールハウスでしょうなの。ママがつくってくれた、じまんのおうちなの!』
『よかったら招待するよ! ぼくたちの手にさわってね!』
『あいっ! ごしょうたい、ありがとうでちゅ!』
目を輝かせてそう言うなりプルが手を伸ばし、オトトの小さな手にちょこんと触りました。
『えっ、プル子、待ちや!』
『ちょっと待つでしゅ、ああっ、どうなるんでしゅか…ああん』
慌ててプミピキも手を伸ばし、その手がネーネの両手に触れて…するとどうでしょう。
3人の体はみるみる小さくなり、気が付くと、見上げるばかりの大木になったローズマリーの根元の苔の上にみんなで立っていたのでした。
『…みんな、小さくなっちゃったでしゅ…』
『うわ、えらいこっちゃ』
『わーい、ごしょうたいでちゅ!』
驚く3人に、今では普通の子パンダサイズに見えるようになったネーネとオトトがにっこりします。
『さあ、どうぞなの。おうちにしょうたいするなの』 『ようこそ、おじょうさまたち』
そしてドールハウスの木の扉を開け、3人を招き入れてくれました。
そこは、なんて素敵なお屋敷だったことでしょう。
タンタンのドールハウスは小さくなって中に入って見てもしっかりした作りで、趣味の良い家具や小物が並び、
手作りのカーテンやクロスは優しい色合いで、アンティークな雰囲気の中にも居心地良さそうな暖かさを感じます。
レンガの暖炉にはいつの間にか本物の火がゆらめき、ケトルが湯気を上げて、まるで童話の世界に入り込んだようです。
『ママがたくさんお洋服つくってくれたなの。きせかえごっこして踊りましょうなの』
ネーネが3人を二階に誘います。
広い階段を上ると、ネーネは衣裳部屋の扉を開けてたくさんのドレスを見せてくれました。
どれもタンタンの手作りの色とりどりの美しいドレスです。男の子の衣裳もあります。
でもその時プルピキの2人は、踊り場の壁にかかった絵の方に見入っていました。
それは幸せな家族の肖像画でした。
優しそうなお父さん、ちょこんとした手足の可愛いお母さん、明るく笑う2人の男女の子供たち。
ミニチュアとは思えない精巧な絵にこめられたタンタンの思いが、2人の胸に染みてくるように感じられるのでした。
『…ピキしゃん、今日はあの子たちといっぱい遊んで、楽しい思い出を作るでしゅよ』
『そうやな。楽しいこといっぱいするやで』
そんな言葉を交わし、頷き合い、プミとピキはニコニコと笑いながらネーネとオトトと一緒に衣裳選びを楽しむのでした。
さあ、素敵なドレスを着て、舞踏会のはじまりです!
プミは白い小花をあしらった林檎色のドレス、ピキはカナリアイエローのドレスの胸に虹色のスカーフをリボン結びにして、
プルは楓の葉のような赤のフリルたっぷりの膝丈のドレス、ネーネは柔らかそうなピンクのシフォンのふわふわドレスに薄紫のサッシュを巻き、
オトトは緑のチーフを覗かせたブルーのタキシードに身を包みました。
会場はローズマリーの鉢の上。緑の苔がふかふかの絨毯のようです。
『すてきなおじょうさま、お手をどうぞ』
オトトが気取ってプルに手を差し出すと、プルもすましてその手を取ります。
ネーネが落ちていた小枝をタクトのように振ると、頭上のローズマリーの薄紫の花々が揺れ、不思議な優しい音楽が流れ出しました。
『わぁ、お花が音楽を演奏してるでしゅ』
『鈴みたいな不思議な音やな』
千の鈴を振るような可愛らしい音楽にあわせて、苔の絨毯の上でオトトとプルが踊ります。
愛らしいカップルのダンスに、みんな手拍子で応援しました。
と、そうしてにこやかに手を叩いていたプミの背中を、誰でしょう? 誰かがトントンと叩くのです。
『…ハイなんでしゅか? ……キエーーーーッ!!』
振り向いたプミは、思わずコンニャロの態勢になりました。
そこにいたのはオレンジ色のにくい奴…プミと同じくらいの背丈のニンジンが、何を思ったのかタキシードを着て立っているではありませんか。
『あっ、ニンジンさん竹さんペレットさんも来てくれたなの。ママが可愛がって育てたから、ときどき遊びにきてくれるなの』
