お口直しに小話ひとつ投稿させてくださいまし
これは春に鬼ヶ島から脱出できなくて、投稿できなかったものです
ジャイアントパンダは出演しないこと、あらかじめご了承ください
キョウコに何が起ったか 第1話
今日は4月10日、月曜日です。上野動物園は休園日です。とても良く晴れています。
夜ふかしをしたポンくんとポロくんは、お昼を過ぎてからのそのそと起きてきました。
キョウコさんのお家から、お腹の空く匂いが届きます。それで目が覚めたのでしょう。
コンコンコンッとドアがノックされて、応えるよりも先にクーさんが入ってきました。
「ポンポロ起きてる?もうお昼よ」
「おそようございます…」
「おねむうございます…」
「鮭を焼いたの。顔を洗ってママのお家へいらっしゃい」
クーさんはそれだけ言うと、カーテンと窓を開けてさっさと出て行ってしまいました。
ポンくんとポロくんは渋々といった感じで起き上がりましたが、顔はにやけています。
東京での暮らしの長いエゾフタゴですが、やはり鮭と聞けば心が躍ってしまうのです。
「キョウコママー、昼メシいただきに来たよー」
「早かったわね、ちゃんと顔を洗ってきたの?」
振り向いたのはクーさんでした。キョウコさんとウタさんの姿は見当たりません。
「あれ、クーだけ?ママとウタは出かけてんの?」
「ママは医療センター、ウタちゃんは朝早くから多摩まで行ってるわ」
「ふうん、多摩って今日から再開園なんだっけ?」
「そうよ。やっとパパに会えるからって、応援の職員さんと一緒にね」
「クーは一緒に行かなくて良かったのか?久々にソウに会いたいだろ」
「ママが帰ってきたら行こうと思ってたんだけど、ちょっと無理かな」
三人は話しながらも役割分担をして、ちゃぶ台にお昼ご飯を配膳していきました。
「まあ座って。食べながらだけど、あなたたちに話しておきたいことがあるの」
クーさんはエプロンを外して、小さく溜め息をつきました。
第2話
「実はキョウコママね、先週の休園日にも医療センターに行ってるの」
「いつもの煮卵とおでんの差し入れじゃないのか?」
「ううんそれがねえ、先週も今日もハンドバッグひとつだったのよね」
「風邪でもひいたかな、まだ朝晩は冷えたりするし」
プミッ♪プミッ♪ピキピキッ♪
テーブルの隅に置かれていたクーさんのスマートフォンが、可愛い音を鳴らしました。
「その通知音はダブルPか」
「そうよ、ファンクラブの継続特典なの」
「会員かよ!金持ってんな」
クーさんはスマートフォンをテーブルの中央に置いて、エゾフタゴに見せました。
『もうすぐ帰るわ。みんなお昼ご飯は食べたかしら?
