「 父・豪太の悩み 」
~ここは男鹿のしろくま一家のリビング~
今日は男鹿の水族館の休園日。
豪太さんとユキさん、そしてフブキくんはこたつに入ってのんびりとくつろいでいます。
男鹿はとても寒いので、三人はユキさん手作りの綿入れ半てんを着て、お部屋の中でぬくぬく温かく過ごしているのでした。
豪太さんは藍色、ユキさんは桃色、そしてフブキくんはブルーの半てんで、背中にはフブキくんの大好きな恐竜のアップリケが縫い付けてありました。
ユキさんは丁寧にむいたみかんをフブキくんの前にある小皿の上に置くと、フブキくんはおててをのばしてみかんを掴んで口に運びます。
「おみかんおいしー!おれ、おみかんだいすきー!」
フブキくんはみかんを飲み込むと、大きな声で嬉しそうに言いました。
「うふふ、おみかん美味しいわねぇ。あらフブキ、お口の周りおみかんで黄色くなっちゃったわね。拭いてあげましょうね」
ユキさんがそう言うと、フブキくんはお目目とお口をぎゅっとつむりました。
それがユキさんにお口やお顔を拭いてもらうときのフブキくんのお決まりのポーズなのです。
豪太さんは、ユキさんがフブキくんのお顔を温かいおしぼりで丁寧に拭いているのを寝転びながらじっと眺めていました。
「(ふふ、まったくフブキは甘えん坊だなぁ。まぁユキちゃんが可愛い可愛いって甘やかしてしまうからなぁ)」
豪太さんはそんなことをぼんやりと考えていました。
フブキくんは豪太さんの視線に気付き、ニコッと笑って、
「パパー!おみかんおいしいよ!はいっ!」
と言って、ユキさんにむいてもらったみかんを掴んで豪太さんに渡そうとおててを伸ばしました。
「お、おお、ありがとう、フブキ」
豪太さんはゆっくりと上体を起こして、こたつに入り直しました。
豪太さんがフブキくんから受け取ったみかんを口に入れると、フブキくんは、
「パパー!おみかんおいしい?」と聞いてきました。
「ああ、美味いな、みかん」
豪太さんがそう答えると、フブキくんは満足そうにニコーッと笑いました。
「フブキ、このおみかんとても甘くて美味しいから、次にベビールームに行くときにウタ先生とお友だちに持っていきましょうね」
「うん!おれ、もってきたい!あとね、あとね、おれも、おみかんむいてみたい!」
「分かったわ、じゃあ練習してみましょうね」
「うん!」
フブキくんはユキさんの隣に座って、ユキさんからみかんの皮の剥き方を教わることにしました。
豪太さんは再びユキさんとフブキくんのやり取りを眺めました。
ぼんやりと眺めていると、ふと最近水族館に来ている人間たちが口にしていた言葉が頭に浮かびました。
「ぽっちゃり王子」
「(…うーん…。まぁ確かにここのところフブキはかなり大きくなったからなぁ。…ぽっちゃりも可愛いけれど、少し運動させないといかんかなぁ…うーむ…)」
豪太さんは父親として何かできることはないかと考えました。
「(外は雪が降っているから家の中で何か…うーむ……お!そうだ!)」
豪太さんは何か思いついたようです。
「フブキ!」
「ん?なぁに?パパ!」
フブキくんはユキさんからみかんの剥き方を習っていたので、みかんを持ったままお顔だけ豪太さんの方を向きました。
「お相撲しようか!」
「…おしゅもう??」
「あら、フブキ、よかったわねぇ。パパが遊んでくれるって。ウフフ」
「おしゅもう!!する!!おれ、おしゅもう、だいすきー!!」
豪太さんはフブキくんが転がってもケガをしないように、こたつから少し離れたところで相撲をすることにしました。
ユキさんはフブキくんのおててがみかんだらけだったので、またおしぼりで丁寧に拭き取ってあげて、それからユキさんはフブキくんが着ている綿入れ半てんを脱ぐのを手伝ってあげました。
「これでいいわ。さあ、パパに遊んでもらってらっしゃい」
「うん!!」
フブキくんはパタパタ…と小走りで豪太さんの前に行きました。
「フブキ!まずな、こうやって両手を畳につけて、それから…」
「わーーーっ!!」
ドーーーンッ!!
