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~ベビールームのウタ先生とおちびさんたち~ 【 ハッピーハロウィン! 】

ここは少人数制のベビールーム。
お母さんやお父さんがお仕事だったり、育児中に身体を休ませたかったり、さまざまな理由で赤ちゃんたちを預けることができる託児施設です。

広いイングリッシュガーデンを設えた老舗ホテルの一室にある、このベビールームは人気があり、いつも満室です。

ツキノワグマのウタ先生は、このベビールームのナニーです。
いつもは黒のロングワンピースに白襟、白カフスに白いフリルのエプロンを身に着けて、子どもたちのお世話をしています。

今日はハロウィン。
ウタ先生とおちびさんたちは、ここ老舗ホテルの1階ロビーに集まっています。

ここでは、ホテルをあげてハロウィン仕様にしてあり、楽しいイベントもたくさん用意されているのです。

ウタ先生とゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんはハロウィンの仮装をして準備万端です。

ウタ先生は眠れる森の美女に登場する邪悪な妖精・マレフィセントの仮装を。

ゆめちゃんは見習いの魔女、紫色の小さなとんがり帽子に紫のワンピースに、おててには魔法のステッキを持っています。

うららちゃんは黒猫です。黒猫の大きなお耳の間には赤い大きなおリボン。そして黒色のワンピースに、黒くて長いおしっぽを付けています。

すなすけくんはジャック・オー・ランタンのカボチャのロンパースを身につけています。胴体部分のカボチャはまあるく膨らんでいるのでした。

ロビーにいる仮装したおちびさんたちのことを、ラウンジでくつろいでいるお客さんたちやチェックインを待つお客さんたちが、チラッチラッと見ては、口々に『可愛いー』と言っています。

お客さんたちは入れ替わり立ち替わり、おちびさんたちと写真を撮っても良いか?とウタ先生に聞きに来ては、それから、おちびさんたちと一緒に写真を撮ると満足そうな笑顔で「ありがとう」と言って手を振り、去っていきます。
おちびさんたちも、小さいおててやお鼻を一生懸命振り返すのでした。

今日おちびさんたちが挑戦するハロウィンのイベントは、ホテルの客室を訪ねて、お客さまをおどろかすことです。
そして、お決まりのセリフ『トリック・オア・トリート!』を言うのです。

ハロウィンイベントは、このホテルでの恒例行事として有名なので、泊まりにくるお客さまはもちろんベビールームのおちびさんたちが客室を訪ねてくるのも知っています。
イベントに参加したいお客さまは、客室のドアの前にジャック・オー・ランタンのステッカーを貼って、おちびさんたちが来ても良いことをお知らせするシステムなんです。

これらの説明をウタ先生はおちびさんたちにひと通りすると、ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんはウタ先生を見上げて、うん、うん、と真剣なお顔でうなずいていました。

「じゃあ、みんな良い?客室をまわるときは、ロッキーさんがついていてくださるからね。何か分からないこと、困ったことがあったら、ロッキーさんにお聞きするのよ」
「はーーーい!!」

おちびさんたちはおててやお鼻を上げて、元気よくお返事をしました。

「ロッキー支配人、では、この子たちをよろしくお願いします」
「はい、お任せください。では、おちびさんたち、バスケットを持って、出発しますよ」
「はーーーい!!」

おちびさんたちは、それぞれ持ち手付きの小さなバスケットを持つと、ロッキー支配人の後ろについて、エレベーターに向かいました。

ロッキーさんは、この老舗ホテルの支配人です。
今日はドラキュラ伯爵の仮装をしています。ドラキュラ伯爵の牙は、ホワイトタイガーであるロッキーさんの自前です。

エレベーターやホテルの廊下では静かにするようにとウタ先生に言われているので、おちびさんたちはお口をぎゅっとつぐんでエレベーターに乗りました。

次に、エレベーターを降りて廊下を曲がると、長い廊下は奥の方まで延びていて、しんと静まり返っています。
足音を立てないようにそっと廊下を進んでいくにつれ、おちびさんたちはドキドキと緊張してきました。
すると、ドアに大きなジャック・オー・ランタンのステッカーが貼ってある客室にたどり着きました。

