彩浜のお引越し
~ここは浜家の大きなリビング~
昨日、良浜が男の子を出産して、1日経った浜家。
永明さんと桜浜は産院に入院している良浜とベビ浜のお見舞いと、着替えや産着などを届けるための準備で朝からバタバタしています。
「お父さん!おもちゃはまだ持っていかなくて良いわよ!しかもそんなにたくさん!!」
桜浜は、両手に抱えきれない程のベビちゃん用のおもちゃを持って行こうとしている永明に言いました。
「おお!そうか!まだいらへんか!」
永明さんはかなりテンパっている様子です。
「じゃあ、私とお父さんはこれからお母さんのいる産院に行ってくるわね!」
「桃浜、留守番任せたで!大丈夫か?」
「大丈夫よ!結ちゃんと彩ちゃんのことは任せて!お昼ごはんも作っておくから、安心して行ってきて!」
「ほな、頼んだで!昼には帰ってくる予定やから!」
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!お母さんとベビちゃんによろしくね!」
永明さんと桜浜はバタバタと慌てて出かけていきました。
「じゃあ、そろそろお昼ごはん作ろうかな」
「ゆいもお手伝いするー!」
「彩ちゃんも一緒にご飯作る?」
「さいは、あそんでるでしゅ」
「分かったわ。何かあったらいつでも来てね!」
「はいでしゅ!」
彩浜は桃浜にそう言い終えると、リビングから廊下に出て寝室に向かいました。
トコトコ…トコトコ…カチャ…キィ…パタン…
彩浜は永明と良浜と毎晩一緒に寝ている寝室に入っていきました。
そして、寝室にある彩浜用の小さなクローゼットを開けました。
そこから、およそゆきの麦わら帽子とリュックを取り出すと、
リュックの中に、良浜にパンダの刺繍をしてもらったお気に入りのタオルと、毎晩良浜に読んでもらっている絵本を詰めました。
彩浜はリュックを背負いおよそゆきの麦わら帽子を被り、そして片手におひな様を抱え、もう片方に自分の枕を持って、寝室を出ました。
トコトコ…トコトコ…
彩浜はリビングの角にある彩浜のプレイコーナーに着くと、枕とおひな様、リュックをおろし、帽子を脱ぎました。
彩浜がリビングのプレイコーナーに戻ったことに気付いた桃浜が、
「彩ちゃん、寝室から枕を持ってきたのね。お昼寝したいの?」
とたずねると、彩浜は首をブンブンと振り、
「さい、今日からここで寝るでしゅ」と言いました。
「あら、お父さんと一緒に寝るのが嫌なの?そっか、イビキがうるさいものね」
すると、また彩浜は首をブンブンと振り、
「ちがうでしゅ。さいはおねえちゃまになったので、ひとりで寝るんでしゅ」
と真剣な顔をして言いました。
「そっか!彩ちゃんは初めてお姉ちゃまになったんだもんね。お姉さんらしくしたいのね!」
「はいでしゅ!さい、おねえちゃまだから、しっかりするでしゅ!」
ピンポーン?
そこへ、永明と桜浜が帰ってきました。
「ただいまー!ベビちゃん、可愛かったよ!元気いっぱいでお母さん抱っこするの大変そうだったわ ウフフ」
「いやあ、ほんま元気いっぱいやったな。らうちゃんも顔色よかったし、安心したわ」
「お腹すいたでしょ?ごはん用意できてるよ!」
「わーい!食べる食べるー!お腹ペコペコ」
ふと永明がプレイコーナーに目をやると、ちょこんと座っている彩浜を見つけました。
「ただいま、彩浜。お母さんとベビちゃん元気にしてたで。彩ちゃんは、どうやったかな?」
「おかあしゃんとベビしゃんが元気でよかったでしゅ!」
「ありがとう。ところで、彩ちゃん、枕をここに持ってきてお昼寝したいのかいな?もしかして、きぃき悪いんか?」
永明が心配そうに言うと、彩浜は首をブンブンと振りました。
「ちがうでしゅ。さいは今日からここでひとりで寝るでしゅ!」
「そうなんか。父さんと二人で寝るのは嫌なんかな?ガハハ」
「ちがうでしゅ。さいは、もうおねえちゃまだから、しっかりするでしゅ!」
彩浜はキリリとした真剣な表情で言いました。
すると永明は何かを感じとったのでした。
「彩浜、そないに急いでお姉さんにならんでもええんやで。ゆっくりゆっくりな」
「ダメでしゅ!はやくおねえしゃんになるでしゅ!」
「彩ちゃんは、早くお姉さんになりたいんやな。なんでそないに早うお姉さんになりたいんかな?」
永明は優しく彩浜に訊ねました。
彩浜は昨夜の出来ごとを永明に話しました。
いつもは大きなベッドで、永明と良浜の間にはさまれて彩浜は安心して眠ります。
昨夜は良浜が産院に入院したので、夜寝るとき永明が彩浜を寝かしつけました。
永明は彩浜のお気に入りの絵本を読み聞かせようとベッドに横たわりましたが、良浜の出産で疲れていた永明は絵本を持ったがはやいか、眠りについてしまったのです。
仕方なく彩浜は眠りにつこうと寝返りをうつと、そこにはいつもいるはずの良浜がいなかったので、彩浜の胸はキューっとなったのでした。
そして、気がつくと涙が後からあとから溢れて止まらなくなってしまったのです。
