温泉プミ女将の湯けむり事件簿⑪-2019/04/08(月)

ー温泉プミ女将の湯けむり事件簿⑪

康皇帝は七仔の身を守るため、蘭貴妃と七仔に城を出て、峠を三つ越えた先にある寂れた寺に身を隠すよう命じた。

広大な敷地の四方を高い塀で囲まれた城には幾つかの門があったが、出入りは自由に出来なかった。
皇帝の命令によりあっさりと門から城の外に出ることが出来た蘭貴妃と七仔。
親子だけの旅が始まった。

ようやく二つ目峠を越えた時、疲労と眠気で蘭貴妃はふらつき、崖の下に滑り落ち怪我をして動けなくなってしまった。
突然母の姿が見えなくなった七仔は蘭貴妃がいる崖下とは反対の方向に泣きながら走り出し、それから蘭貴妃と七仔は二度と会うことはなかった。

気を失っていた蘭貴妃に男前ではないが、優しそうな男が
「大丈夫か！」と駆け寄って話掛けると、蘭貴妃は
「水を…」と言い、男は水を汲んできて蘭貴妃に飲ませてあげた。

「おなごは水を飲むと、息子とはぐれてしまったと言ったんじゃ」
「あら、それでじいじはどうしたの？」とシンコも水割りを飲みながらじいじの作り話につきあった。

…つづく