梅梅保育園 ぼくはニシチ 5
オーストラリアはとても大きかったよ
「ここがぼくのふるさとなの?」
「そうです この大きな大陸の東側がコアラの生息地と言われてます ユーカリの木も豊富にあって種類もたくさんありますが、コアラが食べられるユーカリの木は限られているそうです 他にもアカシアやティーツリーの葉や芽を食べるそうですよ」
そうなんだ 知らなかった
「あそこにユーカリの森がありますね ちょっと降りてみましょう」
そういうとシュンおじさんはバイクをゆっくりと着陸させた
たくさんのユーカリの木があった
「わあー、すごい」
どの木もおいしそうだった
「ハロー どこからきたんだい?」
急に上から声がしたからびっくりして見上げると、たくさんのコアラがいた
「ぼくニシチ 日本で生まれたけどほんとうのふるさとはオーストラリアだと言われたんだ それで来てみたの」
「そうかい 日本からきたのかい ウェルカム、ニシチ」
年取ったおばあちゃんのコアラはにっこりほほえんでくれた
「ニシチ、これ、あげるよ」
「ありがとう」
木から降りてきたコアラが葉っぱがついた枝をぼくにくれた
たべてみた ムシャムシャ
「うん、おいしいよ」
「イエース ここの葉っぱはどれもおいしいよ これもあげるよ」
「ありがとう」
もう一本枝をくれた
「これからどこに行くの?」
「ママのところに行くんだ そうだよねシュンおじさん」
「ええ、そうです」
「シュン? シュンってあのシュンかい?」
「はい、ご無沙汰しております お元気そうで何よりです」
おばあちゃんのコアラとシュンおじさんは知り合いみただった
梅梅保育園 ぼくはニシチ 6
「そうかい、今回はこの子なんだね」
おばあちゃんコアラは優しい目だけど、少し寂しそうな顔でぼくを見ていた
「はい でも向こうにはこの子のお母さんとお祖母さんがいますから」
「それはよかった 時にはどうしようもないこともあるからね」
「ええ、それは重々承知してます」
大人の話はよくわからなかったけど、シュンおじさんがママのところに連れて行ってくれることはわかったんだ
「ニシチ、今夜はいい天気だから星がきれいなところに連れて行ってもらいなさい 流れ星もたくさん見られるわよ」
おばあちゃんコアラは言った
「うん」
「ニシチ、気を付けていくんだよ」
おばあちゃんコアラはそう言うとぼくをギュッと抱きしめた
「うん ありがとう」
「では出発しましょう 星が見えるとっておきの場所がありますよ」
「わあい、楽しみ」
「ニシチ― 気を付けてね」
「うん」
ぼくはおみやげにもらったユーカリの枝を抱っこしてサイドカーに乗った
ドドドドドドド
バイクはゆっくりと空に向かっていった
梅梅保育園 ぼくはニシチ 7
バイクは大きな大きなオーストラリア大陸の真ん中に向かってるみたいだった
夕方になっていて、下をみたら真っ赤な砂漠が見えてきた
「わあ、真っ赤だ」
「はい、このあたりは砂漠で赤い砂が特徴なんです」
前を見ると砂漠の真ん中に大きな山があった その山も真っ赤だった
「あの大きな山も真っ赤だよ」
「あれはウルル(エアーズロック)という山です 地球のヘソとも言われてます 山だけど実は一枚の大きな岩だそうですよ」
「へえ、おへそなんだ」
「ではこの辺で降りて晩御飯にしましょう」
「うん」
ウルルがよく見える場所に着陸すると、ぼくはレジャーシートとお弁当が入ったバスケットを持って行った
たき火をおこしているシュンの近くにレジャーシートを敷いた
「夜は冷えるから毛布も持ってくるといいですよ」
「うん」
サイドカーにもどって一番小さな妖精さんからもらった毛布を持ってきた
「ではごはんにしましょう いただきます」
「いただきます」
パチパチというたき火の音を聞きながらぼくとシュンおじさんはごはんを食べた
とてもおいしかったよ
ごはんを食べ終わった頃には真っ暗になっていた
シュンおじさんは言ったんだ
「ニシチくん、寝そべって空をごらんなさい」
「うん、よいしょっと」
するとそこには空いっぱいに星が見えたんだ
「わあ、すごい あ、流れ星も見える」
梅梅保育園 ぼくはニシチ 8
そこはウルルという山以外は何もなくて、遠くに地平線が見えていた
それはそれはとてもきれいな夜空だったんだ
手をのばせばつかめそうなくらい、近くにたくさんの星が見えたんだ
「そうだ、ママはどこにいるの?」
