ふたりはアイドル!ダブルP☆(解散の危機?!編)
プミ「……ダブルP☆を……、解散……しましゅ!」
プミの会見の宣言と共に記者会見会場とお茶の間では雄たけび、号泣、怒号の声が鳴り響いた。
時は遡る事1週間前、ダブルP☆とPNDのコラボ企画が立ち上がっていた所、PNDの自称・風紀委員の人気メンバーが妻子持ち俳優との逢瀬をサマーセンテンスにスクープされた事が発端だったのだ。
勿論、企画はお蔵入りとなり、プミは大激怒し暴れた所、その罵声をボイスレコーダーで録音していた問題のメンバーが非難の矛先をプミに被せるためにパンスポに『実はプミからいじめに遭っていてその相談をしていた』と自分の都合の良い部分のボイスを世間に公表し、世間の非難はプミにも向かってしまう。
プミを信じるファン、問題のメンバーを信じるPNDファンの罵倒バトルに発展し、やがてそれは怪我人を出す大乱闘へと発展してしまい、プミは自分の責任を感じ、ダブルP☆を解散する事となってしまったのだった。
~回想~
ピキ「先輩が引退する事なんてないのに……」
プミ「ピキちゃん、何も言わないでくだしゃい。ピキちゃんにまで非難の矛先が向いたら困りましゅ!だから会見ではお口チャックでしゅ!」
ピキ「大体、先輩の強火ファンのメンツってうちのパパ程高齢じゃないけど孫がいる世代のマダム達中心じゃないですか……! なのに何で怪我してるのがPNDのガチ恋ファンの方なんですか?! 怪我の捏造なんじゃないですか?」
プミ「……ピキちゃん、大昔にはスケ番という喧嘩の強い女性番長というヤンキーが沢山存在していたそうでしゅよ。年を召していてもそこらへんの若者にやられるヤワなファンじゃないんでしゅよ。皆しゃん、プミがアイドルデビューした時から『孫』の様だと、『孫』より可愛いと応援し続けてくれた歴代屈指の強火ファンの方々でしゅ。望遠カメラは時には鈍具と化すものでしゅ。そのファン達が暴走したならプミが責任を取らなきゃいけましぇん」
真相は双方陣営が口喧嘩に発展したものの口の強さと気の強さは人生経験が遥かに上のプミのファンにPNDファンは勝てず、イラついたPNDファンが強火ファンの一人をこづいて転倒させた所、昔の血が滾った強火ファンに勝てる筈もなく返り討ちにされたのだ。最初に手を出したのがPNDファンという事とプミファンが高齢だったため本来なら過剰防衛となる所だったが正当防衛に収まったのだった。
ピキはプミとのやりとりを思い出しながら涙をこらえ下唇を噛む。
『冗談じゃないでしゅよ!』『あなたにアイドルの資格はありましぇん!!』『アイドルに向いてないでしゅ!!』
ワードだけ聞いていたらどう聞いてもプミによるいじめ罵倒音声だ。
(……そうじゃないのに……! 本当は違うのに……!)
ピキの頬から伝った一筋の涙の雫が机の上へとぽたりと落ちた。
カンカン「……すまないね、リー君。せっかく娘さんの久しぶりのコンサートに緊急入院になった私の付き添いで行けなかった挙句、こんな事になってしまうとは……」
病院の一室でプミの解散宣言をTVで見つめていた高齢の男性が隣に腰掛けているプミの父・リーリーへと話しかける。
リーリー「いえ、シャンちゃんも恩師の付き添いだと説明したらこっちを優先して欲しいと言ってましたから……」
元『恩賜上野スターダム』プロダクションの社長だったカンカンのベッドのサイドテーブルの上には亡き妻ランランの生前の写真が飾られていた。
カンカン「ランランも最後までキミ達の事心配していたよ。プミちゃん……、いや、シャンちゃんにはまだお母さんが『仙女』だと伝えてないのかい?」
リーリー「憧れのパンダが自分を捨てた母親だと知ったらショックを受けてしまうんじゃないかと思って……。シンちゃんの写真や思い出の品は庭に埋めた筈だったんですけど、ビデオテープを押入れに入れたまま忘れたばかりにシャンちゃんが『仙女』に……『アイドル』に憧れるきっかけを作ってしまいました」
カンカン「まさか、仙女の娘がうちの事務所のドアを叩く事になるとは思わなかったよ。血は争えないね」
リーリー「最近は黙っていたのは間違いなんじゃないかって思い始めてます。自分が飲んだくれて荒れた生活を送っていなかったらシンちゃんももう帰ってきてくれてたのかなと……」
