~文豪缶詰プラン 御徒町力男編 その5
バキッペキッ
部屋の中で竹を割る音が響く
目を瞑ると懐かしい故郷の竹林を思い出す
時折「ムシャムシャ」と聞こえるのは気のせいか
「違うわね これじゃないわ」
大女将が呟きながら竹を選んでいるようだ
「大女将さんは竹にはうるさいのですか?」
私は尋ねてみた
「あいっ、竹にはうるさいでしゅ お免状も持ってましゅ 馬騎武者流の師範でしゅ」
「竹ソムリエやで」
若女将と番頭が答えてくれた
「そうか かなりこだわりがありそうだね」
大女将は竹を選んでいたが気に入ったのはなかったようだ
「しょうがないわね また探してくるわ ペキッ」
「え?探すって?」
「裏に竹林がありましゅ オオカミはそこで竹を選んでましゅ」
「そうそう、長い時は一週間こもることもあるんやで」
「誰がオオカミですって? ワナワナ」
「大女将といいまちた エヘン」
「そうそう、気のせいやで大女将 ピキー」
「あ、あの 今のままでも十分綺麗に活けてあるしこれでいいですよ」
私は大女将に言った
「あ、あらそうですか? お客様がそうおっしゃるならこのままでよろしいですか?」
「はい お願いします」
その時だった
リリリーン バキムシャプミーピキー♪
部屋の電話が鳴った
「はい、もしもし」
「先生、すすんでましゅか? クィー」
「は、はい 順調です」
「わかりまちた 明日朝10時におうかがいしましゅ クィー」
私は電話を置いたあと、誰だったのだろうと思った
「誰なんだろう」
「もしかして進んでますか? と聞かれました?」
大女将が言った
「はい」
「それは文豪缶詰プランのサービスのひとつで、催促電話ですのよ ウフフ」
「ああ、なるほど」
「今のはサン坊でしゅ」
「せやな」
「サン坊?」
「丁稚でしゅ」
「おかきもちさんが最初に会った小僧やで」
「ああ、あの若い子ですか サン坊さんとおっしゃるのですね」
「ところで、台帳を見て思ったのですが先生はもしかして映画監督さんですか? ウフフ」
大女将に聞かれた
時折「ムシャムシャ」と聞こえるのは気のせいかwwwww
決して気のせいではないのよ
サン坊大活躍でナツさんもホッとしてるね
オオカミやらおかきもちやら電話の呼び出し音やら…もう笑いが止まりましぇん
>>322
馬騎武者流師範www
大女将がいよいよ御徒町さんの職業の話に触れたね ワクワク