ネーネの言葉に見てみれば、同じくタキシードを着た竹と、おやつのペレットも立っています。
なんてシュールな眺めなのでしょうか。
しかし、偽育児とはいえタンタンが育てたと聞いては、ニンジンとてコンニャロするわけにはいきません。
いきませんが、どうやらニンジンさんはプミにダンスを申し込んでいる様子です。プミの額にたらりと汗が流れました。
『えっと、あの…ああーん、なんて素敵な竹しゃんなんでしょう! プミはもう竹しゃん以外は目に入りましぇん! ああ竹しゃん!!』
叫ぶなり、プミはダダダっと竹に向かって突進しました。
6
『…ニンジンさんを避けたやな。あの、うちがお相手させていただくやで。シャル・ウィ・ダンスや』
ピキがニンジンの手(?)を取って、ローズマリーの舞踏会会場は、プルと竹さん、ピキとニンジンさん、ネーネとペレットさんのダンスが始まりました。
様々な音階の鈴の音が曲を奏で、柔らかい緑の苔を踏んで。
みんなさっき赤ベコ音頭でへとへとになったことも忘れて優雅に踊ります。
ネーネとオトトが、鈴の音にも負けないような可愛い声で嬉しそうに笑います。
それはとても素敵な舞踏会でした。
やがて踊り疲れた5人は竹やニンジンさん達と別れ、ドールハウスに戻りました。
ネーネがタンタンそっくりの手付きで淹れてくれたお茶をバラの絵のティーセットでいただいて乾いたのどを潤し、ドレスを脱いで、二階の寝室に上がります。
『ここがあたしたちのおへやなの。おおきなベッドだから、みんないっしょにおひるねできるなの』
そう言われて見渡すと、雲が浮かんだ青空の壁紙に、ローズマリーの苔に似た緑の絨毯が敷き詰められた素敵な子供部屋でした。
小さな木馬や天井から下がったブランコや、積み木やボールなどのおもちゃもたくさんあって、やはりタンタンの愛情を感じる部屋なのでした。
大きなベッドにみんなで寝転ぶと、窓からは花盛りのローズマリーの梢が見えます。
流れ込む香りが、とても心地よく感じられました。
『タンタンさんがローズマリーの香りが好きなのも、分かる気がするやで。気持ちを明るくしてくれる香りなんやな』
そう言ってピキが振り向くと、もうふかふかのベッドの上、プミもプルもネーネもオトトもすやすやと寝息を立てています。
『うちも眠くなってきたかな…』
大きなあくびをして、ピキもまぶたを閉じました。
7
『……なさい……起きなさい、みんな。もう、おいとまする時間よ』
『ピキ、プル、早よ起きや。お母ちゃん2人はおんぶ出来へんで』
耳になじんだ母の声。
プミピキプルの3人が目を開けると、そこは「茶館・おしゃべりタンタン」の出窓のそばのソファでした。
目をこすりながら起き上がり、振り向いてみても、ローズマリーの枝にもドールハウスにも、ネーネとオトトの姿は見えません。
それではあれは、夢だったのでしょうか。
…そう思いながら顔を見合わせたプミとプルは、すぐに笑って首を振りました。
もちろん、夢ではありません。
みんな一緒に、あのドールハウスで楽しい時間を過ごしたのは間違いなく、本当のこと。
本物のお友達が出来たことを、3人の心はちゃんと感じ取っているのでした。
見上げると窓の外の光は、少し午後の気配を感じさせる蜂蜜色になっています。
『タンタンさん、本当にお世話になりました。どのお料理もお茶も、本当に美味しかったわ』
『ぜひ、また来てなの。お待ちしてますなの。…それでね、シンコさん』
ふと見ると、帰り支度をしたシンコさんに、タンタンが声をかけています。
『これ、赤ちゃんのおくるみなの。二枚作ったから双子でも大丈夫なの。一人だったら洗い替えにしてなの』
『あら、いつもいただいてしまって、申し訳ないわ。こんなに綺麗な刺繍がしてあって…作ってくださるの大変だったでしょう。本当にありがとう』
『もらってくれたら嬉しいなの。お体大事にしてなの。良い報告を楽しみにしてるなの』
もうすぐ赤ちゃんが産まれるシンコさんに、いつものようにタンタンは手作りのプレゼントをしているようでした。
