夜も更けて、桜浜と桃浜のお部屋には、いつものように4姉妹のふかふかのお布団を並べて、お菓子と紅茶とホットミルクを用意して、楽しくおしゃべりをしていました。
「さい、おトイレにいってくるでしゅ」
「ひとりで行ける?」
「だいじょぶでしゅ」
彩浜はそう言って、お部屋から廊下にでました。
すると、目の前の永明さんと良浜と楓浜の寝室から出てきた良浜とはち合わせになったのです。
「あら、彩ちゃん、おトイレ行くの?」
「はいでしゅ」
「一緒に行こうか?」
「だいじょぶでしゅ」
「そうだ、お母さんもおトイレ行くんだったわ。やっぱり一緒にいきましょうね」
それからしばらくして2人はトイレが済むと、また廊下をゆっくり歩きました。
2人の寝室の前に着くと、良浜が立ち止まって言いました。
「彩ちゃん、ちょっとリビングにいって、何か飲まない?お母さん、のどが乾いちゃって」
「はいでしゅ、さいも何かのみたいでしゅ ニコニコ」
「よかった。じゃ行きましょ」
2人はリビングに入ると、良浜はキッチンで牛乳を温めはじめ、その間に紅茶を淹れました。
温まったミルクと紅茶をトレイに乗せて、こたつまで運ぶと、彩浜の前にホットミルク入りの彩浜用の小さなマグカップを置きました。
「はい、どうぞ。少し熱いかもしれないからフーフーして飲んでね」
「はいでしゅ ニコッ」
彩浜はそう答えると、両方のおててでマグカップを包むように持つと、フーフーと真剣な表情でミルクに息を吹きかけました。
良浜は彩浜の一生懸命な姿が可愛らしくて、ふふふと笑ったのでした。
良浜は紅茶をひと口飲むと、ふぅと息を吐き、それから彩浜に言いました。
「彩ちゃん、ぎゅーってしていい?」
彩浜は小さなマグカップからお口を離すと、キョトンとしたお顔を良浜に向けました。
「あらあら、うふふ。お口拭きましょうね」
彩浜のお口の周りにミルクがついていたので、良浜は優しく拭いてあげました。
それから良浜は、彩浜を両手で包み込むと、ぎゅーっと抱きしめました。
彩浜は何だかよく状況が分からなくて、ジッとしていました。
しばらくそのままでいると、彩浜の頭の上が何かで濡れた気がしたのです。
彩浜は何だろう…そう思っていると、良浜がグスッと鼻をすすったのでした。
彩浜は、ようやく良浜が泣いていることに気がついたのでした。
「おかあしゃん…」
彩浜がそうつぶやくと、良浜は彩浜を抱きしめたまま、またぎゅーっと強く抱きしめました。
「…おかあしゃん…すこしいたいでしゅ…」
「あらやだ!ごめんね、彩ちゃん…」
良浜は体を離すと、彩浜の頭や背中を撫でました。
それから、彩浜に気づかれないように、サッと涙を拭いたのでした。
「おかあしゃん…?」
彩浜が心配そうなお顔で良浜を見つめました。
「今日の映画、タコのお化けの船長さんだったかしら?あれが怖くて思い出しちゃったの。やあね、お母さんったら、大人なのにねぇ。おかしいわね」
それでも彩浜が心配そうにしていました。
「そうね…嘘はいけないわね。お母さんね、桜浜と桃浜が中国へ留学することは、2人の将来のためだからって、寂しさはあるけれど我慢してきたの。今までも、そうやって子どもたちを送り出してきたんだから…。
…でも…まさか永明さん…お父さんまで中国へ行ってしまうなんて…いつかはと話し合ったことはあったけれど、まさかこんなに早く…急に…ね。みんなの前だから、ずっと我慢していたんだけどね…さっき目が覚めたら、急に寂しくなってしまってね…」
「おかあしゃん…」
彩浜まで泣き出しそうな表情になってしまったのを見て、
「大丈夫よ…彩ちゃん、お母さんに付き合ってくれてありがとうね。おかげで元気になったわ」
そう言いながら、良浜はやわらかな笑顔で彩浜のふわふわの頭を優しく撫でたのでした。
「あー!彩ちゃん、ここにいたのー?心配したんだからー!」
「よかったー!おトイレからなかなか帰ってこないから、みんなで心配しておうちの中探してたのよ」
桜浜と桃浜、結浜がリビングに入ってきました。
