温泉プミ女将の湯けむり事件簿⑩-2019/04/07(日)

ー温泉プミ女将の湯けむり事件簿⑩

じいじはロックのウィスキーをチビリチビリ飲みながら話を続けた。
「そのおなごに声を掛けると、幾日もそこで動けなくなっていたようで、水をと言ったんじゃ。
水を酌んでくるようなものを何も持っていなかったわしは…とりあえず沢まで降りて行き…口いっぱいに水を含んでおなごのところに戻り、口移しで飲ませてあげたんじゃ…。
間接キッスならぬ直接キッスじゃ…ウヒヒヒヒヒヒ」といやらしい笑い声をあげて、今度はウィスキーを一気に飲み干した。
「シンコさんおかわりじゃ」とシンコにグラスを差し出した。

蘭妃はふっくらとした頬と毛艶の美しさ、抜けるような白い肌を持ち多くの側室達の中でも、とりわけ康皇帝に寵愛されていた。
康皇帝には七仔を含め七皇子、四番目と五番目の皇子の間に一皇女がいた。全員母親は違う。

皇子である七仔を産んだことで、貴妃に封じられ蘭貴妃となったが、七仔が皇子達の次期皇帝争いに巻き込まれることを恐れていた。

そんな中、康皇帝が病床に付し、蘭貴妃は皇帝に呼ばれた。
「朕は七仔を次期皇帝にと考えている」
蘭貴妃はうろたえた。
「皇上、七仔はまだ幼く…」
蘭貴妃の話を遮るように康皇帝は続けた。

…つづく