私の分も食べてしまってね。あんまり食欲がないのよ
帰ったら少し横になるから、お気遣いなくお願いね』
「…ですって」
「よし、さっさと食っちまおうか。布団を敷いとこうぜ」
「クー、ママのメシをおにぎりにしておいてくれるか?」
急いで食事を終えた三人は食器を片づけて、キョウコさんを迎える準備に取り掛かりました。
ポンくんとポロくんは布団を敷き、気持ち良く眠れるようとシーツや枕カバーを交換します。
クーさんは鮭をほぐし、キョウコさんに合わせて小さめのおにぎりを握れるだけ握りました。
こんなところかと顔を見合わせた時、キョウコさんが帰宅しました。大変お疲れの様子です。
「お帰りなさいママ、具合が悪いの?」
「ううん、ちょっと疲れただけなのよ」
「布団を敷いといたからさ、もう今日は寝ときなよ」
「おにぎり作ってあるから、食べたい時に食べてね」
「みんなありがとう、お言葉に甘えるわ…」
キョウコさんが素直にお布団へ入ったのを見届けてから、三人は静かにお家を出ました。
第3話
キョウコさんのお家を出てきた三人ですが、自室へ帰る気にはなれませんでした。
いつの間にか藤棚休憩所まで歩いてきてしまい、とりあえず座ることにしました。
「ね?やっぱりちょっと、様子がおかしいでしょう?」
「だな。普段なら年寄り扱いすんなって怒るところだ」
「教えてくれるか分からんが、聞きに行ってみるか?」
ポロくんが指さす方向には、医療センターがあります。バードソングの奥にあたります。
「待て、捕まえたほうが早い。匂いがする。乗り込まずとも奴がいる」
突然ポンくんが走り出しました。本気を出せば最高時速50キロで走るエゾヒグマです。
あっという間にバードソングの裏へと姿が消え、その直後に男性の悲鳴が聞こえました。
「ヤバい!」
ポロくんとクーさんが慌てて駆けつけると、ポンくんはヒトを押し倒していました。
「やめろポン!」
ポロくんがポンくんをヒトから引き離し、クーさんがヒトを助け起こしました。
ヒトの頭はポンくんの腕がクッションになり、幸いぶつけてはいない様子です。
「大丈夫ですか?うちのヒグマが申し訳ございません!」
「う、うん。大丈夫だよクーちゃん、今のはポンなの?」
「えっやだトミーさん?まさかトミーさんを襲うなんて」
ポンくんに押し倒されたヒトは、動物たちからトミーさんと呼ばれる人でした。
トミーさんは園の役職を兼務する偉い人であり、凄腕の獣医さんでもあります。
「ごめんなさいトミーさん!お詫びに何でもするから!ポンを撃たないで!」
慌てるクーさんの肩越しに、ポロくんに拘束されるポンくんの姿が見えました。
第4話
「そっかあ、みんなでキョンキョンのことを心配していたんだね」
トミーさんは医療センター内の休憩室で、ポロくんとクーさんから話を聞きました。
なおポンくんは、おでこにたんこぶができてしまったので診察室へ連行されました。
「ママに聞いても、疲れが出たとしか話してくれなくて」
「それでここで聞いてみるか?てな話をしたら、あのドアホウが」
ばあん!とドアが開き、そのドアホウが入って来ました。
「よくもやってくれやがったなあポロ!」
「うるさい黙れ、たんこぶ増やしたいか」
「ここでの喧嘩は勘弁してくれよ。血を抜かれたいかい?」
「ぬぅ…!」
「まあ冗談は置いといて、キョンキョンのことなんだけど」
トミーさんは右手を左肩に置き、首をくきくきと動かしながら話を続けました。
「キョンキョンが体調を秘密にしたいなら、僕が勝手に説明することはしません」
「なして駄目なのさ!ヒトの医者と同じようにナンチャラ義務ってのがあんの?」
「そう、今のは獣医師としての話。そしてここから管理者としての話なんだけど」
トミーさんは今度は左手を右肩に置き、首をぐるーりと回しながら続けました。
ポンくんからタックルをくらった際に、首や肩を痛めてしまったのでしょうか。
「みんなに隠さず話してごらんって、キョンキョンを説得することはできるよ」
「お願いしますトミーさん!何でもするからキョウコママを説得してください」
「そう?じゃあひとつクーちゃんにお願いしてもいい?」
デスクワークで肩が凝ったからと、トミーさんはマッサージをお願いしました。
首を痛めたわけではなかったようです。事件にならなくて本当に良かったです。
第5話