いつもだったら、そんな異変に気付いて抱き寄せて背中を優しくぽんぽんと叩いてくれる良浜がいなかったので、良浜が作ってくれたパンダの刺繍のタオルで、彩浜は一生懸命涙をぬぐいました。
そして、そのタオルとおひな様をぎゅっと抱きしめて、目を閉じて眠りについたのでした。
彩浜は翌朝、目が覚めると、リビングでは永明とお姉ちゃまたちが忙しなく良浜とベビちゃんのための準備をしていました。
皆ニコニコ笑いながら、はりきっています。
それを見て彩浜は、自分だけメソメソしてるのは、きっと自分がまだ赤ちゃんだからだ、と思ったのです。
「さいもおねえちゃまたちみたいにしっかりするでしゅ!メソメソしなくなるでしゅ」
「そうか。彩ちゃんは、自分がまだ赤ちゃんだって思うたんやな。それで早くお姉ちゃんたちみたいにしっかりすればメソメソしなくなるって思たんか…」
「はいでしゅ。さいはベビしゃんのおねえちゃまでしゅ!メソメソはダメでしゅ」
「彩浜…寂しい思いをさせて悪かったね。子どもに寂しい思いをさせるなんて父さん失格や。でもな、彩浜…お姉さんになったからって泣いちゃダメってことはないんやで。寂しいときは寂しいって父さんやお母さん、お姉ちゃまたちに言ってええんやぞ」
彩浜は永明の言葉をじっと聞いています。
「昨夜はお母さんがおらへん初めての夜やったもんな。…寂しかったね」
そう静かに永明が言いました。
それを聞いた彩浜は、寂しさでぴんと張り詰めていた気持ちが切れて、そして…
「あぁーーーん!あぁーーーん!」
彩浜は大粒の涙をこぼして、大きな声で泣き出してしまいました。
「あぁ、よしよし。ずっと我慢してたんやな。気付いてやれなくて悪かったね。もう我慢することあらへんよ…。今日は父さん、ちゃんと彩浜が寝るまで起きとるからね」
永明は彩浜をぎゅっと抱きしめて、良浜がするように背中を優しくぽんぽんと叩きました。
「お父さん!桃浜と考えたんだけど、今夜から彩ちゃん、私たちのお部屋で寝るのはどうかなって」
「うん、そうしたら、寂しくないし、絵本も読んであげられるし」
と、桜浜と桃浜は言いました。
「そうか!それなら寂しないなぁ。どや?彩ちゃんはどないしたい?」
彩浜はしゃくりあげながら、しばらく考えて言いました。
「…さいは…グス…おねえちゃまたちと…ヒック…いっしょに寝るでしゅ…」
「じゃあ決まりね!彩ちゃん、今日からもうぜったい寂しいなんて思わせないから安心してね!」
「そうそう!お母さんとは違うかもしれないけれど、私たちにうんと甘えていいんだからね!」
「あー!ゆいも一緒に寝たいー!お父さん、ゆいもお姉ちゃまたちと彩ちゃんと一緒に寝てもいい?」
「ああ!もちろん!そうしたらええ!」
「わーい!やったー!ゆいはね、彩ちゃんに子守歌うたってあげるね!」
「よかったな、彩浜!これでもう寂しないなぁ」
「はいでしゅ!」
彩浜に笑顔が戻りました。
それから家族皆で、桜浜と桃浜のお部屋に布団を運び込んだり、四人で寝られるように寝室を整えました。
夜も更けて、桜浜と桃浜の可愛いお部屋に集まった四姉妹。
ふかふかのお布団の上に寝転がりながら、いつの間にやら四人で可愛い弟の名前を考え始めました。
「ゆいはねー、岸浜がいいと思うんだぁ!」
「えー!?キシヒン??」 キャッキャッ!アハハ
「さいは、さいは、正浜がいいでしゅ」
「マサヒン??アハハ それ良いかも!」クサカリマサオサンネー
「明日みんなで、お母さんに伝えにいこうか!」
ウン!ウン!イイネー!ワイワイ !アハハ !キャハハ
温かい紅茶とたくさんのお菓子を用意して、
今夜は特別に、わいわいと賑やかに四人で夜更かしをするのでした。
おしまい
かわいい浜家のお話きてたーーー
四姉妹とパパママそれぞれの性格が表れてていつもほっこりします
おとん思いでたけのこピキミサイル発射するピキちゃんだけど、家の中ではこんなふうにお姉ちゃまたちに可愛がられてるのねー
結ちゃんに負けじと正雄アピールする姿に笑いました
素敵なお話ありがとうございます
いつも姉妹やお父さんのやりとりが可愛いくてほっこりしますが今回は彩ちゃんの振舞いがいじらしくていじらしくて
末っ子坊やが加わったらどんなお姉ちゃんぶりを発揮するのか今から楽しみです
彩ちゃんのこれでふきんしゃい!は例のゴワゴワ…ではなくラウの刺繍タオルなのですね
さすが、白浜のお嬢さんはちがいますね
あら?目から涙が…ラウのタオル貸していただけるんですか?
今回も胸がキューっとなるかわいいお話ありがとうございました!
>>895
さいちゃんの小さな決心が微笑ましくて
でもやっぱり寂しかったよね涙涙
家族みんなの優しさと暖かさにぐっときました
今回も素敵なお話ありがとうございます
>>900
浜家の彩ちゃんにはいつも泣かされる…涙
永明パパも言ってるけど、お姉ちゃんになったって甘えたっていいんだからね
ゆっくりゆっくりお姉ちゃんになってね
岸浜と正浜ワロタよw
ほっこりしてたら最後に岸浜と正浜で笑ったwww
今まで1番下だった子が初めてお姉ちゃんやお兄ちゃんになる時の心境って嬉しいはずなのに寂しくなったりしちゃうものだよね