K.M.Revolution ~クマたちのIT革命~ 1話
今日は3月20日、休園日です。シャンシャンが出発して早いもので1か月が過ぎました。
毎日スマートフォンを駆使して、シャンシャンの情報を探しているキョウコさんですが…。
「ポンくんポロくーん!どちらか来てくれなーい?」
「どしたのキョウコママ、朝っぱらから」
「何か力仕事?棚に手が届かないとか?」
「このパソコンがね、電源は入ってるんだけどねえ」
キョウコさんの指差す方を見ると、ちゃぶ台には不釣り合いな筐体が鎮座しています。
その横に、これまた奥行きのあるモニター。猫が喜んで乗る懐かしのブラウン管です。
「うっわ、こんなでかいパソコン今時ないぞ」
「でもほぼ新品よ?ほとんど使ってないもの」
「それで?このでかいパソコンがどうしたの」
「ガーガー鳴るから電源は入ってるはずなの。でも真っ暗でしょ?」
ポンくんがモニターの裏側へと回り、電源ケーブルをたどって確認を始めました。
ポロくんはモニターとパソコン本体の接続を確認、こちらは問題ないようですが。
「あれ、LANケーブル刺さってる。ママこれでネットやってんの?」
「パソコンでは何年ぶりかにね。いつもはスマートフォンだけなのよ」
「ふうん…?」
一瞬、ポロくんの眉間に深いシワが寄りました。
「やっぱモニターの電源が抜けてるわ、プラグ突っ込むぞー」
「おう」
ぶんっと低い音がして、ぼかしがじわりと解けるように画面が表示されました。
>>464
K.M.Revolution ~クマたちのIT革命~ 2話
「あ、やっぱ駄目だこれ」
ポロくんがパソコン本体からLANケーブルを抜いて、大きく首を振りました。
「あらやだ、もしかして壊れてるの?」
「いや、壊れちゃいないとは思うけど」
ポロくんは画面の左下のボタンを指さして話を続けます。
「これな。俺も現物は初めて見るんだけど、これXP以前のOSだよ」
「なんかすっげーな、わざわざご丁寧にスタートって書いてあるのか」
ポンくんはマウスを動かし、中身のボールがコロコロする感触を楽しんでいます。
「ママ、このパソコンで最後にネットしたのはいつ頃?」
「娘のマチが産まれる前だわね、妊娠してからは電源を入れる暇もなかったわ」
「アズマパパが使ってたりとかは?」
「ないはずよ。あの人、目が悪くなるからってテレビも滅多に観なかったもの」
ポンくんが動作確認をしている間、ポロくんがセキュリティについて状況説明します。
壊れていなくても、古いパソコンをインターネットに接するのは危険だということを。
しょんぼりしてしまったキョウコさんに、ポンくんとポロくんが優しく声をかけます。
「大丈夫だよママ、俺たちが環境を整えてあげるからさ」
「パソコンで何をしたかったの?まずそこから教えてよ」
「いつかシャンちゃんのライブ配信があるだろうって、噂を聞いてねえ…」
それだけ聞き出せば充分です。ポンくんとポロくんは同時に立ち上がって言いました。
「「俺たちに任せとけ!」」
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K.M.Revolution ~クマたちのIT革命~ 3話
ポンくんとポロくんは朝ご飯も食べずに、近所で最も大きな電器店へやってきました。
正面からの入店は固く禁じられているため、秘密の裏口からこっそり入っていきます。
警備員のおじさんがポンくんとポロくんに気づいて、店内放送のボタンを押しました。
『上野からお越しのクマダさま。至急、903番へご連絡くださいませ』
この店内放送で、エゾフタゴの担当の販売員さんが警備室へ駆けつけてくれるのです。
「少しお待ちくださいね」と、警備員さんがお茶と特売のチラシを出してくれました。
「食いもんは載ってないな」
「電器屋のチラシだからな」
ふたりがチラシをチェックしていると、エゾフタゴ担当の販売員さんが駆け込んできました。