クーさんの肉球マッサージで癒やされたトミーさんは、キョウコさんのお家へ向かいました。
キョウコさんとふたりで話をして、まずは打ち明けたくない理由を聞き出すとのことでした。
三人も押しかけたい気持ちでしたが、クーさんとウタさんのお部屋で待機することにします。
「トミーさんがママの説得に失敗したら、私どうしたらいいかしら」
「どうするもこうするも、ママが話したくないのなら仕方ないだろ」
「ウタちゃんにどう説明する?ママの体調が悪いなんて知ったら…」
「そうだな。タロコが亡くなって半年、いや7か月を過ぎたのか…」
ウタさんは昨年、実の母のタロコさんを亡くしています。クーさんの心配はそこにありました。
育ての母のキョウコさんまで体調が悪いと知れば、ウタさんはショックを受けることでしょう。
「説得に失敗したらどうしたらいい?私たちもウタちゃんにママの体調のことを隠すの?」
「クー、少し落ち着けよ」
「隠しておくなんて無理でしょ?でも知れば私たち以上に動揺するのは目に見えているわ」
「だから落ち着けってば」
クーさんとウタさんは姉妹のように暮らしていますが、親子ほどの年の差があります。
クーさんは胸に秘めてはいますが、ウタさんのことを娘のようにも思っているのです。
「ねえ…どうしたらウタちゃんを悲しませずに済むの…?」
「ああ!泣くな泣くな!」
ポンくんとポロくんが慌ててクーさんに駆け寄った、その時でした。
第6話
「クー姉ちゃあん!ただ…い…?ま…?」
「……」
「……」
「……」
両腕いっぱいのお土産に、大好きなクー姉ちゃんが目を輝かせて迎えてくれる。
そんな想像を見事に打ち砕くシーンが、ウタさんの目の前に広がっていました。
曲げた腰に手を置いて、俯いているクーさんを下から覗き込んでいるポンくん。
腕を組み顎を引いて、威圧を感じる姿勢でクーさんを見おろしているポロくん。
そんなふたりに挾まれ、涙を流しているクーさん。まるでドラマの修羅場です。
お土産がドサドサと床へ落ちました。ウタさんは両腕を振り上げて威嚇します。
「どうしてクー姉ちゃんをいじめてるのよ!」
「ちょい待てウタ!お前めっちゃ誤解してるぞ!」
「オスのヒグマが二頭がかりで!卑怯だわ!」
「落ち着け!な?とりあえずおっちゃんこしろ!」
「クーも泣いてねえで!早く誤解を解いてくれ!」
ウタさんがポンくんに飛びかかろうと踏み出した、その時でした。
「ウタちゃんストーップ!」
背後からの突然の大声に、ウタさんはピタリとフリーズしました。
「よしよーし、きちんと止まれたね。良い子だねえ」
「えっ?トミーさん?どうしてここへ?」
「キョンキョンのことでね、みんなに話があるんだ」
「キョウコママのこと?え?なに?どういうこと?」
「その様子だと、まだウタちゃんは何も聞いてないね?僕が最初から説明しよう」
クマたちは戸惑いながらも、トミーさんを囲むようにして静かに床へ座りました。
第7話
「…とまあ、そういうわけでね。今までキョンキョンと話をしていたんだ」
出かけていたウタさんのために、トミーさんが一連の出来事を説明してくれました。
「キョンキョンのOKが出た範囲だけど、今の状況を説明しよう。まず、命に別条はありません」
クマたちの表情がパアッと明るくなりました。
「…が、クマ科に於いては世界的にも過去にも症例がない」
クマたちの表情が一瞬にして暗くなりました。
「それって…希少な難病ってことですか…?」
「クマ科では希少、と言うか今回が初めての可能性が高い」
「治せる獣医いねえの?金なら俺が出すぞ!」
「まあまあ最後まで聞いてよ、特定の動物にはよくある症状なんだ」
「は?どういうこと?」
「クマ科では希少だけど難病ではない、と思うんだ。たぶんきっと」
「でもママの様子を見ると、今日は特に体調が悪そうで…」
「それは検査で疲れたんだろうなあ。明日の閉園後も再検査するし」
「また検査させんの?メシも食えねえほどぐったりしてるんだぜ?」
「言ったろ?別の動物にはよくあると。明日その専門医が検査する」
クマたちは顔を見合わせました。まだ不安な表情を拭うことができません。
「話せるのは一旦ここまで。後は明日の結果次第だ」
「その専門医ってのは腕は確かか?身元は確かか?」
「もちろん。僕も園長も信頼している医師だからね」
笑顔で答えるトミーさんに、もうクマたちは発する言葉がありません。
