>>250
クマの丘のリレークッキング ~番外編6:季節の中で~
小Yさんと小雅ちゃんがパンダ舎を訪れました。お庭から賑やかな声が聞こえてきます。
「パパ言ったよねっ?栓は抜いちゃ駄目だなの!返しなさい!」
「シャオ!それレイにもかちてー!」
「いやー!シャオが見つけたのー!」
プールの栓をめぐって、リーさんとレイレイがシャオシャオを追いかけているようです。
小Yさんと小雅ちゃんは顔を見合わせてクスクスと笑い、パンダ舎へ入っていきました。
室内ではシンコさんとシャンシャンが向き合って、瑞々しい竹をバキムシャしています。
片隅には小さめにカットされた人参が、おそらく手つかずのままで乾き始めていました。
「シャーンちゃん!こんにちは」
「こまさちゃん!おばちゃんも!きてくれたんでしゅか?」
「こんにちは、お食事中にごめんなさいね。でもちょうど良かったわ」
小Yさんが大きな紙袋をシンコさんへ手渡しました。
「まあ!ありがとう!桜餅に雛あられに芋ようかん?この大きなお重は?」
「キョウコさんたちと作ったちらし寿司です。皆さんで召しあがってください」
「うわあ!きれいなはこでしゅね、おひなさまもかわいいでしゅ」
「キョウコさんと小雅が作ったの。お着物が難しかったんだよ」
キョウコさんと小雅ちゃんが飾った重箱の蓋は、シャンシャンの分は特別仕様でした。
千代紙と金色の折り紙をふんだんに使い、十二単のおひなさまの切り絵を施したのです。
「シャンのおひなさまと、にてるきがしましゅ」
「そうだよ。シャンちゃんのおひなさまをね、覚えてる限りだけど真似したの」
「こまさちゃんありがとう!うれしいでしゅ」
「ふふふ、喜んでもらえて良かった!」
シャンシャンは、そっと切り絵のおひなさまをなでました。
「そうだこまさちゃん!あっちにおひなさまをかざってましゅ」
「そうなの?見たい見たい!」
「きょうだけとくべつ、でしゅって。いちばんおくのおへやでしゅよ。いきましょう」
ふたりは手をつないで、5号室…かつての1カメの部屋へ駆けていきました。
>>270
クマの丘のリレークッキング ~番外編7:空と月~
「不思議ね、小雅ちゃんと一緒だと急に子どもの顔になるんだもの」
「小雅は逆ですよ、シャンちゃんと一緒だとお姉さんらしくなって」
話しながら、小Yさんはもうひとつの紙袋をシンコさんへ手渡しました。
「これ、後でシャンちゃんに渡してください。ワイワイの皆さんからです」
「ワイワイの皆さんから?先日お守りをいただいたばかりなのに」
「これはお祝いにと、お赤飯を。おめでとうございます」
「あっ!そっちなの?まあ…シャンのことをこんなにも愛してくださって…」
「ママから渡してあげてくださいな、私からだと恥ずかしがるでしょうから」
「そうね、パパたちが庭から帰ってくる前に渡しておかなきゃ」
「じゃあ私、二人を呼んできますね。そろそろおいとましないといけないし」
立ち上がろうとした小Yさんの膝に、シンコさんはそっと手を置きました。
「小雅ちゃんが同行してくれること、本当に心強いわ。ありがとう」
「こちらこそ、同行者に小雅を選んでくださってありがとうございます」
シンコさんの手に、小Yさんも手を重ねました。
「積もる話は後日ゆっくりしましょう、キョウコさんも一緒にママ会を」
「ええ、そうね。今日は湿っぽくなりたくないわ」
「キョウコさん、シンコさんのために炊いた肉を用意するって言ってましたよ」
「炊いた肉!キョウコさんって意外とそういうトレンドに詳しいわよね」
「すごいですよね、あらゆるSNSを色々と使いこなして」
「キョウコさん、遠くの家族や友だちの情報はネットで集めてるって言ってたわ」
「私たちも駆使しましょう、シャンちゃんの情報はどんどん得られるはずですよ」
「そうね。良く寝て良く食べる姿、きっとイヤというほど見られるわね」
重ねられていた二人の母の手は、いつの間にか固く熱く握りあっていました。
きっと5号室の娘たちも、手を繋いでおひなさまを見上げていることでしょう。
終(シャンシャンの花ひらく未来へ続く)
シャオレイも栓が大好きなんだね
おひなさま飾られてても桃の節句にはもういないシャンちゃん (ToT)
>>270
栓取りも受け継がれていくね
リーちゃんもビシっとカッコイイ
小雅ちゃん達が作ってくれた素敵なお重箱
読んでてもう胸がいっぱいになりました ゴワゴワ
お重の贈り物はもちろんのこと、キョウコさんと小雅ちゃんが作ってくれた切り絵のおひなさまもシャンちゃんは嬉しかっただろうな
きっと宝物入れの缶缶に大事にコレクションされますね
次のお話で終わっちゃうのはさみしいけれど楽しみにしています
