彩浜のゆうびん屋さん-2020/08/29(土)

彩浜のゆうびん屋さん

～ここは浜家の…長ーい廊下～

廊下の奥の方から自転車のベルの音と小さな足音が聞こえてきます。
ちりんちりん…トコトコ…トコトコ…

ちりんちりん　コンコン…
「はーい！どなたー？」カチャ…
「お届けものでしゅ！」桃浜がお部屋のドアを開けると、彩浜が顔を見上げて立っていました。
「あら、可愛い郵便屋さんね。何を届けに来てくれたのかしら？」
「ちょっと待ってくだしゃい！」彩浜は斜めがけしたショルダーバッグに両手を突っ込み、ガサガサと何かを探しています。
「はい！どーぞでしゅ！」彩浜は桃浜に届いた封筒を手渡しました。
「ありがとう！郵便屋さん」
郵便屋さんと言われて、彩浜は満足げにニッコリと微笑みました。

「手に持ってる自転車のベルはどうしたの？」桜浜が聞きました。
「おとうしゃんがくれたでしゅ！」彩浜は嬉しそうに言いました。
「そうなのね。そうだ…手に持ってると落としちゃうかもしれないから、こうやって…はいできたわよ！」
桜浜は、彩浜の左手首に赤いリボンで自転車のベルを結び付けてあげました。
「ありがとでしゅ！」
彩浜は腕時計のように巻きつけられた赤いリボンとベルを目をキラキラさせて眺めています。
大人たちが腕時計を着けているのをいいなぁと思っていたので、自分も大人になったような気持ちになって嬉しかったのです。

「そうだ郵便屋さん！お手紙を預かって届けてもくれるのかしら？」桃浜が彩浜に尋ねました。
「はいでしゅ！お届けしましゅ！」
「じゃあちょっと待っててね！」桃浜は自分の机に向かって何やら書いています。
「はい、これ、お母さんに届けてくれるかしら？」桃浜はハガキを彩浜に手渡しました。
「はいでしゅ！今日中にお届けしましゅ！」
「ありがとう。助かるわ」ﾆｺﾆｺ
「しょれでは、さいはゆいおねえちゃまのところへ行きましゅので」と彩浜は言い、ペコリとお辞儀をしました。
「行ってらっしゃい！」桜浜と桃浜は言いました。

ちりんちりん…トコトコ…トコトコ…

ちりんちりん…コンコン…
「はーい！今開けるねー！」結浜がお部屋のドアを開けました。
「あれ？彩ちゃん、どうしたの？」
「さいはゆうびん屋しゃんでしゅ。お届けものしてましゅ」
そう言って彩浜は斜めがけしているショルダーバッグから大きい封筒を出して、結浜に渡しました。
「これっ！きゃー！頼んでた雑誌届いたんだー！」結浜は雑誌をぎゅっと抱きしめて喜びました。
「ありがとうー彩ちゃん！これ早く見たかったの！…あれ？彩ちゃんのショルダーバッグわたし初めて見た！お父さんの？」
「ちがうでしゅ。草刈正雄しゃんのマサ散歩のショルダーバッグでしゅ」
「そうなんだ！どおりで大人っぽいデザインだと思った！彩ちゃんすごく似合ってるよ！」
「そうでしゅか！ありがとでしゅ　ｴﾍﾍ」
「しょれでは、さいはまだお届けものがありましゅので」と彩浜は言い、ペコリとお辞儀をしました。
「行ってらっしゃい！」結浜は言いました。

ちりんちりん…トコトコ…トコトコ…

～ここは浜家の大きなリビング…の中にあるステキなキッチン～
良浜が夕飯の支度に取りかかっています。

ちりんちりん…トコトコ…

「おかあしゃん！」
「あら、彩ちゃん、お届けもの終わったの？」
「はいでしゅ。これおかあしゃんにでしゅ」
「あら私に？まあ桃浜からだわ…ふんふん…お夕飯のお手伝いをしたいって書いてあるわ。まあ助かるわ。彩ちゃん、お手紙届けてくれてありがとうね　ﾆｺﾆｺ」
「はいでしゅ！　ﾆｺﾆｺ」
「おつかれさま。おやつにして、休憩にしましょうね」
「はいでしゅ！　」

～ここは再び…桜浜と桃浜の可愛らしいお部屋～

「彩ちゃん、郵便屋さん楽しそうだったね」
「うん、彩ちゃんはお手伝いが好きだもんね　ｳﾌﾌ」
「ねえ桃浜、彩ちゃんにお手紙って届いてないよね？」
「うーん、そうねぇ、彩ちゃんに郵便物はないかなぁ」
「彩ちゃん、自分にお手紙が届いたら嬉しいんじゃないかなぁ？」
「うん、嬉しいと思う。私も小さい頃に自分宛にお手紙もらって嬉しかったもん！そうだ！じゃあ、私たちでお手紙書いてあげようか！」
「…ちょっと待って、私に良い考えがあるんだ！」

～ここは永明さんの大きな大きなオフィス～

プルルルル…プルルルル…カチャ…
「はい、有限会社、浜興業でございます。桜浜お嬢さま！お久しぶりでございます。お元気でしたか？はい、分かりました、今、永明会長にお繋ぎします。お待ちください。…永明会長、お電話です」
「カチャ…はい、永明です。おー！桜浜かいな！どないしたんや？何かあったんかいな？…ふんふん…彩ちゃんに…なるほど…分かった、任しとき！」
「どうなさいました？ご家族に何かございましたか？」永明さんの秘書が心配そうに尋ねました。
「いやいや、そうやのうてな。うちの彩浜が郵便屋さんごっこにハマったらしゅうてな。ｶﾞﾊﾊ」
「ええ、あのベビ浜ちゃんがですか！もうそんな風に遊ぶようになったんですねぇ！」
「ワハハ　それで悪いんやけど、ちょっと皆に協力して欲しうてな」

「おーい！皆すまないが、ちょっとだけ手を止めてこっち見てくれへんか！
忙しいところ悪いんやが、うちの彩浜が郵便屋さんごっこにハマってな　ｶﾞﾊﾊ
まだ自分宛ての手紙をもろうたことあらへんさかいな、誰か彩浜に手紙を書いてくれへんか？
家族からやとほんまもんの郵便っぽないって娘が言うさかいね」

「会長！私、ベビ浜ちゃんにお手紙出しますよ！」
「俺も字がキレイちゃうけど、ベビちゃんに手紙出しまっせ！」

カイチョーワタシモダシマスヨー！…オレモ！オレモ！ワタシモ…ベビチャンニ…ワイワイ…ガヤガヤ…ミンナオオキニナ…ワイワイ…ｶﾞﾊﾊ…ガヤガヤ…

こうして彩浜宛てのお手紙が山のように集まりました。
さて、明日郵便受けを覗いた彩浜のお顔…今から楽しみです。

おしまい