その様子を、プミピキプルの3人は、じっと見つめているのでした。
6月の夕暮れが、静かに空を美しい色に染めています。
タンタンは「茶館・おしゃべりタンタン」の今日最後のお客さんであるシロクマのみゆきさんとガチョウのおばあちゃんを送り出し、案内役をしてくれたガチョウのがっちゃんにお礼を言って木の実のタルトのお裾分けをして、のんびりと片付けをしていました。
その時、トントンと扉を叩く音がしました。
『…あら、どうしたなの。忘れ物なの?』
扉を開けたタンタンの目に入ったのは、ポーチに立っているプミピキプルの3人の姿でした。
『タンタンさんに、渡したいものがあって戻ってきたでしゅ』
『うちら、タンタンさんにプレゼントあげたいねん』
『プルプル』
そう言って差し出されたのは、可愛いラッピングの小さな包みでした。
『プレゼント…なの?』
不思議そうに受け取り、包みを開けてみると…そこには箱に入った二本のリボンが入っていたのです。
一本はピンクの地に薄紫の小花の模様のリボン。もう一本はブルーの地に緑の細い葉をつけた小枝の模様のリボン。
それはまるで、ローズマリーの花と枝をあしらったようなとても綺麗な二本のリボンでした。
『えっと、えっと、今日はとっても楽しかったんでしゅ。感謝の気持ちをあらわしたかったんでしゅ』
『それにタンタンさんはいつもうちら家族に素敵なものいっぱい作ってくれるんやから、そやから、たまには…』
『そうでしゅ、たまにはタンタンさんもプレゼントをもらうことがあってもいいと思うんでしゅ』
『そやけど、うちらお裁縫もできへんし、あの、ドールハウスにあったようないいものも作れへんし、それに』
…それに、あの子たちはもう何でも持っているように見えました。
あのドールハウスには、素敵な家具に食器に、どっさりの服、おもちゃにブランコに木馬、幸せな肖像画…まるでそこに2人の子供たちがいることを知っているかのように…そう、まるで母親であるタンタンが全てを知っているかのように…何もかもがそろっていたのですから。
だから、高価なものじゃなくても、ささやかでも、あの子たちに似合うと思った贈り物を選ぶことにした…。
でもその言葉は口に出さずに、3人はこれだけを言ったのでした。
『このリボン、女の子は頭につけたら可愛いと思うんや』
『男の子は蝶ネクタイにしたらかっこいいと思うんでしゅ』
『ぷれぜんとでちゅ、プルプル』
タンタンは、3人が代わる代わる一生懸命話す言葉をじっと聞いていました。
タンタンには分かったのです。
この3人が、カフェを出てから神戸の街を歩いて何か良いものはないかと探し回り、心をこめてこのプレゼントを選んでくれたことが。
『ありがとうなの。きっと喜ぶなの。タンタンも嬉しいなの。とてもとても嬉しいなの』
そう言って、タンタンは3人を抱きしめました。
抱きしめられたその暖かい胸の中で、プミピキプルの3人は目を閉じて大きく深呼吸しました。
タンタンの温もりは、お母さんの温もりでした。
人気者のタンタン。ファンも多く、贈り物もたくさんもらうこともあるでしょう。
でも、お母さんに送られる赤ちゃんのお祝いのプレゼントというのは、特別なものです。
いつもパンダファミリーや動物園の仲間に子供が生まれるたびに、お裁縫をして綺麗な贈り物をしてくれるタンタンですから、たまには、赤ちゃんへの贈り物を受け取る方になってもいいのではないかと思うのです。
だってタンタンは、とっても素晴らしいお母さんなのだから。
あんなに可愛い子供たちがいる、こんなに優しく暖かいお母さんなのだから。
そう思って3人は、お小遣いを持ち寄ってこのプレゼントを選んだのでした。
優しい夕暮れが「茶館・おしゃべりタンタン」の白い壁を茜色に染めて。
その澄んだ暖かい光の中で、タンタンはいつまでもプレゼントのリボンと子供たちを抱きしめていました。
10
夜になりました。
