風の通りの良いようにと開け放った玄関から、小雅の仲良しさん達の声が揃って聞こえた。
「はーい!いらっしゃい、待ってたよ」
小雅がお出迎え…とは言っても狭い部屋、振り向いて立ち上がっただけだけれど、小雅はスキップでもしそうな喜びようだ。
お招きという形で遊びに来てもらうのは初めての事だから、嬉しくて楽しくてワクワクしているのだろう。
「おばちゃん、こんにちは!」
「こんにちはでしゅ!」
「二人ともいらっしゃい。あら、コトちゃんは大人色になってきたね」
「そうなの。もうすぐね、小雅ちゃんとシャン子ちゃんみたいに、白と黒がキレイに分かれるの」
「そうかあ、マレーバクさんは成長が早いんだねえ」
「おばちゃんあのね、シャンもね、ピンクだったんでしゅよ」
「そうだったね。シャン子ちゃんのピンクは見事で綺麗で、ニュースになったもんねえ」
「あいっ!えへへ」
「さあさあ二人とも、座って待っててね。おばちゃん、すぐに用意するから」
小雅に手伝いを頼もうとしたら、もう小雅はエプロンを着けて動き始めていた。
「シャン子ちゃんコトちゃん、はい、冷たいおしぼりだよ」
「わあー、気持ちいいでしゅ!」
「首に置いても気持ちいいんだよ、コトちゃん届く?」
「届かなーい」
「置いてあげるよ、おしぼり貸してごらん」
おもてなし気分とお姉さん気分で、いつも以上にシャン子ちゃん達のお世話をしている。
お手伝い、頼むほどの事じゃないわね。
子供達の笑い声と風鈴の音色に耳を傾けながら、スプーンとガラスの器をセットする。音を立てないように、そっと。
「あ、母ちゃん、小雅が運ぶよ」
「これはガラスで重たいから母ちゃんが運ぶね、小雅はパンダちゃんを運んでくれる?」
「はーい!」
「パンダしゃん?小雅ちゃんちに赤ちゃん産まれたでしゅか?」
「ふふふ、違うよ。じゃじゃーんっ!」
私がそうして見せたように、小雅もかき氷機を箱から取り出して見せた。
「わあ可愛い!これなあに?」
「かき氷を作る機械だよ、このパンダちゃんの帽子を取ってね…」
「ああ小雅、帽子の裏のトゲトゲに気を付けて」
注意しながら、私は冷凍室からまあるい氷を取り出した。
「小雅いいかい?持って行くよ」
「うん!」
「あっ!それシャン知ってましゅ!氷でしゅ!」
「そうだよシャン子ちゃん、シャン子ちゃんちの氷と違って、リンゴは入ってないけどね」
「母ちゃん!小雅が回すよ!」
「はいはい、ここから交代ね」
氷をセットしてパンダちゃんに帽子を被せて、小雅へバトンタッチ。パンダちゃんのお腹の前へ、器をセットした。
「二人とも、いーい?見ててね、ここをくるくるってするとね…」
ガリッ!ガリガリガリガリッ!
「雪でしゅ!雪が降ってきたでしゅ!」
「すごーい!キラキラふわふわしてるー!」
「シャン子ちゃんとコトちゃんも回してみる?」
「うん!」
「じゃあ順番にね」
一人がハンドルを回し、一人がパンダちゃんを支え、一人が積もっていくかき氷を見守る。
自然とローテーションを組んで協力し合う姿に、子供達の新たな成長を感じた。
小さな雪山が出揃ったところで、私と小雅は再びバトンタッチした。
「ふわふわの氷が潰れないように、こうして少し高いところからね」
細く細く、カルピスを回しかけていく。うっとりと眺める小雅とシャン子ちゃん対して、コトちゃんは香りに反応した。
「おばちゃん、これ、とってもいい匂いがするね」
「マンゴーの香りだよ」
「やっぱり!ばあばのお家で食べた事あるよ。コト、マンゴー大好き」
さすが、マレーバクのお子さん。日本で産まれ育っても、きっと南国の果物に血が騒ぐのだろう。
「さあどうぞ、召し上がれ」
「頂きまーす!」
「あっシャン子ちゃん!そんなにお口いっぱいに入れちゃうと」
「んんんんーっ!頭がキーンってするでしゅー!」
「そう言おうとしたのに、シャン子ちゃんったら」
「でも美味しいでしゅ!シャンもマンゴー好きになったでしゅ」
「コトもかき氷、好きになったよ」
「シャンもお家で、かき氷作ってみたいでしゅねえ」
「シャン子ちゃんちの大きな氷は、パンダちゃんに入らないんじゃないかな」
「パパくらい大きなパンダちゃんがあれば作れましゅよ!」
「シャン子ちゃん頭いい!」
「ガリガリするのは、お兄さん達にお願いしよう!」
「お兄しゃん達なら、雪だるま作れるくらいガリガリできましゅよね!」
キャハハハハ!と弾む笑い声に、私もつられて笑ってしまう。かき氷に喜ぶ姿と、子供達らしい発想が微笑ましくて。
そして…ついつい、頭のてっぺんにハンドルを着けたリーさんと、それを交代で回すお兄さん達を想像してしまって。
素敵なお話あリーリー!
最後笑ったw