カンカン「私は昔から仙女を見てきたが、君の言う理由でいなくなったりする子じゃないよ。おおらかで細かい事は気にしない子だからね。それにきっと異性より美味しい料理と娘を愛していたから昼メロ展開もないだろう。毎年届いていた年賀状には娘がいかに可愛いかという想いが溢れた内容だったからね。私はきっと何か別の理由があると思うんだ。仙女の幼馴染だったキミだってよく分かっているだろう?」
リーリー「アイドルを引退したのも『好きなだけ美味しいものを沢山食べたい!』でしたからね……。そして、くやしい事に僕よりシャンちゃんの事を遥かに愛してました。確かにそんな大事なシャンちゃんを置いていくのもおかしな話ですよね。シンちゃん……」
画面にはプミの解散宣言の後、会場内や周りからの大騒ぎに『しばらくお待ちください』という文字と花の画像が映し出されていた。
ようやく画面が切り替わるとどこかの楽屋が映し出される。
画面にはプミとピキ、問題のメンバーが映し出されていた。
プミ「どういう事でしゅか?! サマーセンテンス砲をくらうなんて、企画がぽしゃってどれだけの関係者の皆しゃんに迷惑かけたと思ってるんでしゅか?! この仕事のために頭を各所に下げて頑張ってくれた人達が大勢いるんでしゅよ?! 冗談じゃないでしゅよ!」
問題アイドル「はあ~~、うざ」
プミ「スタッフさん達あっての私達の仕事が成り立つんでしゅよ! 他のメンバーや周りの人の事を考えられないなんてあなたにアイドルの資格はありましぇん!!」
問題アイドル「たまたま撮られただけだし。どーせお芝居のアドバイス聞いてたって言っとけばチョロいファンは私を信じるし、私人気メンバーだし、ファンは応援のためにお金出すし」
プミ「ファンにとってアイドルは特別な存在なんでしゅ! だからこそ、アイドルでいる間は自分にとって特別な存在を作っちゃいけないんでしゅ! それがアイドルの義務であり使命なんでしゅ! 恋愛したいならアイドルに向いてないでしゅ!! 応援してくれてるファンの皆さんに失礼でしゅよ!」
プミが激しく拳を机に叩きつけると机は『バキンっ!』と音を立てて真っ二つに壊れる。
ピキ「せ、先輩落ち着いてな~~! あの子びっくりしてお漏らししてんねん!」
プミ「……あっ、ごめんでしゅ。スタッフさんやファンの事を思ったらつい熱くなっちゃったでしゅ……。あと、サマーセンテンスされた相手の俳優しゃん、前回のドラマで一緒した時にプミの事口説いてきましゅたよ? 節操のない男はやめといた方が懸命でしゅよ」
そこで画像は終了し、再び会見場の画像が映し出された。
どうやら映像は会場にも流れたらしく、皆言葉を失っている。
ピキ「あ、あの時の事がなんで映像に……?!」
シンコ「楽屋に差し入れを持って行った時にテストカメラを楽屋に置きっぱなしだった事を思い出して……、調べたら電源入れたままだったみたいでね。悪い事はできないものね?」
シンコがプミとピキの脇で満面の笑みを見せた。
映像が流れた事で再び風向きが変わり、会場内では『プミちゃんは悪くない』『プミちゃんこそアイドルの鏡』などの賞賛の声と共に解散宣言撤回コールが沸き起こる。
しかし、その声を遮ったのは意外にもピキだった。
ピキ「真相は判明して先輩の誤解は解けたと思います。でも、それでも、ダブルP☆は解散します……!」
ピキの声はプミ的にも想定外だったらしく、プミは口を大きく開けたまま固まってしまっている。
ピキ「先輩、私に迷惑かけないように解散して芸能界引退しようとしてましたよね! だったら、私は先輩に世界に羽ばたいて欲しいので解散します! だから芸能界引退もしないでください!」
プミ「ピキちゃん、何言ってるんでしゅか……?!」
ピキ「私、知ってるんですよ?! 先輩、パリウッドの大作映画のオーディション、ビデオ演技審査で受かったんですよね! でもアイドルやってたらパリウッドに行けないから辞退しようともしてましたよね?!」
プミ「なんでそれを……!」
ピキはプミが浮かれながらある手紙を見ては溜息をついている事が気になり、ある日こっそり手紙を見た所、外国語が読めなかったためそれを撮影し姉の結浜に画像を送り和訳を頼み内容を知ってしまっていたのだった。尚、結浜は色々と察して誰にも口外はしていない。
プミ「……ピキちゃん、あの手紙読めたんでしゅか……?! お勉強の賜物でしゅね! ピキちゃんの事侮ってゴメンでしゅ。プミは感動しましゅた!」
ピキ「……ん~~、ウチもや、やればできるんや……で……?!」
ピキ(結姉に翻訳してもろたなんて言えへん!!)