「さあ、みなさん、着きましたよ。では、ノックしますが、用意はいいですかな?」

ロッキー支配人が小声でおちびさんたちに訊きました。

「はーい!」

すなすけくんが元気よくお返事すると、ゆめちゃんとうららちゃんが慌てて、

「だめよ!すなちゃん、しずかに!だよ!」

と、小声で注意しました。

するとハッと気づいて、すなすけくんは、

「いけね」

と、慌てて両方のおててでお口を抑えました。

その姿がなんだかおかしかったので、3人はお口を抑えながら、クスクスと笑ってしまいました。

ロッキー支配人もそれが微笑ましくて、目を細めて、ふふふっと笑ったのでした。

「それでは…」

ロッキー支配人は、おもむろにドアを、コンコン、とノックしました。

するとドアが、ギ…ギギィ…と音を立てて内側に開きました。
部屋の中は真っ暗です。

ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんは、真っ暗闇な部屋をまっすぐに見つめて、ゴクリと息を飲みました。

「はーい」

中から返事が聞こえてきました。
すると部屋の中から、にゅっ!と何か大きな物体が出てきました。

「わあー!」

何か分からないものがいきなり廊下の方に勢いよく出てきたので、びっくりしてすなすけくんはコロンと後ろにひっくり返ってしまいました。

「すなちゃん!だいじょおぶ?」

すなすけくんは尻もちをつきましたが、かぼちゃのロンパースの胴体からおしりの部分にはかぼちゃの形になるようにスポンジが入っていたので、痛くはなかったようです。

「うん、だいじょぶ。すなしゅけ、いたくないよ」
「よかったー」
「しんぱいちたわ」

ゆめちゃんとうららちゃんはホッとしました。
ロッキー支配人がすなすけくんを抱き起こすと、すなすけくんの背中をポンポンとホコリを払ってあげました。

「いやあ、ごめん、ごめん。驚かせてしまったかな?」

ドアから首を出して申し訳なさそうに、そう言ったのは、上野動物園のキリンのヒナタさんでした。

「そうよ!あなた、いきなり大きな身体が目の前に現れたら、小さい子たちは驚いちゃうじゃないの!ねぇ?ごめんなさいね」

そう謝ってきたのは、ヒナタさんの奥さまのリンゴさんでした。

「もー!パパったら!おちびちゃんたちが驚いておめめをまん丸くしてるわよ」

ヒナタさんとリンゴさんの娘のヒカリちゃんが言いました。

ドアから首を出しているヒナタさんがあまりにも背が高いので、おちびさんたちは精一杯お顔をあげて見上げています。

「ごめんね、えっと、君がすなすけくんかな?痛くないかい?」
「うん、ぼく、すなしゅけ!いたくないよ!だいじょぶ」
「よかった。驚かすつもりはなかったんだけどね。ごめんね」

真ん中にヒナタさん、その両脇にリンゴさんとヒカリちゃんが顔をのぞかせています。

ヒカリちゃんもバスケットを持っていて、その中にはクッキーやマシュマロ、チョコレートなど美味しそうなお菓子がたくさん入ってます。

それからキリンさんファミリーは、おちびさんたちのセリフをじっと待ちました。

すると、おちびさんたちはハッと気づいて、3人は目を見合わせてから、うん、うん、とうなずき合い、それからお口を大きく開けて言いました。

「せ~のっ!!!
とりっくおあとりーと!!!
おいもしゃん、もらってくれないと、いたじゅらしちゃうぞ!!!」

「ははは!上手に言えたねぇ。さあ、いたずらされちゃうと恐いから、お菓子をあげようね……ん?お芋さん?」
「お芋さんをもらってくれないといたずらしちゃう?」
「??」

ヒナタさんとリンゴさん、ヒカリちゃんは不思議そうな顔をして目をパチクリさせました。

「ははは、ここは、わたくしが説明した方がよろしいかと」

ロッキー支配人がこほんと咳払いをしました。

「ベビールームでは秋の恒例行事にお芋掘りもやっておりまして、先日、この子たちは初めてお芋掘りをして、自分たちでたくさん収穫してきたんです。ですよね?」

ロッキー支配人がおちびさんたちの方を見て訊きました。

「あのね、ゆめたちね、いーっぱい、おいもしゃんとったのよ!」
「うん、うららもね、おはなでつちをほってね、おいもしゃんとったの!」
「すなしゅけも、すなしゅけもね、こーんな、おおきなおいもしゃんとったんだよ!」

