「シンちゃん!お風呂あが」
「シーッ!」
リーさんがお風呂から部屋へ戻ると、シャンシャンも眠っていました。
シンコさんの左足を枕にして、ぐっすりと熟睡している様子です。
「シャンちゃんも寝ちゃったか」
「食べながら寝ちゃったの」
「ママの顔を見てほっとしたのかな」
リーさんは部屋の奥にあった竹の束を、シンコさんの側へ補充しました。
よく似た母娘を眺めながら、リーさんは小さな声で話し始めました。
「シャンちゃんのリュック、膨らみのわりに軽いなと思ったらさ」
「ええ」
「七夕のお飾りがね、いっぱい入ってたよ」
「小雅ちゃんと一緒に作ったのね」
「それと、まだ何も書いていない短冊も何枚かあった」
「今年は何をお願いするのかしらね」
「去年だっけ?『おりんごまるごとください』は」
「クリスマスと間違えてるわよねえ」
音を立てないようにと細い竹を選びながら、シンコさんは続けました。
「今年は『小雅ちゃんと仲直りしたい』…かな」
「そもそも喧嘩ってほどの喧嘩じゃないみたいだけどね」
「でもね、きっと初めてのことで動揺したと思うわ」
「僕やシンちゃんから叱られるのとは違うもんね」
リーさんもできるだけ静かに竹の葉をむしり取って、ようやく朝ご飯です。
「そうだ忘れてた、玄関の前で小Yさんに会ったんだった」
「そうですってね、さっき小Yちゃんからラインが来たわ」
「ごめんねうっかりしてて、素麺をいただいたんだ」
「その素麺だけど」
「うん」
「七夕の夜、小Yちゃんと小雅ちゃんを呼んで一緒に食べない?」
「さすがシンちゃん、それは名案」
「仲直りのキッカケは食べものが一番なのよ」
「そうだね、僕らみたいにね」
夫婦は顔を見合わせて、ふふふふっと静かに笑いました。
七夕物語~雨のち星空:10話
小雅ちゃんが東園の通用門へ着くと同時に、門から母ちゃんが出てきました。
待ち合わせの時間の5分前。まるで双子のように息の合った母娘です。
「母ちゃん!お弁当!」
「ありがとう小雅、暑かっただろう?」
母ちゃんはお弁当を受け取りつつ、小雅ちゃんの笑顔にほっとしました。
「母ちゃんあのね、百均でお買いものしてもいい?」
「いいよ、何を買うの?」
「お手紙を書く紙が欲しいの」
「便せんだね、線と線の間が広いものを選ぶといいよ」
「分かった!それとね」
「ん?」
「画用紙も買いたいけど、半分に折るから大きいのが欲しくてね」
「画用紙?」
「大きいのは枚数が少ないから、いつくか買わないといけないかも」
「おこづかいは足りそう?」
「足りるようにする!」
「もしも足りなくなったら母ちゃんに相談してね」
「はい!ありがとう母ちゃん!」
母ちゃんに見送られて、小雅ちゃんは百均めぐりに出かけました。
セリアにダイソー、ローソンストア100。選択肢はいっぱいです。
大きく読みやすい文字を書けるよう、罫線の間隔の広いレターセット。
そしてできるだけ大きくて、できるだけ枚数の多い画用紙を探します。
(シャンちゃん許してくれるかな…仲直りできるかな…)
まだまだ不安ですが、謝罪の気持ちに加えてもうひとつの思いがあります。
(もしも誤解してるなら、誤解だよって伝えて安心させてあげたい…)
小雅ちゃんは、もう泣いたりしません。
仲直りに向かって動き出した!
笑顔と涙のエンディングになりそう
今からゴワゴワの予約いいですか?
>>713
シャンちゃん、小雅ちゃんと一緒に作ったお飾りをリュックいっぱいに詰めてきたんだ…。・(つд`。)・。
いよいよ明日は七夕祭り
ふたりが無事仲直りできるよう、私も短冊に願いを込めようかな
リーちゃんとシンコさんの夫婦の語らいもとても素敵です
きっと仲直りできるよね
私もゴワゴワ借りなきゃ
小雅ちゃん、画用紙で何作るのかな
ニコニコしながら作業する姿を想像すると鼻の奥ツーンが止まりません
>>745
続きをありがとシャンです
大丈夫、うまくいくよ
健気な小雅ちゃんに1ゴワゴワ
うんうん
小雅ちゃん、お姉ちゃんらしくなってきたね
目的があると強くなれる