「うわあああああ!」スッテン…ゴロン…
フブキくんは豪太さんが相撲のやり方を説明しているのなんかお構いなしに、勢いよく身体ごとぶつかっていきました。
豪太さんはフブキくんの力強い不意打ちを食らって、ごろんと転がってしまいました。
「いててててて」
「わーい!おれ、パパにかったー!かったー!」
フブキくんは嬉しくて、その場で両手をあげてピョンピョンと飛び跳ねて喜びました。
「まあ!フブキ、すごいわ!パパに勝ったのね」
「おれ、かったー!パパにかったー!」
「ハハハ…いやぁフブキは強いなぁ(あぁ驚いた)」
豪太さんは思いのほかフブキくんの力が強かったので、ぶつかられたところがかなり痛みました。
「(…最初はフブキを優しく転がして、お手本を見せてあげるつもりだったのに…これは油断ならんな…いてて…)」
豪太さんが痛みで顔を歪ませていたら、
「パパ…だいじょおぶ…?」
フブキくんが心配そうに豪太さんの顔を覗き込みました。
「あははは…大丈夫だよ。いやあ、フブキは強いなぁ!パパ、びっくりしたよ」
「うん!おれ、ちゅおいんだ!だってね、おれね、おっきいきょうりゅうしゃんみたいになるんだもん!」
「そっか!それじゃあ、もう一度勝負しようか!」
「うん!しゅるー!もっかい、おしゅもうしゅるー!」
豪太さんとフブキくんは向かい合いました。
「じゃあ構えてー…はっけよーい…のこっ」
「わーーーっ!!」
ドーーーンッ!!
「うわあああああ!」スッテン…ゴロリン…
フブキくんはまた豪太さんの掛け声を聞かずに突進していきました。
豪太さんはまたもやフブキくんに不意打ちを食らって転がってしまいました。
「いててててて…」
「パパー!だいじょおぶ?」
「いやぁ、あはははは…大丈夫だよ。フブキはいつの間にか、こんなに強くなったんだなぁ(いててて…)」
「あのね、あのね、ベビールームでもね、おしゅもうするんだよ!えとね、アルンちゅよいんだよ!だから、おれ、もっとちゅよくなるの!」
「そうか、アルンくんは大きいからなぁ。じゃあ、パパとお相撲の練習もっとしような」
豪太さんはそう言いながら、フブキくんの頭を優しく撫でました。
「さあさ、二人ともお腹すいたでしょう!休憩にしましょうか」
ユキさんはキッチンから重そうに大きなお盆にたくさんの食べ物を乗せて運んできました。
「わーい!おれ、おなかすいたー!」
「フブキ、おててを洗ってらっしゃい。あなたもこたつに座って」
「あ、ああ、ありがとう」
豪太さんは綿入れ半てんを着てから、こたつに入りました。
こたつに入ると、目の前には、
~お皿に山盛りになったから揚げと山のように積まれたおにぎり、たまご焼きにウインナーに、ピーマンとにんじんのごま油としょう油炒めとユキさんが漬けたお漬物~
が並んでいました。
豪太さんはあまりの量に驚いて、目をまん丸にして言いました。
「ユキ…ユキちゃん。ぼくはこんなに食べられな…」
「おれ、おててあらってきたー!」パタパタパタ
「えらいわね、フブキ。じゃあいただきましょうか」
「おててをあわしぇて、いただきまーしゅ!」
「いただきます!」
「いただきます…」
ユキさんはフブキくんの前に置いた大きめの取り皿に、から揚げやたまご焼きなどを食べやすいように取り分けました。
フブキくんはお腹がとても空いていたので、両方のおててでから揚げやおにぎりを掴んで勢いよく食べ始めました。