おちびさんたちはお芋掘りがとっても楽しかったので、話したくて話したくて、小さなおててやお鼻を大きく動かして、身振り手振りをしながら、ヒナタさんたちに一生懸命伝えたのでした。

ヒナタさん、リンゴさん、ヒカリちゃん、そしてロッキー支配人もおちびさんたちの仕草が可愛らしくて、思わずふふふと笑ってしまいました。

それからロッキーさんが説明を続けました。

「お芋掘りで採れたお芋は、こうしてハロウィンのイベントのときにお配りしてるんです。トリック・オア・トリート!お菓子くれないといたずらするぞ、ではなく、ここでは、お芋さんをもらってくれないといたずらしちゃうぞ、になったんです」

「そういうことでしたか!なるほど、それはステキな取り組みですね」
「では、いたずらされたら恐いから、お芋さんをいただこうかしら?うふふ」

それを聞いて、おちびさんたちは持ってきたバスケットの中からお芋を取り出すと、ヒナタさん、リンゴさん、ヒカリちゃんに差し出しました。

初めて自分たちで採ったお芋さん。それを誰かに差しあげることも初めてで、なにやら誇らしい気持ちで、ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんのお顔はほっぺがほんのりピンク色になって、ちょっぴり緊張した面持ちでお芋さんを渡したのでした。

「おおー!これは立派なお芋さんだ!」
「まあ、とても色つやの良いお芋さんね!とても美味しそう」
「わぁ!ヒカリ、これスイーツにして食べたいな」

キリンさんファミリーが喜んでくれたので、おちびさんたちもますますうれしくなって、口元がニマニマしてしまいました。

3人はヒカリちゃんからお礼にとお菓子をもらうと、キリンさんファミリーにバイバイとおててやお鼻を振って、また別の部屋に向かいました。

それから訪ねていったどのお部屋にいるお客さんたちも、最初は『お芋さんをもらってくれないと』という言葉に、不思議そうな顔をするのですが、そこで、おちびさんたちが一生懸命にお芋掘りの説明をするので、それをうん、うんと真剣に聞いてくれて、それからお芋さんを受け取って、笑顔でお菓子をくれるのでした。

こうして、いくつものお部屋を訪ねて、ようやく、最後のお部屋にたどり着きました。

「では、みなさん、ノックしますよ」

コンコン、とロッキー支配人がドアをノックしました。

ドアが内側にギ…ギィ…と開いたと同時に、部屋の中から、バサーッ!バサーッと何かが飛び出してきました。

「わーーー!!!」

3人は慌ててしゃがみ込んで、頭をおててで覆いました。

「ほほぅ、これはコウモリですな」

ロッキーさんは落ち着いた口調で言いました。

「こおもり??」

おちびさんたちがそう言うと、またコウモリがバサーッと3人の頭の上をかすめて廊下の奥の方へキーキーと鳴きながら飛んでいきました。

真っ暗闇な部屋に3人がそっと近づいて部屋の中を覗いてみると、何やら白いものがふわりと動いた気がしました。
そして、その白い何かが、おいでおいでをしています。

「きゃーーー!」
「いやーーー!」

ゆめちゃんとうららちゃんは恐くて恐くて、2人は抱き合って、その場にしゃがみ込んでしまいました。
すると暗闇に浮かぶその白いふわふわしたものが、またおいでおいでをするのです。

