娘のピンクのお弁当箱を開けて私は思い切り顔をしかめた。筍と人参の和え物を詰めたのだが案の上人参だけ残している…
私は思い切って娘に尋ねた。
「どうして食べなかったの？」
「シャン、人参嫌い!!まずいんだもん!!」
「……」
すかさず夫がフォローしてくれた。
「シャン、作ってくれたママの気持ちも考えないとだめだよ」
私「せめて一口だけでも…」
「嫌いなものは嫌い!!絶対食べない!!」
娘はまあるい頬をプーと膨らませて自分の部屋に行ってしまった。
困ったわ…反抗期かしら？
私はオロオロするばかりだった。
続く
台所の片付けを終えた後も私は食卓に座り娘の人参問題について考えていた。
どうしましょう…どうしたらいいかしら？
白浜家の奥さんに相談してみようかしら？
きっとそんなのちゃんと叱らなきゃダメよ!!もっと厳しいなさい！自分に自信もって！って言われるかもね…
娘が生まれてから叱らない子育てを実戦してきた。息子を亡くした反動からかどうしても甘くなってしまう…
やっぱきちっと叱らないと駄目かしら？
お風呂から出てきた夫が言った。
「シンちゃん、あんま悩まない方がいいよ。あの子ももう一人前のパンダだ。
自然と食べるようになるよ」
続く
夫は久々に私の名前を呼んだ。
娘が生まれるまではシンちゃん、リーさんと名前で呼びあっていた。娘が生まれてからはパパ、ママと呼ぶのが定着していた。
何だか照れ臭くて一人頬を赤くした。
夫は言った。
「僕たちは長い間子宝に恵まれなかった。
その時の辛さに比べたら今の悩みなんてくるしみのうちに入らないよ。むしろ
しあわせな悩みだ。そう思わないか？」
しあわせな悩み…私は心がフッと軽くなって行くのを感じていた。
「シンちゃん、子ともがいてこその苦労だよ！居なかったら何もなかった。」
いてこその悩み…そうよね。子ともがいない時の辛さに比べたらむしろ幸せな悩みだわ。夫の言葉に私は大きく頷いた。
贅沢な悩みだわよね。もっと気楽にいこうと思った。私はのしっと立ち上がった。
そう言えば…自転車の後ろのタイヤが空気が抜けてペッタンこになってたんだっけ。
明日朝イチで空気入れなきゃ。
どういうわけか最近すぐペッタンこになるのよねー。どうしてかしら？
タイヤが日々巨大化するお尻を支えるのが限界に近いことには気付いていないシン子さんであった。
上野のしあわせ家族★
シンママ子育てに悩む日誌
シンママ日誌きたーーー！
乗った瞬間タイヤの空気抜けてるのね
それ、タイヤじゃなくてシンママの体重が…ｹﾞﾌﾝｹﾞﾌﾝ
シンママ、あまり深刻に悩まないで
シャンちゃんは人参をちゃんと食べる時もあるよ その時はうんとほめてあげてね
自転車のタイヤしゃんもよく耐えてる えらいっ
ﾁﾘﾝﾁﾘﾝ
よっこらしょっと
ﾌﾟｼｭｰｰｰｰｰｰｰｯ
