>>176
クマの丘のリレークッキング ~番外編4:春の足音~
ひな祭りの贈りものが一通り整い、お届け前に少しだけ休憩することにしました。
キョウコさんと小Yさんは園のマップを広げて、お届け先をチェックしています。
「パンダ一家は、今日は東園で過ごすんですってね?」
「ええ、シンコさんから聞いてます。もうパンダ舎にお揃いですよ」
「じゃあパンダ舎には最初に全員で行きましょうか」
「ああ待って!キョウコママ」
ポンくんが人形焼をつかんだままの手を、キョウコさんに向けて振りました。
「俺ら今、今日はシャンシャンに会わないでおこうって話してたところ」
「おや、どうして?」
「えーと、その」
言葉に詰まったポンくんに代わって、みんなが少しずつ思いを打ち明けます。
「ウタ以外はさ…俺たち、知らないところへ行く気持ちを知ってるから」
「今日はできるだけ落ち着いて過ごして欲しいんだ、シャンシャンには」
「私たちが泣いたりしたら、シャンちゃんを動揺させてしまうからって…ね」
「だから同じパンダで事情に詳しい、小Yさんにお願いしようって話してたの」
日が傾いてきました。春の陽気が身をひそめ、静かな時間が流れ始めます。
「…あ!そうだわ」
沈黙を和らげるように、キョウコさんが大袈裟にポンッと手を叩きました。
「シャン子ちゃんのお赤飯に熨斗をつけなきゃ。クーちゃんが頼まれたのよね?」
「そうだった!えっとねえ…“ワイワイ民一同よりシャンちゃんへ”ですって」
「ああ…そうよね、今夜は尚さら落ち着いて過ごしてほしいわねえ」
「やっぱりワイワイの皆さんは分かっていらっしゃるわあ」
優しい笑顔になった女性たちに、さっきまで俯いていたポンくんが問いかけました。
「そう言えばさ、なんでシャンシャンに赤飯?ちらし寿司と米が被ってるじゃん?」
急速に静かな時間が舞い戻り、痛みを感じるほどに冷たい空気が張りつめました。
その空気を読んだウタさんは「少し外で遊ぼ」と、小雅ちゃんを連れ出しました。
>>216
クマの丘のリレークッキング ~番外編5:春は来る~
西園へのお届けは男性チーム、東園へのお届けは女性チームと分担が決まりました。
女性チームのうち小Yさん小雅ちゃん母娘は、パンダ舎へ向かうことになりました。
「小雅ちゃん大丈夫?つらかったら私たちと行く?」
ウタさんが小雅ちゃんを気遣って声をかけましたが、小雅ちゃんは笑顔で答えました。
「ありがとうウタ姉ちゃん。今は大丈夫、そんなにつらくないよ」
「無理しないでね」
「うん!ていうか…母ちゃん、皆さんにだけは打ち明けてもいい?」
「そうだね…、自分で話せるかい?」
小雅ちゃんは大きく頷き、小さな声で話し始めました。
「あの、これは日本ではパンダの飼育係さんと園長さんたち数人だけ秘密なのですが…」
一呼吸ついて、背すじをピンとのばして話を続けます。
「わたくし小雅は、実はシャンちゃんに同行します」
「ええええええええーっ?」
小雅ちゃんは人差し指をくちびるに当てて、更に小声で続けます。
「最初の基地で、しばらくシャンちゃんの家庭教師と通訳をしてきます」
「そうだったんだ、全く知らなかった」
「絶対に秘密ですよ。実はシャンちゃん、中国語のお勉強が進んでなくて」
「え、まさかそれが秘密の理由なの?」
「あちらにも日本政府にも正直に言えないから、表向きはメイドとして…」
「確かに絶対秘密だ、これは国家機密級だ」
「何度も延期になってたから、勉強時間いっぱいあったはずよね…?」
「シャンちゃん、ヒアリングは頑張ってたんですよ。でも会話となると…」
「…………」
「永明おじさんのリモート授業で、これは話にならんわってダメ出しが…」
「…………」
笑ってはいけないクマたちの丘。お届けは無事に完了するのでしょうか。
ワイワイ民のお赤飯届けてくれた!
ありがとうございます
シャンちゃんどんな反応するのか楽しみ
お赤飯はワイワイ民からのお祝いだったんだ!
私たちからの贈り物がシャンちゃんに届くなんて嬉しいなぁ
場をキンキンに冷やしたポンくんの疑問…これは仕方ない、男の子だもんねw
プミちゃんへのお赤飯、このスレの皆さんの贈り物なんですね。
私もPCの画面に願いを込めました。プミちゃんがこれからも順調に、素敵なレディになりますように。
次回、楽しみにしています。
動物園のみんなは、時に生まれ育った場所を離れることがあるものだから…気持ちが分かり合えるんですね。
小雅ちゃんが一緒に行ってくれるなんて!!
こんなに嬉しくて心強いサプライズはありません!
でも、シャンちゃんの中国語のお勉強が進んでなくて…のところで声を出して笑ってしまいましたw
あと一話で終わってしまうのは寂しいですが、楽しみにお待ちしてます
嬉しい!小雅ちゃん同行してくれるんだ!
なんて心強い
次回また楽しみにしています
きゃーー、小雅ちゃん同行のサプライズ!!
飛行機の中から住まいへの道中も楽しそう
しっかり者だから心強いね
でもあと1話でおわりだなんて…続き楽しみにしています