「…グスッ…ふぇ…ぇ…ん…ああーん…あーーん」

うららちゃんは恐くて、とうとう泣き出してしまいました。
いつもなら、そんなうららちゃんを慰めてあげるゆめちゃんも涙目になっています。

すると、すなすけくんがすっくと立って、

「わーーー!」

と、暗闇の中へ突進していったのです。

それから、その白いふわふわに向かって何度も何度もぽかすかと両方のおててで交互に叩いて、

「おんなのこ、なかしたらだめなんだぞっ!!おんなのこにはやさしくしないといけないんだからっ!!」

そう怒りながら、すなすけくんは必死に白いふわふわを攻撃しました。

「うわー!ごめん、ごめん!降参、降参!」

白いふわふわがそう言いながら、白いものを脱ぎました。
なんと中から出てきたのは、リーリーさんでした。

「いやあ、ごめん、ごめん。ちょっと過剰に演出しちゃったみたいだな」

パチッと部屋の灯りがつきました。

「リーくん、ちょっとやり過ぎちゃったみたいね。みんな、ごめんなさいね。みんなを喜ばせようと思ったんだけれど」

シンコさんが申し訳なさそうな顔でそう言うと、リーリーは、ゆめちゃんとうららちゃんを抱き起こしました。

「本当にごめんなさい!去年ハロウィンで同じ格好の白い布をかぶっておばけになっておどかしたときには、すぐにフブキくんに白い布を取られて、アルンくんや楓浜ちゃん、ホウちゃんに笑われたものだから、つい同じ感じでやってしまって…。ごめんね、大丈夫かい?」

「うん…グスッ…うらら…こわかった…」
「ゆめも…ちょっとだけ…こわかったの…」

リーリーさんとシンコさんは、2人をふんわりと包み込むように抱いて、お背中を優しく撫でてなぐさめました。

「すなすけくんにも悪かったね。そうだよね、女の子泣かしたらいけないよね。おじさんがいけなかったよ。ごめんなさい」

「いいよ。わかればいいよ。おんなのこにはやさしく、なんだよ」

すなすけくんは、前にフブキくんに教えてもらったことを、それからずっと大事に守っているのです。

それからすなすけくんは、ゆめちゃんとうららちゃんの前にちょこんとしゃがんで、

「だいじょぶ?」

と、2人のお顔を覗きこみました。

「うん、すなちゃん、ありがと…さっき、おばけやっつけてくれて、かっこよかったよ」
「すなすけちゃん、ありがと…うららも、すなすけちゃんがおばけにダメー!って、ちてくれて、うれちかったの」

2人のその言葉を聞いて、すなすけくんはホッとしたのでした。

そして、ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんは、顔を見合わせて、うん、とうなずき、それからゆっくりと立ち上がると、再びバスケットを持って、それから3人は横に並んでから、大きく息を吸いました。

「せ~のっ!!!
とりっくおあとりーと!!!
おいもしゃん、もらってくれないと、いたじゅらしちゃうぞ!!!」

3人はそう言うと、バスケットからお芋さんを取り出して、リーリーさんとシンコさんに差しだしました。

「おおー!これはこれは!立派なお芋さんだねぇ!」
「まあ!美味しそうねぇ!リーくん、今夜はさつまいもご飯がいいわ!ウフフバキムシャ 」
「あとでシャンとシャオ、レイにも見せてあげなきゃな」
「うふふ、シャンは中国に送ってくだしゃいなんて言いそうね」

リーリーとシンコさんにそう褒められて、おちびさんたちはお互いの顔を見合わせながら、ほっぺをピンク色にして、ちょっぴり誇らしげな笑顔を浮かべました。

「では、みなさん、そろそろパーティー会場に向かいますかな?」

ロッキー支配人がおちびさんたちにそう言いました。

「シャオ坊っちゃまとレイお嬢さまは、先にパーティー会場に行って飾り付けのお手伝いをしているんでしたかな?」

「ええ。なんでも真っ暗な部屋でおばけの仮装をして待っているのが恐いからってレイレイが嫌がるものですからね。今回はシャオくんとレイちゃんは飾り付けのお手伝いにまわったんです」

「そうですか、ではきっと早く来ないかとお待ちになられてますね。では、参りましょう」

ロッキー支配人はそう告げると、ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんと、リーリーさんとシンコさんをバンケットルームの方へ案内しました。

ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんは、これから何が始まるんだろうと興味津々なお顔をして、バンケットルームへ向かいました。

老舗ホテルのこのバンケットルームは小ぶりながらも、マホガニーを基調とした格調の高いテーブルや椅子などの家具や、アンティークの調度品が置かれていて、とても落ち着いた空間になっているのでした。