もやもやは残りましたが、明日の再検査の結果を待つしかないのです。
第8話
「大丈夫だから!歩けるから!おろしてちょうだいな!」
翌日、4月11日の閉園後の上野動物園です。クマたちの大きな声が聞こえてきます。
小動物や鳥たちは何が起きているのかとざわめき、おちおち食事も睡眠も取れません。
何が起きているのかというと、ポロくんがキョウコさんをお姫さま抱っこしています。
おんぶは激しく抵抗されたため、有無を言わさずキョウコさんを抱きかかえたのです。
恥ずかしがっておろせと叫ぶキョウコさんを、後ろに続くクマたちがなだめています。
「ママ、この時間から寝る子たちもいるんだから。シー」
「そうよママ、暴れたら危ないし体力消耗しちゃうわよ」
「ポロが襲ってるみたいに見えるからさ、じっとしてな」
一行は歩くスピードを少しあげて、検査開始10分前に医療センターへ到着しました。
診察室へ入ると、トミーさんの他に見覚えのあるヒトと見覚えのないクマがいました。
ヒトとクマは白衣を羽織っています。昨日トミーさんが言っていた専門医でしょうか。
「みんな来ちゃったのか、仕方ないなあ」
トミーさんは呆れて苦笑いしましたが、ふたりの医師をみんなに紹介してくれました。
「こちらは僕たち職員がお世話になっている産業医さん」
「それで見覚えがあるんだわ。産業医さんってことはヒトのお医者さん?」
「そう、ヒトを診るお医者さん。そしてこちらはメガネグマのルイス先生」
「メガネグマ…」
「皆さん初めまして、ルイス・ロゲリオと申します。横浜から参りました」
ルイス先生が差し出した名刺には「クマ科・眼科 医師」との肩書きがありました。
第9話
キョウコさんの再検査が始まって、もうすぐ1時間が経とうとしています。
付き添いのクマたちは家には帰らず、診察室の前で静かに待機しています。
時々カチャカチャと金属音が聞こえ、そのたびにウタさんの肩が震えます。
クーさんはウタさんの背に手を置き、ゆっくりと撫でて落ち着かせました。
「ヒトの医者とクマの医者で検査って、どういう組み合わせだ?」
沈黙と金属音に耐えられなくなったポンくんが、ボソッと疑問を口にしました。
「分からん。キョウコママの場合、真っ先に思いつくのは老眼なんだが」
「わざわざヒトの医者まで呼んでるんだぜ?単なる老眼なわけないだろ」
「ちょっと!あんたたち!不安になるようなこと言わないでくれない?」
クーさんがエゾフタゴにピシャリと注意したその時、診察室の扉が開きました。
声が大きさかったかしらと少し慌てましたが、トミーさんが手招きしています。
付き添いのクマたちは立ち上がり、ポンくんを先頭にして診察室へ入りました。
「あれ?キョウコママは?」
「カーテンの奥で休んでいるよ。本人から許可を得たから、結果を説明しよう」
トミーさんに勧められて、付き添いのクマたちは黒い長椅子に腰を掛けました。
医師たちと向き合う形になって、何となく緊張して居心地の悪いクマたちです。
医師たちは視線を交わして頷き合い、ルイス先生が挙手して口火を切りました。
第10話
「検査の結果ですが、私たちはキョウコさんは眼精疲労だと診断しました」
聞き慣れない「眼精疲労」という言葉に、今度はクマたちが顔を見合わせます。
何かの疲れだということは察しますが、その「何か」が何なのか分かりません。
「簡単に言えば目の疲れですが、悪化すると強いめまいや頭痛なども伴います」
「それって治る病気なんですか?最悪、失明するだなんてことは…」
「そこなのです。このような眼精疲労は、クマ科では聞いたことがありません」
「よく分かんねえんだけど、老眼が進んだみたいな話じゃなくて?」
「確かに老眼起因のケースもあるのですが、こんなに急激には悪化しませんね」
ルイス先生のことを疑うつもりはないのですが、クマたちは納得できずにいます。
目の疲れと言えば「かすみ目」くらいしか知りません。納得できなくて当然です。
俯いていたウタさんが、ふいに顔を上げて言いました。
「クマ科では、という話ですよね?」
「その通りです」
「トミーさん、別の動物にはよくあるって言ってたよね?」
クマたちの視線が、一斉に産業医さんに集まりました。
二頭のエゾヒグマと二頭のツキノワグマから凝視され、産業医さんは戦慄しました。
(クマに遭遇した時は目をそらすんだっけ?逆か?目をそらさず後退するんだっけ?