「フブキ、食べ物は逃げないからゆっくり噛んで食べなさいね。おのどにつかえてしまうわよ」
「はーい!パクパク モグモグ」
豪太さんはフブキくんの勢いに、驚いてしまいました。
「フブキすごいなぁ。こんなに食べるようになったんだな」
「うふふ、このところベビールームから帰ってくると、お腹すいたお腹すいた!って、まぁそれはそれはすごい勢いで食べるのよ。豪太くんは最近忙しかったから、フブキが食べているところを、しばらく見てなかったものね」
「あぁ、うん。だから、ここのところ急激に大きく成長したんだなぁ」
「豪太くんだって、これぐらいの歳のころ、きっとこんな風にたくさん食べていたと思うわよ」
「母さんが生きてたら聞いてみたかったなぁ。僕の小さい頃のこと」
「そうですねぇ」
「パパー!はやくたべないと、おれ、ぜーんぶたべちゃうよ!」
「あはは、こりゃ大変だ!うっかりしてるとフブキに全部食べられちゃうな」
「うふふ、フブキったら。フブキ、美味しい?ゆっくりモグモグするのよ」
「うん!おいしー!」モグモグ パクパク
「じゃあお夕飯が済んだら、今度はフブキの好きなブロックで遊ぼうか」
「あら、あなた。これ、お夕飯じゃないわよ」
「おやちゅだよねー!ママ!」
「ねー!うふふ」
「へ??」
豪太さんはしばらく状況が飲み込めなくてポカンとしてしまいました。
「これは…おやつ…??」
「今日のお夕飯なににしようかしら?まだ寒いから、きりたんぽ鍋にしようかしらね」
「ママー!ウィンナーいれて!おれ、ウィンナーだいすきー!」
「ふふ、分かったわ、ウィンナー入れましょうね。パパは何か入れて欲しいものある?」
「あ…ぼくもウィンナーがいいな。ビールに合うから…」
「フブキ、パパもウィンナーが良いって」
「パパ!フブキとおしょろいだね!」
「あぁ、お揃いだな、ハハ(でもまだお腹いっぱいだよ…)」
豪太さんはフブキくんの食欲の勢いに圧倒されてしまいました。
「(僕ももっと体を鍛えないと、これからもフブキと相撲するたびに負けちゃうなぁ…トホホ…)」
豪太さんはフブキくんの成長に感謝しつつ、密かにジム通いをしようかなと考えたのでした。
おしまい
ベビールームさん
朝からかわいいフブキくんいっぱいでほっこりしました
ちびまんじゅう王子と呼ばれた男の子も最近ばずいぶんと大きくなりましたよね
でもまだまだ甘えん坊さんなんですよね
アルンくんとフブキくんのお遊び相撲、男の子っぽくてかわいいだろうなー
ベビールームさん、かわいいお話をありがとシャンです
ユキさんの手作りはんてん、ビッグサイズですね
フブキくんもちびまんじゅうからぽっちゃり王子、あっという間に大きくなりましたねシミジミシジミ
この前動画を見たら茶色のクマさんがいて、あれ?フブキは?と思ってしまいましたよ、ええ
フブキくんちびまんじゅう王子からぽっちゃり王子へw
ホッキョクグマのオスは子供と暮らすことは絶対ないということで、こうしてお話の中でも家族団欒の世界があってよかったです。
恐竜のアップリケ付きの綿入れ半てんとかフブキくんがお口を拭いてもらうときのポーズとかもういろいろ可愛すぎる!!
そしてユキさんの作るボリューム満点のおやつがなんとも美味しそうで…w
ぽっちゃり王子はこれからもたくさん食べて遊んでどんどん大きく成長していくんだろうなぁ
ベビールームしゃん、今回もとても可愛いお話ありがとシャンでした!
ベビールームです
朝から長い投稿すみません!