6 【バンケットルーム】

🐻ウタ先生→邪悪な妖精・マレフィセント

🐻‍❄️ゆめちゃん→見習いの魔女🧙‍♀️
🐘うららちゃん→黒猫🐈‍⬛
🐻すなすけくん→ジャック・オー・ランタン🎃

🐻‍❄️フブキくん→フランケンシュタイン
🐼楓浜ちゃん→赤ずきんちゃん
🐻‍❄️ホウちゃん→魔女の宅急便のキキ
🐘アルンくん→恐竜🦖

🐼シャオシャオ→チップ
🐼レイレイ→デール

🐯ロッキー支配人→ドラキュラ伯爵🧛‍♂️
🐯カーラ夫人→ドラキュラ伯爵夫人🧛‍♀️

🐻‍❄️ピリカさん
🐻とんこさん

🐼リーリー
🐼シンコさん

🦒ヒナタさん
🦒リンゴさん
🦒ヒカリちゃん

🦇コウモリさんたち(特別出演)

ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくんは、バンケットルームに一歩入るなり、「わぁ!」と歓声を上げました。

かぼちゃをくり抜いて作られた幾つものジャック・オー・ランタンや、バルーンでできたお化けや魔女、ハッピー・ハロウィンの文字。オレンジ色と紫色、黒色の風船をあちこちに配して、いつもはシックなバンケットルームが、すっかりハロウィンパーティーにぴったりな賑やかなお部屋になっていたのでした。

ウタ先生と、アルンくん、楓浜ちゃん、ホウちゃん、フブキくん、そしてシャオシャオとレイレイは、先にお部屋の飾り付けをしていたのです。

「あー!フブキおにいちゃん!」

すなすけくんはフブキくんを見つけると走り寄っていき、勢いよく抱きつきました。

それを見てピリカさんととんこさんは、

「あらあら、ママのわたしたちを素通りして、すっかりフブキおにいちゃんに懐いちゃったのね」
「うふふ、フブキおにいちゃんは、すなちゃんの憧れですものね」

と、うれしそうに話しました。

「おー!すなすけ!元気だったか?あれからちゃんと女の子に優しくしてる?」

フブキくんは飛びついてきたすなすけくんを抱きとめて、顔を見ながら言いました。

「うん!してるよ!」

「すなちゃんね、さっき、ゆめとうららちゃんが、おばけがこわくてないてたらね、おばけ、やっちゅけてくれたのよ!」
「そうなの!すなすけちゃん、とってもかっこよかったのよ」

「そうだったんだ!すなすけ、えらいぞ!」

フブキくんはすなすけくんの頭をくしゃくしゃと撫で回すと、すなすけくんはくすぐったがってキャッキャと笑い声を上げました。

「あれ?ゆめちゃんって、ベビールームの見学会に来とった子ぉやんな?」
「まだお名前も付いてなかったときでしゅね プルプル」

ゆめちゃんは何のことだか分からず、ぽかんとしたお顔をしています。

「ホウと楓ちゃんのとこまでハイハイしてきて、そのあと掴まり立ちできたんやったね」
「あとアルンくんのお背中に乗せてもらってたでしゅね プルプル」

「うふふ、ゆめはまだ赤ちゃんだったから覚えてないかもしれないわねぇ」

ピリカさんがそう言いました。

「んーゆめ、おぼえてなぁい」

「いいなー。ゆめちゃん、おねえちゃま、おにいちゃまにあしょんでもらったことがあるのね」

うららちゃんはつぶやきました。

「うららちゃん、あの…あの…ぼくのことわかる?アルンだよ!ほら、うららちゃん、ぼくのお誕生日のときにバースデーカードおくってくれたでしょ?」

「あ!アルンおにいちゃま?アルンおにいちゃまだ!」

「ちゃんとごあいさつするのは、はじめてだね! テレテレ」

「うん!うららもアルンおにいちゃまからもらったバースデーカードたいせつにしてるの」

「ほんと?」

「うん!あったら、『きば』をみしぇてくれるってかいてあったから、たのしみにちてたの」

「えっと、じゃあ、やくそくしてたキバみせてあげるね」

アルンくんはうららちゃんにキバがよく見えるように、あーんと大きくお口を開けました。

うららちゃんとゆめちゃん、すなすけくんも一緒にアルンくんのキバをじっと見つめて、

「わぁー!かっこいいー!」

と惚れ惚れと見とれて言いました。

「えへへ、ありがとう テレテレ」

アルンくんの恐竜のコスプレにも相まって、キバがとっても映えて見えたのでした。

「ぼくとね、レイちゃん、いつもアルンにいちゃまに、おせなかにのしぇてもらってるんだよ」
「うん、シャオとレイね、アルンおにいちゃまのおせなか、のんのするとね、とーってもたかくて、たのちぃのよ!」
「だから、うららちゃんも、のしぇてもらったら?」