後退しようにも距離ないし!あ!死んだふり?いやあれはガセだと聞いた記憶が!)
「…安心してください、麻酔銃ありますよ」
ルイス先生が産業医さんに微笑みかけ、今度はクマたちが戦慄する番でした。
第11話
「キョウコさんの眼精疲労は、デジタル眼精疲労の典型だと思われます」
「デジタル眼精疲労?」
「はい。眼精疲労のうち、デジタル眼精疲労は今のところヒト特有です」
仕事やゲームでパソコンを使うエゾフタゴは、デジタルという言葉にピンと来ました。
クーさんとウタさんは、その言葉はキョウコさんに不似合いに思われ謎が深まります。
「どうして?キョウコママにヒト特有のデジタル眼精疲労が起きたの?」
「パソコンやスマホを長時間使用したと、ご本人がおっしゃっています」
「…………」
「…………」
「…………」
「…あっ!」
何かに気づいたウタさんが立ち上がって、つかつかとカーテンへと歩み寄りました。
シャッ!
カーテンの奥のベッドで、キョウコさんはお布団を頭からすっぽりと被っています。
「ママ!いいかげんにしないと目を悪くするよって、ウタこないだ言ったよねっ?」
「ごめんなさいね…でもねえだってねえ…」
「聞こえないっ!お布団から顔を出して!」
「待って待ってウタちゃん、ママまだ疲れてるだろうから。あっちでお話しましょ」
クーさんがウタさんをなだめて制し、先程まで座っていた長椅子へ連れ戻しました。
「ウタちゃんは心当たりがあるの?ママのデジタル眼精疲労に」
「うん、間違いないと思う。ていうか間違いないよね?ママ?」
ウタさんの問いにキョウコさんは更に体を丸め、お布団と一体化してしまいました。
第12話
「キョウコママ、ここんとこネットを使って熱中してることがあるのよ」
「熱中してること?年寄りのわりには使いこなしてるなとは思ってたが」
「そうね。SNSとか掲示板で、最新の流行や話題には私より敏感だわ」
「何に熱中してんだ?まさかネトゲじゃねえよなあ」
「ポン、お前ママをゲームに誘ってないだろうな?」
「お前こそ、ママにネット証券とか勧めてねえか?」
ウタさんはエゾフタゴを無視して、クーさんやトミーさんたちへ話を続けました。
「ひとつは中国語の勉強。忘れかけてる北京語と、それとは別に四川語の勉強も」
「中国語?まさかママもシャンちゃんみたいに中国へ…?」
「違うの違うの。その勉強の理由が、もうひとつの熱中してることに関係するの」
「四川語…もしかしてシャンちゃんのことが関係してる?」
「正解。そうなのよ、シャンちゃんの情報をずっとずっと探してて」
先々月にシャンシャンが引っ越して、先月ようやく三枚の写真が公開されました。
その後は待てど暮らせど写真の一枚もなく、情報も噂程度にしか入ってきません。
そこでキョウコさんは「きっと日本語で検索しているせいだわ!」と、一念発起。
オンライン講座で中国語を勉強しつつ、シャンシャンの情報を探す日々なのです。
「今さら中国語の勉強なんて恥ずかしいから、内緒ねって言われてたんだけど…」
「よし、原因は分かった。なあポロ、帰ったらPCには時間制限かけちまおうぜ」
「だな。あとあれだ、次の備品申請でブルーライトカットフィルタもらっとくか」
「スマホの使用時間については、私とウタちゃんで気をつけとくようにするわね」
実はルイス先生は、デジタル機器からの隔離のため入院を提案するつもりでした。
しかしこうしてキョウコさんの家族を見て、その必要はないな…と微笑みました。
最終話