「ごめんなさいでしゅ」
「みんな、彩ちゃんのこと探していたのね。ごめんね、お母さんが彩ちゃんにお茶に付き合ってもらってたの」
「そうだったんだ、よかった、どこへ行っちゃったのかって心配してたの」
「彩ちゃん、よかったわね!お母さんと真夜中のお茶会してたのね」
「あー!わたしも夜中のお茶会したい!お母さん、いいでしょ?」
「そうねぇ、明日はお休みだから、良いわよ!みんなで夜中のお茶会しましょ」
「あー、らうちゃん、ここにおったんか。なかなか部屋に戻ってけえへんから心配しとったんや」
「お父さんだ!」
「わー!お父さんも起きてきたー!」
永明さんは眠っている楓浜を抱っこしてリビングに入ってきました。
良浜は永明さんに抱っこされている楓浜に手をのばすと、永明さんは良浜に楓浜をそっと渡しました。
「ごめんなさいね、夜中に目が覚めてしまって、ちょうど彩ちゃんとお手洗いに行ったあとに、お茶しようって私が誘ったの。いつの間にかこんな時間になってしまってたのね」
「それならよかった。みんなも集まったんやな」
「これからね、夜中のお茶会しようって話したの!」
「おー、そらええなぁ。わしも一杯やろかな」
「うん!お父さんも一緒にやろう、やろう!」
「じゃあ、お茶とお酒とおつまみ用意してきましょうね」
良浜は永明さんがこたつのそばに持ってきてくれたお昼寝ふとんに楓浜をそっと寝かしつけ、それから立ち上がって言いました。
「お母さん、私たちが用意するから座ってて」
「ありがとう。……でも、今夜はお母さんが用意してもいい?お母さんがみんなにしてあげたいの…」
桜浜がそう言うと、いつもは「ありがとう、お願いね」とうれしそうに返事をする良浜が、そう答えたのでした。
この7頭の家族で過ごすあとわずかな時間、妻として母として家族のお世話をしたい…そんな良浜の気持ちが一瞬にしてみんなに伝わり、リビングは、しん…と静まったのでした。
ベビールームです。一旦ここまでにします
いつエラーが出て書き込めなくなるかドキドキヒヤヒヤしています
作品読んでくださり、またコメントまでしていただきとてもありがたいです
おちりにきさんの作品>>355楽しく読ませていただきました、ありがとうございます♪
鬼ヶ島に行っている間の作家さんたちの作品やコラなどなどいつも楽しませていただいています
またわいわいさんにもお世話になりますので、よろしくお願いします
※べビルさん、素敵なお話とお気遣いありがとうございます。
(他の作者さんの作品、住民さんのレスもゴワゴワ片手に編集中です)
>>378
寂しいけれど、やっぱり心が暖まるお話、ありがとうございます。
離れることが寂しいのは、家族の絆が強いから…ですよね。
ラウちゃんと小さな彩ちゃんの深夜のお茶会。ラウちゃんの涙とホットミルクの香り。情景が見えるようです。
「お母さんがみんなにしてあげたいの」というラウちゃんの言葉が胸に染みました。
規制が厳しいですが、書き込みできてても、書いてた板とは別の板にいったん書き込みしたら規制がかかるケースが多いようです。
人によって「ここに書き込みしたらNG」という板が違うようでややこしいですが、
しばらくは書き込む板をひとつにしておいた方が無難かもです。
>>378
当初ご予定されていたお昼頃に投稿がなかったので、もしや再び鬼ヶ島に…?と勝手にドキドキしておりました
戻ってこられて何よりです
ラウちゃん大丈夫かな…
なかなか心の整理なんかつかないですよね
明るい娘たちのおかげでなんとか元気を取り戻してくれるといいのですが…
度々すみません、ベビールームです
読んでいただき、またコメントまで本当にありがとうございます
>>382
そうなんですね、別の板に書き込むと規制がかかる場合があるんですね
勉強になりました!ありがとうございます
>>406
心配してくださりありがとうございます
違うWi-Fiになったら書き込めないようなので、この作品をラストまで無事に投稿できたらと思ってます
よろしくお願いします