シャオシャオとレイレイは、チップとデールの仮装をして、短いおしっぽとおしりをふりふりしながら言いました。

「でも、うらら、アルンおにいちゃまのおせなかにのんのしゅるの…はじゅかちぃ…」

うららちゃんはそう言うと、アルンくんのおしっぽを小さなお鼻できゅっと掴みました。
アルンくんはおしっぽを掴まれた瞬間、ドキーンッと胸の鼓動が鳴ったのでした。

「あ!えっと、えっと…じゃあ、このままお部屋の中を一周しようか! ドキマギ」
「うん!」

アルンくんの提案に答えて、うららちゃんはうれしそうにお返事しました。

アルンくんは、うららちゃんが歩きやすいようにゆっくりゆっくりバンケットルームの中をぐるりと歩きました。

アルンくんのおしっぽを掴んでいるうららちゃんとアルンくんが二人とも照れながら、ギクシャクと縦に並んで歩く姿を、お部屋にいるみんなは目を細めて微笑ましく見ていました。

「さあ!みなさん!パーティーのごちそうをお持ちしましたよ!」

カーラ夫人が大きなワゴンにお料理とスイーツを乗せてやってきました。
何人ものスタッフも、何台ものワゴンにお料理とスイーツをたくさん乗せて、カーラ夫人の後に続いてお部屋に入ってきました。

それを見たおちびさんたちと、ちょっぴり先輩のおちびさんたちも、

「わぁー!!」

と、おめめをキラキラさせて歓声を上げました。

「じゃあ、早速テーブルにお料理を並べましょうか! イソイソ」

シンコさんがうれしそうに言いました。

大人たち、シンコさん、リーリーさん、ピリカさん、とんこさん、ヒナタさん、リンゴさんは配膳を手伝いました。

二列に並んだ長いテーブルに、お料理とスイーツを並べていきました。

アルンくん、楓浜ちゃん、ホウちゃん、フブキくん、ヒカリちゃんは、ゆめちゃん、うららちゃん、すなすけくん、シャオシャオ、レイレイのお食事前のおててを洗ってあげたり、スタイを着けてあげたり、お椅子に座らせたりをお手伝いしました。

おちびさんたちが席につくと、ちょっぴり先輩のおちびさんたちと大人たちも席につきました。

すると、

「はーやーくー!」
「はやく食べたーい!」

両方のおててでフォークとスプーンを握りしめて、フブキくんとすなすけくんは満面の笑みで催促をしたのでした。

「お行儀わるいで、フブちゃん」
「そうよ!おぎょうぎわるいわよ、すなちゃん!」

ホウちゃんとゆめちゃんは、フブキくんとすなすけくんに注意しました。

「だって、おいしそうなんだもん!ねー!」
「うん!おいしそう!」
「ほんと、おいしそうだわ! ウフフ」

フブキくん、すなすけくんに続いて、シンコさんもそう言ったので、みんな一斉にシンコさんの方を見ました。

「あらやだ!うふふ。では、みなさん、いただきましょうか!」

「あの…ちょっとまってくだしゃい。きょうはアルンおにいちゃまの、おたんじょうびなんでちゅ」

うららちゃんが、勇気を出して言いました。

「まあ!そうだったのね!気づかなくてごめんなさい!」

「では、アルンくんのお誕生日のお祝いと、ハロウィンパーティーを始めましょうか!」

「そうしましょう!では、みなさん、手を合わせて…いただきます!」

ウタ先生が音頭をとって言うと、みんなも後に続きました。

「いただきます!!」
「いただきましゅ!!」
「アルン!おめでとう!」
「アルンくん、おめでとう!!」
「アルンおにいちゃま、おめでとでちゅ!」
「ありがとう!パオン!」

