~ベビールームのウタ先生とおちびさんたち~クリスマス編
(つづき)
~ここは空の上の老パンホーム~
梅梅保育園のお隣の老パンホームでは、今日もシャンちゃんのじぃじたちやばぁばが賑やかにお茶の時間を楽しんでいます。
アッハッハッハ!コリャケッサクダ!ワッハッハッハ!
「ん?誰じゃろ?何やら真剣な願いごとをしておるものがいるのぉ」
「まーた空耳かの?歳は取りたくないのぉ」
「何じゃと!ほら!耳を澄ませてみい!」
じぃじたちやばぁばは、おしゃべりをやめて耳を澄ませてみました。
すると、
「お願い…アティ…アルンがクリスマスにパパに来てもらえないと悲しんでるの…こんなこと、アティ、あなたも辛くなるのに祈ってごめんなさいね…でもアルン坊やの初めてのクリスマスなのよ…どうか…どうか…力を貸してちょうだい…アティ…ダヤー姉さん…アルンとウタイを助けてあげて…」
スーリヤさんの真剣な願いが、老パンホームのリビングに聞こえてきたのでした。
「こりゃ大変じゃ!アルン坊やが悲しんでおる!」
「これはアティに知らせんといかんな」
「わし、ひとっ走り隣の【エレファント・キングダム】まで行ってくるでの」
リンリンじぃじは赤い雪柄のマフラーを首にひょいっと引っかけて、颯爽と出かけていきました。
エッホエッホ…
老パンホームのお隣にある【エレファント・キングダム】の正式名称は「The Elephant Kingdom of Heaven」といい、ここはゾウたちの天国なのです。
世界中のゾウたちが集まり、体が大きいこともあって、【エレファント・キングダム】は、とてもとても広い国なのでした。
リンリンじぃじはエレファント・キングダムの厚い扉の前に着くと、声を張り上げて叫びました。
「オホンッ!たのもー!…おーい!だれかおらんかー!わしじゃ、隣の老パンホームのリンリンじゃ!上野のアティに会いたいんじゃが、ここを開けてくれまいか!」
ギ…ギギギ…ギィー…
エレファント・キングダムの重い扉がゆっくりと開きました。
「リンリンさん!ご無沙汰しております。どうしたんですか?」
扉の間から顔を出したのは、アルンの父であるアティでした。
「おお!アティくん!久しぶりじゃのぉ!元気にしておったか?」
「こんにちは、リンリンさん、お久しぶりです、ダヤーです」
アティの後ろからダヤーも顔を出しました。
「おおお!ダヤーさん、お久しぶりじゃ!うちのシャンがお世話になりましたなぁ」
「ええ、とっても可愛いお嬢さんでね。時々おてんばさんなところも見せてくれて楽しかったわ。フフフ」
「フォッフォッフォッ!シャンはわしに似てお茶目で可愛らしいからのぉ。ゴマンエツ……おおお!いかんいかん!挨拶は後じゃ!アルンがな、アルン坊やが大変なんじゃよ」
リンリンじぃじはアルンの想いを、アティとダヤーに話しました。
「そうだったの…アルンちゃん、初めてのクリスマスですものね。楽しみにしているわよね」
「そうですよね…お父さんがサンタになってクリスマスプレゼントを運んできてくれる家が多いですもんね…ぼくがいないばっかりに…アルンに寂しい想いをさせてしまって…ぼくは…ぼくは…父親失格だ…」
「アティ、それは違うと言ったはずよ。あなたは父親失格なんかじゃないわ」
「そうじゃよ。アティくん、君はアルン坊やの立派な父親じゃよ。シャンが言っておったぞ。アルン坊やはとても思いやりがあって優しいと。それはアティくん、君の遺志をしっかりと引き継いでいるからじゃよ。アルン坊やはたくましく、スクスクと成長しとる、安心しなされ」
「ありがとうございます…グスッ」
リンリンじぃじはアティの背中をポンポンと優しく叩きました。
すると、アティは涙を拭き、意を決して言いました。
「ぼく、サンタになってアルンの元にプレゼントを贈りたいです!どうにか下界に降りることができないか、象の神さまに頼んできます!」
「おお!それは名案じゃ!神さまも快諾くださるだろうよ」
リンリンじぃじとダヤーは、象の神さまにお願いしに行くアティを送り出しました。
「フォッフォッフォッ、アティくん、後ろ姿がずいぶん逞しく見えるのぉ」
「本当ですねぇ。上手くいくといいのだけれど」
つづく
~ベビールームのウタ先生とおちびさんたち~クリスマス編
---アルンの願い---
(つづき)
~ここは【エレファント・キングダム】の象の神さまのお部屋~
「アティ、事情は分かった」
「神さま!ありがとうございます!」
「いやいや、アティ、慌てるでない。下界に降りるのも難しいことであるぞ。まして、プレゼントを贈るとなると、物質を移動させることになる。それを許すことはできない」
「…そんな…」
アティは暗黒の中に突き落とされた気持ちになり、うなだれてしまいました。
「待たれよ!!」
そこに、パンダの神さまが、象の神さまの部屋に勢いよく入って来ました。
パンダの神さまの少し後ろには、梅梅保育園の園長である梅梅さんもいました。
「これはこれは、パンダの神さまと梅梅園長ではないか」
「無断で入ってきて申し訳ない。…アティくんの願い、どうにか叶えられんか」
「誤解をされているようだが、わたしの気持ちも、出来ればアティの願いを叶えてやりたいのだよ。しかし、天国と下界の行き来を安易にすることは、やってはならんのだ。天国と下界の境界を曖昧にすることは、いずれ境界線に綻びを生み、そこから世界が崩れていくのだ。そのようなことを神として許す訳にはいかない。わたしが言いたいのは、そういうことだ」
そこにいる四人はしばらく黙って、どうにかアティにサンタとしてアルンを喜ばせる方法はないか考えを巡らせていました。
すると…
バーーーンッ!!