「あの星のどこかにいらっしゃますよ」
「え?」
もしかして
「ママは…お星さまになったの?」
「ええ、そうです」
それはどういうことなのか、ぼくはわかったんだ
「じゃあ、じゃあ、ママは天国にいっちゃったの? もう会えないの?」
ある日突然いなくなったのはそういうことだったんだ
そう思うとぼくは急に悲しくなってきた
「ウッ…ウッ…グスン」
「さあ、涙を拭いて」
シュンおじさんはポケットからハンカチを出すと、優しくぼくの顔を拭いてくれた
「ところでニシチくん、体はまだ痛いですか?」
「体?痛くないよ グスン」
「それは、痛みから解放されてお母さんに会いに行く準備ができたということなんですよ」
そうだ ずっと痛かった体がいつの間にか痛くなくなっていたんだ
痛くなくなっていたから、森の中も歩けるようになっていたんだ
「あっ じゃあぼくもあの星の中に行くの?」
「そうです あともう少し、私の言うことをきいてくださいね」
「うん」
「今夜は星を見ながら寝ましょう ここは砂漠なので日中はとても暑くなります 明日は朝早く出発しますよ」
「うん おやすみなさい」
「おやすみなさい」
ぼくはたくさんの星を見ながら寝たんだ
梅梅保育園 ぼくはニシチ 9
次の日の朝、ぼくは朝早く目がさめた
「おはようございます お目覚めですね 準備ができたらおっしゃってください 出発しますよ」
シュンおじさんはもう起きていていつでも出発できるように準備していた
「おはようシュンおじさん ちょっとまってて」
「あわてなくていいですよ」
「うん」
朝ごはんをすませるとぼくはヘルメットをかぶってサイドカーに乗った
「ではお母さんのところに行きますよ 一気に上昇するからしっかり掴まってるんですよ」
「うん」
もうすぐママに会えるんだ ぼくはワクワクしてきた
ママ、待っててね
ママ…
あっ
そうだ パパはどうしてるんだろう
パパはぼくが具合が悪くなってから病気にきくユーカリをさがしてくると言って、家を出て行った
それきりパパにはまだ会ってない
パパはどうしてるんだろう
「シュンおじさんまって パパに会いたいの」
「そうですね お父さんのところに行きましょう では日本に戻りますよ」
「うん」
バイクはぐるっと回ると日本に向かっていった
作家さん、ニシチのお話を本当にありがとうございます
こうしてあちこちを周ったりして時間をかけながらニーナママとドリーおばあちゃんのところへ行くのかな
お話が終わってほしくない…なんて思ってしまいました
読みながら目から汗が。。。
続きも楽しみにしてます
梅梅保育園 ぼくはニシチ 10
バイクはオーストラリアを離れてまた大きな海をわたって日本にもどってきた
「では、お父さんの所に行きますよ いいですね?」
「うん」
ぼくの家を出て少し行ったところに桜並木があってトンネルのようになっている
そこを通りぬけてまた少し行くとユーカリの森があって、森の入り口についたんだ
「私はここで待ってますからお父さんに会ってらっしゃい」
とシュンおじさんはいった
「うん、行ってくるね」
ぼくは森の中に入った パパはどこなんだろう
どんどん進んでいった 奥のほうにパパがいた 背中を向けていたけど元気がなさそうだった
「パパ、パパ」
ぼくは話しかけてみた
「…ニシチかい? いや、そんなはずは…」
「ぼくだよ、パパ」
「ニシチ」
ふりかえったパパはぼくを抱きしめた
「ニシチ、幻でもきてくれたんだね ごめんな パパはニシチの病気を治してあげることができなかった」
そういうとパパは大粒の涙をぽろぽろ流していた
「パパ、泣かないで パパのせいじゃないよ どうしようもないこともあるってオーストラリアのコアラのおばあちゃんが言ってたんだ」
「オーストラリア? オーストラリアに行ったのかい?」
「うん、シュンおじさんのカッコいいバイクに乗せてもらっていってきたんだ 真っ赤な砂漠で夜は星をみながら寝たんだ てをのばせばとどきそうだったよ」
「そうか、そうだったのか」
パパはうんうんとうなづいた
「あのね、ぼくはお星さまになったママのところに行くんだって でも、パパのことが心配だからきたんだ」
「ニシチ…」
「パパ、ぼくまたパパのところに来るからそれまで待ってて 約束だよ」
「あ、ああ」
パパは信じてないみたいだった どうすれば信じてもらえるんだろう
梅梅保育園 ぼくはニシチ 11
そうだ!