プミ「ピキちゃんの成長にも心打たれたので芸能界引退は撤回しましゅけど、解散宣言も撤回したいでしゅ。プミはピキちゃんとまだプミピキ続けたいでしゅよ?!」
ピキ「……アイドルの仕事は大変な事も多いですけど、やりがいもありますしファンの皆さんの笑顔を見るのも嬉しいです。そして先輩と一緒にユニット組めた事も幸せな事だと思ってます。けど……私には先輩の様な皆を惹きつける演技力もないですし、現役アスリートに匹敵するかの如くアイドル運動会でぶっちぎりで優勝したり、プロダンサー顔負けのキレッキレのダンスが踊れる身体能力も持ち合わせていません。先輩より勝っているのは脚の長さと歌の上手さくらい……」
プミ「プミ?! ちょっ、ちょっと! 後半の方遠まわしにディスってましゅ?!」
ピキ「それに、最近気づいたんです。この前のコンサートで一部の衣装をデザインして形になったものを先輩が着た時、自分じゃなくて他人を輝かせる事の方が好きって事に……。私、ファッションの勉強を本格的にして、色んな人を輝かせるファッションデザイナーになりたいんです。先輩から解散するにあたって今後の身の振り方を考えて欲しいって言われてからこの思いに気づいたんです!」
プミ「せっかく、また二匹でアイドルできると思ったのに……、プミ~~」
プミが涙と共に鼻水を流し始めると、ピキはハンカチでそれを優しく拭い始める。
会場は静まり返っていた。プレスも、マスコミも、TVクルー達もただ、ただ、皆プミとピキの言葉に耳を傾けていた。
ピキ「可愛い顔が台無しですよ! 私は自分の道を見つけました。私の事は心配無用です。だから先輩、パリウッドに行ってください……!」
ピキもまた涙を流し始め、二人は熱い抱擁を交わす。
プミ「プ、プミ~~!!」
ピキ「私も勉強頑張るので、先輩は国際的大女優になってください! 絶対ですよ!」
抱き合いながら泣き続ける二匹に皆貰い泣きをし始め収拾がつかなくなりそうになった頃、そこに社長のタンタンが現れカメラに向かって一礼した。
タンタン「皆さん、色々とお騒がせして申し訳ございません。『王子プロ』の社長としてここにお詫び申し上げますのね~~」
タンタンは深々と頭を下げた後、かつてトップアイドルだった人々を温かい気持ちにさせてくれる伝説のタンタンスマイルでTVに向かって微笑んだ。
タンタン「真相は先程の通りです。ですが、ファン同士の乱闘事件に発展してしまった事の責任と、二匹の新しい門出のため、ダブルP☆は解散します。つきましては解散コンサートを行う事をここに宣言しますの~~」
再び、会場とお茶の間には絶叫が響き渡った。
TVを観ていたカンカンとリーリーはお互いの顔を何度も見合わせていた。
リーリー「さっき、タンタンさんの後ろにチラチラ映っていたのって……シンちゃんですよね……?! ど、どういう事……?!」
カンカン「数年前にタンタンが乗っていた車と接触して記憶喪失になったふくよかなメスを引き取ったって……。そのパンダが事務所でマネージャーとして働き始めたらとても有能で助かってるって聞いた事はあったんだが……、そういえばタンタンは仙女とは面識無かったし、仙女ってば昔より更にふくよかになって……るよね……?」
リーリー「多分、現役時代と比べたら倍……」
カンカン「……」
リーリー「シンちゃ~~ん!!!」
カンカン「仙女~~!!!」
看護師「病院ではお静かに!!」
~次回予告・最終回『プミピキよ永遠に☆』~
すごいお話来てた!
プミピキがどうなるのか、シンコママはどうなるのか
展開にドキドキしてます
最終回楽しみです
超大作キター!プミファンのくだりには電車にも関わらず声出してしまいましたw
ダブルPキテタ───O(≧∇≦)O────‼︎!
怒涛の序盤から最後の大団円まで感情のアップダウン激しすぎ!作家さんすごい!
サマーセンテンスに吹き出したけど次最終回って…
終わっちゃヤダー(;Д;)
すごい大作きてたー!!
プミちゃんの強火ファンたちめちゃ強いwww
ダブルPの解散も仙女さんが姿を消した理由も気になるけど最終回はさみしいよー…
超大作ありがとしゃんです!
怒涛の展開にひきこまれつつ
「遠回しにディスってましゅ!?」のくだりには声出して笑いました
次回最終回なんですね シジミ…
寂しいけど楽しみにしてます
>スケ番という喧嘩の強い女性番長というヤンキー
ここに集うみなしゃんはそういう方達なのでしゅかw
電車の中で読んだんでしゅけどニヤニヤしてしまいまちた
マスクしてて良かったでしゅよ
皆様嬉しいお言葉をありがとうございます!
次回はシンコさんの失踪の真相が明かされ最終回を迎えます。
今ちょっと時間が作れているので最終回は今月中に上げられると思いますので宜しくお願いします。
先月末に自分はシャンちゃんに挨拶して来ました。
スターオーラが半端なかったです。
やっぱり可愛いは正義ですね。
五月人形感があってシャンシャン五月人形を出してくれないかと本気で思ってしまいました。
(雛人形より竹筒かついだ五月人形だと思う)
雛人形より五月人形w
プミちゃんが首ブンブンしそう
作者さま次回も楽しみにしておりましゅ