静かになった「茶館・おしゃべりタンタン」の店内で、出窓の近くのテーブルに小さな丸い灯りがひとつ、暖かくともっています。
お店の窓を閉め、カーテンを引いて、タンタンは大きな声で独り言を言いました。
『ああ、今日もたくさんのお客さんに来てもらえたなの。これもお手伝いしてくれている不思議な小人さんたちのおかげなの。
そんな素敵な小人さんたちに、とっても可愛い子供たちが贈り物をくれたなの。
女の子は頭にリボンをつけて、男の子は蝶ネクタイにしたらいいとすすめられたなの。タンタンも、きっと2人に似合うと思うなの。
タンタンからは今日のお礼にマッシュルームオムレツと翡翠寒天とカモミールティーを置いておくなの。お茶はミルクを入れてもおいしいなの。
でも小人さんたちはきっと小さい子だから、あんまり夜更かしはしないでねなの』
そう言いながら灯りのともるテーブルに、ドールハウスの食器と小さく小さく切ったオムレツと翡翠ぶどう、ミルクピッチャーに入れた暖かいカモミールティーとミルク、
そしてプレゼントの二本のリボンの箱をそっと置いて、
『寝る前には灯りを消してねなの。それでは、おやすみなさいなの』
優しく笑って、静かに扉を出ていきました。
ネーネとオトトは、すぐにテーブルの上に出てきました。
『クスクス…ママったら、小人さんたち、ってよんでたね』
『ウフフフ…ママはあたしたちだってこと、しらないなの。ずっとないしょなの。かなしませちゃいけないなの』
『うん、ないしょ、ないしょだね』
2人は顔を寄せ合って笑い、それからワクワクとプレゼントの箱を開けて歓声を上げました。
『すごいなの! あたしたち、はじめておともだちからプレゼントもらったなの! かわいいリボンなの! 』
『ぼく、ローズマリーの葉っぱのもようだね!』
『あたしはローズマリーのお花のもようなの!』
リボンを手に取り、頭に当ててみたり胸に当ててみたりして、2人は嬉しさに少し涙ぐんでいました。
今日は2人にとって初めての贈り物、そして素敵なお友達が出来た素晴らしい一日だったのです。
『きょうのおともだち、きっとまた来てくれるなのね』
『うん、きっとまた来てくれるよね』
今からその日が待ち遠しい2人なのでした。
きっと、プミピキプルの3人も同じ気持ちでしょう。
11
『さぁ、あたしはカモミールティーをカップにそそぎましょう』
『ぼくはミルクをいれるよ』
『ママのオムレツ、とってもおいしいなの!』
『ママのデザート、とってもおいしいね!』
カフェの外の夜空に浮かぶのは、童話の挿絵のような山吹色の半分のお月様。
白い壁と瓦屋根に降り注ぐ優しい月光の下で。
「茶館・おしゃべりタンタン」の6月のティーパーティは、こうしてまだまだ続くのでした。
おしまい
朝から胸がきゅーーーんとなるお話でした
タンタンさんの優しさがあふれてて、ねえねとおとともいい子でかわいい
ゴワゴワ2枚組買っておいてよかったです
今昔さん、とてもとても感動しました
ねえねとおととに初めての友達ができ、プレゼントに涙ぐむところで涙腺が崩壊しました
また今日もゴワゴワ使います モウ1セット カオウカシラ
ゴワゴワ10枚ください
あぁもうなんて可愛いお話なんでしょう!
朝から胸がホワホワしっぱなしです
初代コウコウさんのお名前が出てきたり、タンタンさんが大事にお世話をしたニンジンさん、竹さん、ペレットさんも登場するところに今昔さんの優しさを感じました
シャンちゃん、今日は休園日だけどゴワゴワのお洗濯で大忙しになりそうw
朝から何度も何度も読み返しています
優しさと思いやりとかわいさとちょこっとの切なさが詰まった素晴らしいお話にゴワゴワが手放せません
日本のパンダさんたちの歴史をよく知っているからこそ書けたお話なんでしょうね
今昔さんって優しい方なんだろうなぁ
今昔さん、優しさが詰まった素敵なお話ありがとうございます。
きっと今昔さんもお優しいのですね。
ゴワゴワ買い足ししなくちゃ
今日が洗濯日よりで良かった
料理や裁縫上手なタンタンさんとみんなの優しさにゴワゴワ必須でした