「大丈夫だから!歩けるから!おろしてちょうだいな!」
すっかり日の暮れた、上野動物園の東園です。クマたちの大きな声が聞こえてきます。
医療センターからの帰り道は、ポンくんがキョウコさんをお姫さま抱っこしています。
恥ずかしがってベッドから出てこないため、再び無理やり抱きかかえられたのでした。
クーさんとウタさんは後ろについて歩きつつ、キョウコさんのお薬を確認しています。
「この錠剤は1日1回いつでも良し、でも忘れないように時間を決めたいわよね」
「そうだね。さっそく今日から飲んでほしいから、晩ごはんの後って決めようよ」
「そうしましょ。目薬が就寝前だから、どちらも夜で忘れにくくて良いと思うわ」
「そして、こっちのお薬が目や頭が痛む時だけで…」
“大好きなTAKE~♪緑のTAKE~♪”
「やだ、こんな時間に着信…もしもし?あらトミーさん?」
「着信音もダブルPかよ」
「先ほどは…はいっ?はいっ?それって本当ですかっ?」
「急にどしたよクー、なまらびっくりするべさ」
「どうしたの?トミーさんは何て言ってるの?」
「シャンちゃんの動画、昨日公開されてたんですって!」
「まあ!それは公式動画なの?フェイクじゃないわねっ?間違いないわねっ?」
キョウコさんのネットリテラシーの高さは、エゾフタゴのパソコン講座の賜物です。
「トミーさんからの情報なら間違いないだろう」
「ねえねえ私のスマホどこ?今すぐ見たいわ!」
「スマホのちっせえ画面じゃなくてパソコンで観ようぜ!ママ、しっかり掴まっててな!」
「え!ちょ待っひえっ!ひえぇえぇえぇえぇ~」
キョウコさんの悲鳴が時速50キロで遠ざかり、クマたちの丘へと消えてゆきました…。
>>962
楽しいお話きてたー!
キョウコさん、クマには珍しい眼精疲労になっちゃうほどシャンちゃんの情報をリサーチしていたんですね…涙
私たちも同じシャンちゃんファンとして気持ちはよーくわかります
これからも無理せず一緒に応援していきましょうね
ちなみにトミーさんは上野の副園長さんがモデルかちら?
ルイスさんがメガネグマだけに眼科医というのも楽しい設定でなるほど!と納得でした
(ルイスさんの正式名称ってルイス・ロゲリオさんなんですね 勉強になりました)
作家さん(梨男さんでしょうか?違っていたらすみません)、とても楽しいお話をありがとうございました!
作家さん、とても楽しく読ませて頂きました
普段元気なキョウコさんが検査を受けると聞いたらみんな心配しますよね
そして、まさかのオチw
勉強熱心なキョウコさんのことですから、ほどほどにしてくださいね
>>950-963
作家さん、楽しい大作ありがとシャンです!
お話のタイトルは小泉さんのほうのキョウコさん主演の「少女に何が起こったか」にかかってるんですよね?
当時、夢中でドラマを見ていた身としましてはタイトルだけでもう「おおぉ~!」ってなりましたw
キョウコさんの不調はシャンちゃんの様子を知りたいが故だったんですね
今ではシャンちゃんの情報もたくさん入ってくるようになりましたが、キョウコさんが目を使いすぎないよう周りのみんなが相変わらずお世話を焼いてくれてるんだろうな
ホッキョクグマのゆめでしゅ
うちのすなすけもエゾヒグマクラブに入れましゅか?
お読みくださった皆さま、ありがとうございました
皆さまさすがのお察しで、タイトルのネタもトミーさんの正体も大正解でございました
※キョウコさんの写真はラミネートさんよりお借りしました。ありがとうございます😊