パンダ記念日 ~プルとお誕生日と、もうひとつのお祝い
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プルでちゅ。今日はプルのさんさいのおたんじょうび、
みんなにおいわいしてもろてたのちかったでちゅ!
竹もいっぱい、こおりもいっぱい、ゆきもいっぱい、みんなのえがおもいっぱいでちゅ!
プレゼントは、ふぁんのみなさんがえらんでくれたときいたでちゅ。
プルにはごちそうがいちばんね、と竹のもりあわせをえらんでくれたそうでちゅ。
よくわかってまちゅね。プルプル
竹はとってもおいちくて、プルはよるになるまでにぜーんぶ食べまちた!
ありがとでちゅ。
でも…でもね。
ないしょでちゅよ、ほんとはプル、竹をこっそりのこしておいたんでちゅ。
今日はプルだけのおいわいじゃないって、しってるんでちゅ。
このおいちい竹、プレゼントしたいひとがいるんでちゅよ。
今日はちょっとしかおひるねしなかったからねむたいけど、いまからおいわいにいってきまちゅね!
『…永明さん、会いたかったなぁ…』
飼育員さんから貸してもらったパソコンで、今日公開されたばかりの永明さんの動画を繰り返し眺めながら、
夜のブリーディングセンターの室内で、良浜は寂しそうにつぶやきました。
今日はプルの三歳の誕生日。
可愛い末っ子が一日中お祝いしてもらい、皆に祝福されたこの日は良浜にとっても嬉しい一日でしたが、
本当は夜には中国の永明さん達とオンラインをつなぎ、家族の皆でプルの誕生パーティをする予定でした。
それがどうしたことか回線の調子が悪くて直らず、延期になってしまったのです。
偶然にも同じ日に、成都から永明さんの動画が公開されてそれはそれで嬉しいのですが、
本当は一方的に送られてきた動画ではなく、話をして笑い合いたかった…良浜はそう思うのです。
『だって、そうやろ…今日はプルの誕生日と、もうひとつ…』
と、つぶやきかけたその時、良浜の鼻がひくひくと動きました。
『なんや、めっちゃ良い竹の匂いがする……あ、プル子?! 夜中にどうしたんや!』
振り返ると、そこには7種類の竹を抱えた末っ子のプルが、ニコニコと立っていました。
『あのね、プルね、きょうはおいちい竹をいっぱいもろたでちゅ。
だから、お母ちゃんにも少しあげまちゅ』
そう言って差し出された竹は、プルの誕生日プレゼントとして特別に選び抜かれた美味しい7種類の竹です。
その瑞々しい香りに最近グルメ度が増した良浜は思わずゴクリと唾を飲み、すぐに慌てて首を振りました。
『何言うてんの、これはプル子がもらった誕生日プレゼントやろ。
お母ちゃんは誕生日と違うんやから、これは全部プル子がお食べ』
『お母ちゃんはおたんじょうびじゃないでちゅ。
でも、今日はお母ちゃんとお父ちゃんのおいわいでちゅ。プルはしってまちゅ』
『プル子…そうか、そうやったんか…』
良浜はニコニコと竹を差し出すプルを、ぎゅっと抱きしめました。
『プル子は優しいなぁ…うんうん、そしたらお母ちゃん、少しだけもらうな。一緒に食べような』
『わーい、お母ちゃんといっしょ、うれちいでちゅ!』
『食べ終わったら、久しぶりに一緒に寝よな。
飼育員さんには言うとくさかい、今夜はここに泊まったらええよ』
『えっ、いいんでちゅか? プル、もうひとりだちしたでちゅ』
『今日は特別や。プル子は今日は忙しかったさかい、眠たいやろ。お母ちゃんの腕枕で寝ような』
プルの頬が嬉しさにぽーっと赤くなり、赤ちゃんの頃のように良浜の胸に飛び込みました。
4
それを抱き留めながら、良浜は心でつぶやきます。
(永明さん…こんないい子供たちに恵まれた私らは、やっぱり最高の夫婦やな。
今どんなに遠くても、今すぐに会うことがかなわなくても、ずっとずっと私らは夫婦なんや)
去年までは、ファンや飼育員さん達からそれとなく永明さんと良浜にかけられていた、
「おめでとう」
「今日は2人にふさわしい日ね」
…そんな言葉が、今年は聞かれないのが寂しかった。
でも、ちゃんとこの日を知っていてくれて、自分のプレゼントを分けてまで祝ってくれる優しい娘がここにいるのです。
『プル子、三歳のお誕生日おめでとう!』
『おかあちゃん、それからおとうちゃん、おめでと!』
母と娘、2人の楽しいお祝いの夜はこれからです。
明日には中国とつながるオンラインの回線も直り、懐かしい声が聞けるでしょう。
11月22日。
たくさんの愛に包まれた三歳の誕生日。
そして、離れていても深い絆で結ばれた「いい夫婦の日」。
おしまい
お話きてた!ありがとうございます
プルちゃん、プレゼントしてもらった竹をママに取っておいたのね
久しぶりに一緒に眠れて嬉しかっただろうなあ
>>218
素敵なお話ありがとう
健康で優しい娘ちゃん
良さんも今日こそダンナ様とリモート楽しんでね
パラリラ見習いさん達は神戸と大阪に警備の派遣行ってるのかちら
かわいいおはなしきてたー
ありがとしゃんでしゅ
素敵なお話きてたー!ありがとうこざいます!
パンダ界、いや動物界きってのおしどり夫婦の永明さんとラウちゃんですもんね
去年までは普通に掛けられていたお祝いの言葉が聞けなかったラウちゃんの寂しさに胸が締め付けられました
でもちゃーんと可愛い末っ子はそのことに気づいてくれていましたね
久しぶりに一緒にお食事して一緒に眠って、ふたりにとってとても素敵な一日だったのではないでしょうか