全力疾走してきたのでしょう。彼の額には玉のような汗がいっぱいです。朝から気の毒です。
「ポンさんポロさん!ご来店前は連絡くださいって毎回お願いしてるじゃないですか!」
「それは俺たちが悪かった。急いでいて申し訳ない」
「朝メシ抜きで腹が減ってるから、手短に頼みたい」
「ええっ!まさか空腹でいらっしゃったんですか!」
販売員さんの顔から一気に血の気が引き、額の汗がだぱだぱと一斉に滴り落ちました。
「まず、ノートパソコンが欲しい。年寄りが使うからディスプレイは大きめで高画質のやつ」
「メインの用途は動画視聴なんだ。Zoomなんかも使うだろうからカメラも高性能だといいな」
「ああそうだ、マウスなんかの周辺機器も一新しなきゃいけないんだっけ」
「てなわけで見繕ってくれないかな。軽トラで来てるから全て持ち帰りで」
「わ、分かりました!在庫を見に行ってきますので待っててくださいー!」
販売員さんは、今度は売り場へと駆け出しました。本当に朝から気の毒です。
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K.M.Revolution ~クマたちのIT革命~ 4話
とても有能な販売員さんのお陰で、とても良い買いものをしたポンくんとポロくん。
そこそこお高めの金額になりましたが、エゾフタゴはいつもニコニコ現金払いです。
「そう言えばリー兄さんのリボ地獄って終わったの?」
「その話しばらく聞かないよな、どうなったんだろか」
「ワイワイでネタにされてたのめっちゃ面白かったわ」
世間話をしながら軽トラを走らせ、寄り道せずにキョウコさんのお家へ帰りました。
キョウコさんのお家の窓からは、お魚を焼いているけむりと匂いが漂っていました。
「キョウコママー!ただいまー」
「お帰り!あなたたち朝ご飯まだよね?準備してるから待っててちょうだい」
炊きたてご飯に豆腐のお味噌汁、北海道から届いた本物のししゃもという献立です。
ポンくんとポロくんは手を洗って、食器棚からお茶碗などを出してお手伝いします。
「キョウコママ、俺たちは朝メシ食ったらセッティングするからさ」
「その間に花見にでも行ってきなよ、平日だから空いてるはずだよ」
「いいのかねえ頼りっぱなしで、私に手伝えることはないかしら?」
「大した作業じゃないから大丈夫だよ」
「そうそう、朝メシ前ってやつだから」
「とは言え朝メシ後に取り掛かるんだけど」
「ふふふ、じゃあお言葉に甘えようかしら」
エゾフタゴの頼もしさと心づかいに、キョウコさんはおかずを一品追加しました。
昨日の残りもののレンチンですが、おでんの大根とちくわぶです。しみしみです。
ニコニコ現金払いw
優しい兄弟のおかげで、キョウコさん新しいパソコンになりそうで良かった
続きも楽しみにしてます
>>470
光回線!
気のいいエゾフタゴのやりとりが大好きです
「本当に朝から気の毒です」がじわじわ来てますw
梨男さんお話ありがとうございます!
エゾフタゴは優しいなぁ
でもエゾフタゴがお腹空かせてたら担当の販売員さん青ざめちゃうよねw
続きを楽しみに待ってます♪
エゾフタゴとキョウコさんのやりとり大好き
大きい身体で細かい接続の作業するところ想像したら微笑ましくなりました
みんなシャンちゃんのライブ待ちですね
続きも楽しみにしてます
>>467
>>「ワイワイでネタにされてたのめっちゃ面白かったわ」
ポンポロ兄弟ワイワイスレ見てるんだ!と思って嬉しくなりましたw
キョウコさん、シャンちゃんのライブ配信見るためにパソコン環境整えたかったんだね
梨男さん、続きも楽しみにしております
※見出し画像にお借りしました。ありがとうございます🍵
シャンシャンは登場しませんが、気分転換にお読みいただけたら幸いです
行数の関係で変化する可能性がありますが、7話くらいで終わる予定です