コトちゃんのお話４-2019/08/01(木)

小雅とコトちゃんの寝床を整えた後、今夜は扇風機で良いのか冷房が良いのか、しばらく悩んでいた。
マレーバクさんだから暑さには強いと思うのだけれど、コトちゃんは日本の産まれだし―あ、スマホが鳴ってるわ。
「もしもし？あら銭湯のお婆さん、え？小雅と代わる？」
『もしもし！母ちゃん？』
「どうしたの小雅、何かあったの？」
『あのね、おばあちゃんがね、小雅とコトちゃんに牛乳あげるって』
「ぎゅ…」
『小雅は今日もう牛乳もらってるし、母ちゃんがいない時はもらえないって言ったんだけど、どうしよう』
「…そうね、じゃあ今日だけ特別ね。一本だけいただいて、コトちゃんと半分こしなさい」
『分かった！ありがとう母ちゃん！』
「帰ってきたら、カルピスとスイカがあるからね」
『スイカもあるの？じゃあ急いで飲んで帰る！』
「慌てずにゆっくり飲んでおいで。お婆さんにお礼を言って、ああそれから！走らずに歩いて帰ってくること！」

牛乳を飲んで帰ってきて、それからカルピスとスイカか。
うん、お腹を冷やしちゃいけないわね。やっぱり今夜は扇風機だけにしよう。それから…。

私は家中の窓を開けた。そして、押し入れの奥から小さな箱を取り出した。

「子供たちが眠るまでの間だけ、ね」

箱の中身は、私の宝物の中国風鈴。そっとつまみ上げて、そっと窓辺へ吊した。
「あ！母ちゃんだ！ただいまー！」
窓の下で、お風呂あがりの小雅とコトちゃんが手を振っている。
「二人ともお帰り！階段に気をつけて、早く上がっておいで」
子供たちに手を振り返すと、風鈴もシャラリ…と鳴って、子供たちを出迎えた。