「はじめまして。ベビ浜ちゃん」
~ここは浜家の…明るい玄関ホール~
玄関ホールに永明さんとおよそゆきの服を着た彩浜が並んで立っています。
二人で、どこかにお出かけでしょうか?
「彩ちゃん、よかったね!ようやく会えるわね」と、桜浜が言うと、
「お母さんにもベビちゃんにもずっと会えなかったもんね」と、桃浜が続けました。
「ねーねー、どうして彩ちゃんだけお母さんとベビちゃんに会えなかったの?」結浜は不思議そうに尋ねました。
「それはな、産院の決まりでな、まだ彩ちゃんの年齢では赤ちゃんが生まれてしばらくは見舞いにいったらあかんのや。まあ、感染症対策でな、仕方ないんや」
「そうだったんだ…」
4ヶ月ぶりにお母さんに会うことと、初めてベビちゃんに会うことで、彩浜は緊張した面持ちで、片手におひな様をしっかりと抱き、もう片方は永明さんの腕にぎゅっとしがみついています。
それを見た桃浜は彩浜の目の高さに合わせてしゃがみ、彩浜の両頬を両手で包み込んで優しく微笑んで言いました。
「彩ちゃん、大丈夫!向こうにはお母さんがいるからね!思いっきりお母さんに甘えてくるのよ」
「そうそう!何も心配することないんだよ!私たちも後から行くからね」
「帰ってきたら、彩ちゃん遊ぼうね!」
三姉妹は彩浜を安心させようとしたのでした。
「はいでしゅ!」
彩浜はようやく安心したのか、少し顔がほころんだようにみえました。
「ほな、行ってくることにしよか」
「いってらっしゃーい!!!」
「私たちも後から行くねー!」
三姉妹に見送られながら、永明さんと彩浜は出かけていきました。
~ここは良浜とベビちゃんがすごしている綺麗な産院~
永明さんと彩浜は、良浜とベビちゃんの部屋のドアの前に着きました。
コンコン…
「らうちゃん、わしや!永明や!入ってええか?」
「はーい!どうぞー!」
ドアをガラッと開けると産院の真っ白な部屋から光が一気に差し込んできました。
彩浜はまぶしくて、慌てて永明の背後に隠れました。
すると、部屋の中から声が聞こえてきたのでした。
「彩ちゃん!いらっしゃい」
懐かしい優しい声です。
彩浜は永明さんの背後から、ぴょこんと顔を出して部屋の中の良浜をキョロキョロと探しました。
明るく大きな窓に揺れるカーテンを背に、ベッドの上でこちらに向けて両手を広げて微笑んでいる良浜を見つけました。
「彩浜。おいで」
「おかあしゃん!おかあしゃーーーん!」
「彩ちゃん!!彩ちゃん…寂しい思いをさせてごめんね」
良浜は走り寄った彩浜を両手でぎゅーっと抱きしめました。
あーん あーん
彩浜は良浜の腕の中でしばらく泣いていました。
良浜は泣いている彩浜をふんわりと優しく抱いて、背中をゆっくりぽんぽんと叩いています。
アーンアーン…ヒック…ヒック…ポンポン…
「彩ちゃん…この4ヶ月よくがんばったわね。えらかったわ」
「…グス…はいでしゅ…」
「お父さんから聞いたわよ。彩ちゃんはベビちゃんのおねえちゃまになるために、一人で寝ようとしたんですってね」
「…ヒック…はいでしゅ…」
「お母さんがおうちに帰ったら、また一緒に寝ましょうね」
「…いいでしゅか?…ヒック…」
「もちろん。彩ちゃんの好きにしていいのよ」
バブー…ふわあああん…ああーん…ああーん…
「おお!ベビちゃん、お目覚めやな」
永明さんがニコニコとベビーベッドを覗きました。
良浜は、ベッドの上で彩浜を抱いたまま、彩浜の顔を見つめて、
「彩ちゃん、ベビちゃんに会ってみる?」と聞くと、
コクン…と彩浜は頷きました。
すると、良浜の腕の中にいる彩浜を、永明さんがひょいっと抱き上げてベビーベッドのそばにある踏み台の上に、彩浜をそっと降ろしました。
「彩ちゃん、どや?初めましてやなぁ。ベビちゃんやで ガハハ」
彩浜はベッドの柵に両手を掛けて、背伸びをしてベビーベッドの中にいるベビちゃんを覗き込みました。
バブー!キャッキャッ!アブー!