ぼくはリュックの中からオーストラリアでもらったユーカリの枝と、妖精さんからもらったよくわからない鉄仮面というのを出してパパにわたした
「パパ、これ、オーストラリアでもらったユーカリの枝と、よくわからない鉄仮面とかいうお面なんだけどこれをあげる だから泣かないで」
「ああ、ありがとう クンクン ユーカリは懐かしい匂いがするね」
よく見たら鉄仮面は変な顔をしてる
「パパ、この鉄仮面変な顔をしてるよ」
「どれどれ ほんとだ ニシチがにらめっこしてるような顔してるぞフフフ」
「ぼく、こんな変な顔じゃないよ」
「いや、よく似てるよ 見れば見るほど変な顔だなアハハハハ」
パパが笑ってくれた ぼくはそれだけでうれしかった
「パパ、ぼくはぜったい、またパパのところにくるからね だから待ってて」
「もちろんだよ 男の約束だぞ」
「うんっ」
ぼくとパパは約束のグータッチをしたんだ
「それから、ママに会ったら愛してると伝えておいてくれるかい?」
「うん パパ、ぼくのことも愛してる?」
「当たり前じゃないか」
パパはさっきよりも強くぎゅっとぼくを抱きしめた
「ニシチ、パパは大丈夫だよ 毎日空を見てママとニシチに話しかけるよ」
「うん ぼくもパパに話しかけるよ」
「ああ、待ってるよ クンクン ニシチは桜の匂いがするね」
「うん、さっき桜のトンネルを通ってきたの」
「ああ、あそこか もうそんな時期になったのか」
パパはいつまでもぼくのことを抱きしめていた
ぼくは気持ちよくなってそのまま寝たんだ
梅梅保育園 ぼくはニシチ 12
「ニシチ、ニシチ、起きなさい」
どこかで聞いたことのある声…ママの声だ
「ママ?」
目をあけるとそこにはママとおばあちゃんがいた
「ニシチ、よく来てくれたねぇ」
「あれ?ぼく、パパがぎゅっってして、でも森の入り口ではシュンおじさんがまっていて、えーと、えーと」
「シュンさんが、ニシチを起こさないようにそっと連れてきてくれたのよ 旅の途中とてもいい子でいましたっておっしゃってくれたわ」
「シュンおじさんは?」
「次のお仕事があるからと帰られたの ちゃんとお礼は言っておいたわよ」
「うん パパは?」
「パパは大丈夫よ ニシチのおみやげのおかげで元気になったわよ」
パパはちゃんとおみやげを受け取ってくれてたんだ
「さあ、着替えてちょうだい 出かけるわよ」
「どこに行くの?」
「梅梅保育園よ 梅梅園長先生にご挨拶しに行くのよ」
「お友達も待ってるわよ」
「うん」
ぼくはママが選んでくれた服に着替えておばあちゃんと3人で梅梅保育園にむかった
「ニシチくーん、こっちだよ」
保育園の入り口には上野のお兄ちゃんがいたよ
おわり
大作ありがとうございます
すっかりシュンのファンになってしまいましたw
泣かせやがって
ばか野郎
例のゴワゴワかひてくだしゃい
>>574
プミしゃんの鉄仮面のおかげでニシチくんとパパが笑顔でお別れできた。・(つд`。)・。
作家さん、今回も素晴らしい大作をありがとう!
本当にすごいなぁ
>>574
超大作お疲れ様でした
優しいジェントルマンのシュンおじさんのおかげでママに逢えて良かったね
志村園長も遊びに来てるかな
ニシチ、ママとおばあちゃんに会えてよかった
このお話で悲しかった気持ちが癒されました
妖精さんたち、シュン、お兄ちゃん、ゴワゴワ鉄仮面まで大活躍でしたね
素晴らしいお話ありがとうございます
コタロウパパのシーンは例のゴワゴワがぐっしょりに
ニシチくんよかったね
ニシチくん、お空に行ってから一年たったのですね
思いついたままに書いたニシチくんの話でしたが、今は梅梅保育園で上野のお兄ちゃんやじいじ達と楽しく過ごしてることでしょう
今でも時々読まれてるようで嬉しいです
わいわいさん、皆さん、ありがとうございます
「ぼくはニシチ」作者より
ぼくニシチの作者さん
ニシチの命日でしたね
あの時は知らせを聞いてショックでショックで
どなたかニシチのお話を書いてくれませんかと言ったように覚えています
ニシチのお話はとても壮大で素敵なお話ですね
今でも思い返しては時々読ませていただいています
作家さん書いてくださり本当にありがとうございました
そしてニシチのことをこうして思い出して書き込んでくださり感謝いたします
ニシチ君を笑顔で見送ってあげようと思って書きました
長くなってしまってすみません
ニシチ君は梅梅保育園で楽しく過ごしながら、空の上から見守ってくれてることでしょう