双子ちゃんも栓好きなのですねw
手つかずのままの干からびてしまう人参を見るのも今日が最後だと思うと涙腺が
シャンちゃん みんなが祝ってくれた日本のひな祭りずっと忘れないでね
梨です。お読みくださった皆さま、本当にありがとうございました
梨男さん、素敵なお話をありがとシャンです
小雅ちゃんが同行してくれるなら心強いですね
炊いた肉、さすがツボを心得てらっしゃるw
梨男さん、素敵な素敵なお話でした
観覧最終日、ともすれば悲しい涙になりそうでしたが、こんなにも前向きな涙を流せるなんて…
感謝しかありません
みんなシャンちゃんの未来を応援してるし幸せを願っているよ
炊いた肉w
シンコさんも小雅ママとキョウコさんがいてくれて心強いですね
お赤飯も届いて良かった
素敵なお話ありがとうございました
書けた!ワーイ ステキなお話しありがとシャンです
これからシャンちゃんの青春が始まりますね
花ひらく未来が開けることと思います
梨男さん 素敵なお話を、更にワイワイ民を出してくれてありがとうございました
秘かに大役を引き受けていた小雅ちゃんの活躍に期待してしまいます
シンコさんはキョウコ先生にSNSの上手な使い方やネット検索のコツを教えてもらってシャンちゃんの様子をチェック出来そうですねw
>>310
梨男さん、とても素敵なお話をありがとうございました
お守りのこともお話に組み込んでくださり嬉しかったです
花ひらく未来へとシャンシャンの物語はずっと続いていくんですもんね
私たちもこれからも愛するシャンシャンを末長く応援していきましょう
>>319
おかえりなさい!
>>310
クマの丘のリレークッキング ~番外編おまけ:大空と大地の中で~
不忍池に夕日が映り、日暮れなのに不思議な明るさに満ちる上野動物園の西園。
こんな素晴らしい景色を妻と二人、ではなくてエゾヒグマの双子と歩いている。
「思いっきり頭突き食らわしやがって、覚えてろよポロ」
「お前が赤飯の話なんかするからだ」
「シャンが大人の階段をのぼったってな話は知ってたんだけどな」
「知ってたなら察しろよ、めでたい時には赤飯を振る舞うんだよ」
この双子のお目付け役を仰せつかってしまったのは俺、ホッキョクグマのイコロです。
もしも彼らが取っ組み合いを始めてしまったら、俺にしか止められないから仕方ない。
「ポロくん、北海道と内地じゃ食文化が違うんだから許してあげなよ」
「まあな、あっちじゃ赤飯なんて普通の日でも食うもんな」
「もう赤飯の話はやめてくれ、腹が減るわ」
今から高齢者や子どものいる世帯を回るというのに、エゾヒグマが「腹減った」は困る。
まあホッキョクグマの俺も一応肉食なんだけど、彼らほど怖がられないのは何故だろう。
「鳥たちの家と小動物には近づくなって命令だから」
「アイアイからスタートして、反時計回りで行くか」
「ちょっと待て、アイアイは小動物じゃん」
ここは俺が一人で行ったほうがいいんだろうな、しょっぱなから別行動になるけれど。
「アイアイには俺が渡してくるからさ、両生爬虫類館の前で待っててよ」
「両生爬虫類館はゾウガメとワニの三長老がいるんだったな」
「俺あの三爺は苦手なんだよ、色んな意味で歯が立たねえし」
カメ吉さんは短気で喧嘩っ早いし、太郎さんは年寄り扱いされることを嫌がるし。
イリエワニのフックさんについては言わずもがな。俺たちだって彼のことは怖い。
「やっべ!配達リストに管理事務所が入ってら!」
両生爬虫類館へ向かう彼らの声が聞こえてくる。普通の会話でも、重低音で大音量だ。
あの声だけで脅える動物は多い。だからできるだけ速やかに配達を終わらせなければ。
もうすぐ日没時間だ。十八時には寛永寺の時の鐘が鳴る。散歩気分ではいられない…。
エゾフタゴとホッキョクグマのイコロくんが、ちらし寿司を配りに行きました。
どことなく「はんかくさい」三人。少しでも皆さんの気分転換になれば幸いです
内地、はんかくさい
道産子ですか?
梨です。チャーター便到着の一報に、思いのほか心が乱れています
自分が落ち着くために一作書いています。夜中に眠れなかったら投稿します
>>391
はい、彼らは道産子なんです
楽しい番外編も来てた!
みんなキャラが立ってて賑やかですね。今までもこれからも、こうしてみんなの日常が過ぎてゆくのかなぁ…としみじみしますシジミ
私達だけでなく、動物園のみんなのことも慰めてくれそうです。
おまけまで拝読できるとは!ありがとうございます
メンズ熊三人衆いい味出してますね~
イコロさんの飄々とした口調が癖になりそうですw
ポンくん、お赤飯の意味は何となく察してたんだねw