さあ、これからアルンくんのバースデーパーティーと楽しいハロウィンパーティーのはじまりです。

おしまい

皆さんとベビルさんのレス

(2023/11/24追加)

425: 名無しさん? 2023/11/01(水) 09:59:55.09 ID:AXKyBk/k0

わいわいタウンの皆さま、おはようございます。
いつも読んでくださりありがとうございます。ベビールームです。
この度、作品を書きましたので、わいわいさんのサイトにて投稿させていただきました。
ただ、この作品にはパンダさんがメインではありませんので、その辺りをご了承いただけたらと思います。
また、とても長い作品ですので、お時間のあるときにでも、読んでいただけたら幸いです。
よろしくお願いします。

 

426: 名無しさん? 2023/11/01(水) 12:06:47.44 ID:ELKlqI3G0
>>425
ベビルしゃん、ありがとうございます!
のちほどゆっくり読ませていただきます~

 

430: 【小吉】 2023/11/01(水) 17:17:34.00 ID:ZnDGg/cJ0
>>425
ベビールームしゃん、読みました
それぞれの扮装、お客さんのお部屋に入る時のドキドキ感が伝わってきました
リーリーさんの演出はちょっとやり過ぎでしゅねw
とても楽しく拝読させていただきました
またベビールームのお話を楽しみにしてます

 

440: 名無しさん? 2023/11/01(水) 19:59:36.53 ID:CoNwv2xH0
>>425
ベビルさん、また素敵なお話をありがとうございました。
最初から最後まで、可愛くてほのぼので胸キュンでした♪
このシリーズの舞台のホテルが本当にあるような気がしてきて、いつか訪れてみたいと思ったりしてます。
子供たちの仮装の可愛らしさも目に浮かぶようです。
ありがとうございます。

 

442: 名無しさん? 2023/11/01(水) 22:05:14.85 ID:HAi4Ctaq0
>>425
すなしゅけキタ━(゚∀゚)━♡
ベビルさん、今回もとても素敵なお話をありがとうございます
一文一文大切に読ませていただきました
可愛く仮装したおちびさんたちがお芋を持って訪ねてきてくれるなんて夢のようです
ハロウィンのお話に加えお誕生日のアル坊が主役になっているターンもあり、アル坊とうららちゃんの甘酸っぱいやり取りにニマニマしてしまいましたw

 

427: 名無しさん? 2023/11/01(水) 14:33:42.73 ID:5sDdsnVj0
ヘビールームしゃんありがと@ベビー
ベビールームでしよペシッ!@バブー

 

429: 名無しさん? 2023/11/01(水) 16:12:42.04 ID:CvzyArZX0

ベビールームさんのハロウィンのお話、シーンを思い浮かべながら楽しく読みました
アルンのお誕生日も登場して良かった
現おちびさんも元おちびさんも成長が感じらる、毎回素敵なストーリーですね
ずっとニコニコしてて頬が筋肉痛になりそうです
楽しくて幸せな気持ちになる作品ありがとうございました

わいわいさん、日々のおまとめありがとうございます

447: 名無しさん? 2023/11/02(木) 07:01:11.43 ID:yJShSWVc0
おはようございます。ベビールームです
個別にアンカー打てなくてすみません
また感想まで寄せていただき感激しています
あれからバンケットルームでは賑やかな宴が行われたことでしょう
読んでくださりありがとうございました!

 

478: 名無しさん? 2023/11/03(金) 00:04:50.37 ID:zs+yQYKc0
>>447
次回作を楽しみに待ってます!

 

462: 名無しさん? 2023/11/02(木) 18:23:04.80 ID:1W29ZJt10

べビルさん新作ありがとうございました。
私もバンケットルームにお邪魔したかった〜。

楽しいお話ありがとうございました

 

467: 名無しさん? 2023/11/02(木) 20:02:08.46 ID:j/oQnv9W0

ベビルさん、今回も素敵なお話をありがとうございました
ベビールームで過ごす時間はおちびさん達にとってかけがえのない宝物になりますね
私も宿泊客になってドアをノックされたい
w

わいわいさん、日々の更新ありがとうございます