「メリーーーークリスマーーーース!!」
静寂を破り、勢いよく扉を開けて入ってきたのは、なんとサンタクロースでした。
「Ho!Ho!Ho! いやぁちょっとエッグノッグを飲みすぎたわい!ウィーヒック」
四人は神妙な顔でサンタクロースを見つめています。
「まぁまぁまぁ、皆さん!そんな神妙な顔をしなさんな。まもなく子どもたちが待ちに待った楽しいクリスマスの本番ですぞ」
「今わたしたちは、そのクリスマスに、アティがアルンを喜ばすためには、どうすればいいかを真剣に議論しているところだ」
象の神さまは威厳を持って言いました。
「象の神さま、真剣なのはいいが、そんな風に眉間にシワを寄せていては良いアイデアも浮かびませんぞ。ルドルフ!あれを皆さんに! パチンッ」
サンタクロースが指を鳴らすと、トナカイのルドルフが赤い鼻の上にトレイを乗せて四人のところへ歩み寄りました。
四人がルドルフのトレイの上のカップを取ると、その中には温かいエッグノッグが入っていたのでした。
「少しほろ酔いくらいが頭が回るんじゃよ。ホゥホゥホゥ♪」
「だから、わたしたちは真剣にだな…」
「あらまぁ!美味しい!」
象の神さまの言葉をさえぎったのは、梅梅さんでした。
「ふふふ、象の神さま、パンダの神さま、そしてアティさん、ちょっとこれを飲んでごらんなさい」
梅梅さんに促されて、三人はエッグノッグをひと口飲んでみました。
すると、三人の身体はみるみる内に温まり、頬にはほんのり赤みがさしてきました。
「ホゥ~これは美味い。身体が温まる」
「そうじゃろぅ、そうじゃろぅ ホゥホゥホゥ♪」
先ほどの四人で鼻を突き合わせていた時のピンと張り詰めていた空気が、一気にほぐれていったのをサンタクロースは見逃しませんでした。
そして、このタイミングで、サンタクロースは提案しました。
「わたしはクリスマスにはいつも世界中の子どもたちにプレゼントを配っているのはご存知であろう?しかしながら、それは決して1人では成し得ないことなんじゃ。いつもいつも世界中の仲間たちや弟子たちが、クリスマスにはサンタクロースになって手分けしてプレゼントを配ってくれておるんじゃ。子どもたちが今か今かとクリスマスプレゼントを待っておるからな。早くに届けるために皆で協力し合うんじゃよ」
三人はエッグノッグの温かいカップを両手で包むように持ちながら、サンタクロースの言葉を静かに聞いていました。
「どうじゃろう、そのクリスマスプレゼントを配る協力者として、今回アティくんの手を貸してもらえないだろうか?」
「ふむ……なるほどな…」
象の神さまはしばし考えました。
アティは象の神さまがどのように答えるのか、祈るような気持ちでその答えを待ちました。
「そうだな、良いアイデアかもしれんな。サンタクロース公認であるならば、これは神といえど反対することはできんな」
象の神さまはそう言うと、神さまの表情もようやく和らいだように見えました。
「そうか!それでは決まりだな!アティくん、では早速手伝ってもらうことにするかな。ルドルフ、アティくんにあれを。 パチンッ」
サンタクロースが指を鳴らすと、ルドルフはまた赤い鼻の上に大きな包みを乗せて、アティに差し出しました。
包みを開けると、中にはサンタクロースの衣装と帽子など、サンタクロースとして必要なものが入っていました。
「さあ、アティくん!それを着たら早速出発だ!君には日本の上野動物園の「ゾウ舎」を重点的に回ってもらうことにしよう!」
サンタクロースはそう言うと、アティにパチンとウィンクしました。
「ああ…あ…ありがとうございます!」
アティは嬉し涙が込み上げて、感謝の言葉を伝えるのがやっとでした。
また少し時間を空けてUPさせていただきます
よろしくお願いします
作家さん、ありがとうございます
ゴワゴワ用意して待機しています!
読んでいただきありがとうございます!
感想まで寄せてくださり本当に嬉しいです
今日はIDが変わってしまうみたいで、
その度に名乗って、なんだかすみません
また今から数レスUPいたします
また読んでいただけたら嬉しいです