ベビちゃんが彩浜の方に両手を伸ばしてパタパタさせています。
「ベビちゃん、なにしてるでしゅか?」
彩浜は不思議そうに聞きました。
「ふふふ、ベビちゃん、彩おねえちゃまと握手したいみたいね」
彩浜が良浜と永明を見ると、二人ともニコニコとうなずきました。
彩浜はドキドキしながら、ベビちゃんの小さなお手手にそっと手を添えてみました。
すると、その小さなお手手は彩浜の指をキュッと握ったのです。
彩浜は胸がキューンとなりました。
そしてお目々がキラキラと輝いて、ほっぺはほんのりピンク色になっていきました。
彩浜は嬉しくなって、ふたたび良浜と永明の顔を見ました。
「ベビちゃんが、彩浜お姉ちゃま初めましてて言うてるんやな ガハハ」
「…はじめまして…ベビちゃん…」ドキドキ
バーブー!
ふふふ ガハハ エヘヘ バブー
トントン!
「お母さーん!桜浜!入っていいー?」
「はーい!どうぞー!」
「あー!重かったー!お父さんのタキシードにお母さんと彩ちゃんとベビちゃんのドレス、ぜんぶ持ってきたわよ!」
「お母さん!メイク道具も持ってきたから、そろそろ準備して!」
「あー!ゆいもメイクしたーい!」
ワイワイ ガヤガヤ
「ふふふ 一気に賑やかになったわね」
「そやなぁ ガハハ」
「お父さん、お母さん、のんびり笑ってないで、着替えて!着替えて!」
「じゃ私は彩ちゃんのお着替え手伝うわね!」
「じゃあ私は桜浜おねえちゃまと、ベビちゃんのお着替えさせるね!」
ワイワイガヤガヤしながら、家族みんなでベビ浜ちゃんの命名セレモニーに向けておめかしです。
「オシロイパタパタ 私は大丈夫だから、桜浜、お父さんの蝶ネクタイ見てあげてくれる?」
「らうちゃん、これじゃあかんか?自信あってんけどなぁ」
「お父さん、リボンが縦結びになっちゃってるよ!やり直すね!」
「はい!彩ちゃん!できたわよ!あとはお耳におリボンつけて、カラーリップもつけようね!」
「はいでしゅ!ニコニコ」
「桜浜おねえちゃまー!お父さんのおわったら、手伝ってー!ベビちゃんのまつげのカール上手くできないのー!」
「はーい!はいはい!結ちゃん、今行くから待っててー!」
バブー
みんなでバタバタしながら、ようやくお支度ができました。
永明さんはタキシードに蝶ネクタイ、良浜、桜浜、桃浜、結浜、彩浜、ベビ浜ちゃんはドレスアップして、耳にはみんなお揃いのおリボンを付けました。
セレモニー会場の中心にベビ浜ちゃん、そしてその近くに、みんな一列に並んで椅子に座りました。
永明さん、良浜、桜浜、桃浜、結浜、彩浜…彩浜の隣にはおひな様もおリボンを付けてもらって座っています。
わくわく、そわそわ。
家族みんな、背筋を伸ばして今か今かと待っています。
さあ、セレモニーの始まりです!
バブー!
おしまい
ステキなお話っ!ありがとうございます。大家族の幸せな様子が目に浮かびます。
このお話大好き!
ピギャーチュルチュルの彩ちゃんも好きだし、ひたすらいじらしくてかわいいこっちの彩ちゃんも好き
作家さんの書き方がホント上手でいつも幸せな浜家の世界に入り込みます
素敵な家族の記念写真を想像してほっこりしました
彩ちゃん頑張ったねぇ
例のゴワゴワ貸してくださいw
ほっこりしてていいお話
私にも例のゴワゴワを貸してくださいチーングスグス
今回も大作だー!ありがとうございます!
彩ちゃんとベビちゃんの初対面シーンとかもう色々と可愛すぎて…
彩ちゃんとおひな様のコンビも大好きなので、おめかししたおひな様が一緒にセレモニーに出席していて嬉しくなりました