パンダの日記念講演会「ジャイアントパンダの未来をつなぐ」
飼育員さんお二人のお話
(要約:ジェミーさん👩)
講演1:中国パンダ基地視察報告 より良いパンダ飼育を目指して(高岡英正 職員) [09:34]
上野動物園の飼育員である高岡さんが、中国のパンダ基地(雅安、臥龍、都江堰、成都)を視察した際の報告です。
視察の目的 [12:18]
- 中国の進んだ飼育技術(特に繁殖)を学ぶこと [12:58]。
- 上野動物園から中国へ帰ったパンダたち(シャンシャン、リーリー、シンシン)の様子を見ること [13:14]。
- 今後のパンダの保全に向けて、日中間の連携を強化すること [13:40]。
中国の各基地の近況
中国から学んだことと上野動物園での実践 [19:04]
高岡さんは「どちらが良い悪いではなく、違いを知ることが重要」とした上で、主に3つの違いについて報告されています。
1. 食事:腸閉塞の「予防」 [19:39]
- 中国:竹の量を一定に制限し、竹以外の団子やニンジンなどで栄養を調整することで、竹の食べ過ぎによる腸閉塞を「予防」する考え方を重視しています [23:10]。
- 上野:竹の種類が限られるため、潤沢に与える方針でした [22:23]。
- 改善:中国での学びに倣い、上野でも竹のミキ(詰まりやすい部分)を食べる時期には、腸の潤滑を助ける油や、ニンジン(以前の5倍量!)などを増やし、腸の健康をサポートする取り組みを既に実施しているそうです [24:17]。
2. 環境:「計画的な」騒音への慣らし [20:00]
- 中国:竹を割る音や工事音などをあえて聞かせ、様々な刺激に「計画的」に慣れさせていく方針です [25:22]。中国側からは「外国から帰ってくるパンダは臆病な個体が多い」という指摘があったそうです [25:42]。
- 上野:これまでは繁殖を優先し、静かな環境(静穏)を重視してきました [20:25]。
- 今後:上野でも、ラジオや工事の音などを少しずつ聞かせ、様々な刺激に慣れさせる「計画的順化」を将来的に取り入れていく必要があると感じたとのことです [26:42]。
3. 成長(母子分離):「不安にさせない」ステップ [20:48]
- 中国:母子分離の際は、いきなり引き離すのではなく、格子戸越しにお互いの姿を見せるところから始め、少しずつ慣らしていくなど、「不安にさせない」ことを重視していました [28:33]。
- 上野:これまでは、お互いの気配がすると逆に寂しがるかもしれないと考え、離す時間を段階的に延ばす方法(シャンシャンや双子の時)をとっていました [27:31]。
- 今後:上野には現在、姿が見える格子戸がないため [29:34]、今後はそうした設備も導入し、よりパンダに負荷のかからない分離方法を検討していく必要があるとのことです [29:23]。
まとめ
高岡さんは、パンダはいずれ中国に帰る存在であるため [30:22]、上野動物園は「里親」のような立場として [30:37]、中国の環境や飼育方法を積極的に取り入れ、パンダたちが将来中国に帰った時にスムーズに馴染めるように飼育環境を整えていくことが重要だと学んだ、と締めくくっています [30:51]。
講演3:シャオシャオとレイレイの成長記録(石神雄大 職員) [01:52:07]
続いて、双子パンダのシャオシャオとレイレイの飼育を担当した石神さんが、誕生から現在までの成長を振り返る講演です。
誕生〜3頭同居まで
- 誕生:2021年6月23日、上野動物園初の双子として誕生 [01:54:22]。母親のシンシンは2頭同時に抱くことが難しかったため [01:54:33]、1頭は保育器で育て、交互に母親の元へ戻す「ツインスワッピング法」が約3ヶ月間とられました [01:55:08]。
- 識別:見分けるため、シャオシャオの背中には動物用の緑色のマーカーが塗られました(これは獣医さんが塗ったそうです)[01:57:00]。
- 成長:30日齢ごろにパンダらしい白黒模様になり [01:58:39]、90日齢で歯が生え始め [01:59:05]、120日齢ごろには上手に歩けるようになりました [01:59:23]。
- 3頭同居:歩行が安定し、自ら母親に近づけるようになったため、生後約140日(10月23日)からシンシン・シャオシャオ・レイレイの3頭での同居が始まりました [01:59:33]。同居直後、シンシンは子どもたちより飼育員からの餌に夢中だったそうで、スタッフの緊張がほぐれたというエピソードも紹介されました [02:00:23]。
初めての体験
- 初めての雪:2022年1月、初めて雪を体験 [02:01:38]。しかし2頭とも雪を怖がり(冷たかったようです)、すぐに部屋の扉の前に戻りたがったそうです [02:02:39][02:02:58]。
- 初めての公開:2022年1月12日に3日間限定で特別公開され、3月25日から一般公開が再開されました [02:03:50]。
1歳〜2歳(母子分離)
- 食事:生後11ヶ月ごろにリンゴを [02:05:58]、1歳過ぎ(レイレイ399日齢、シャオシャオ458日齢)に竹を本格的に食べ始めました [02:06:26]。
- 母子分離:1歳半を過ぎ、永久歯が生えそろい、シンシンが授乳を避けるようになったため、2023年3月10日(1歳7ヶ月)から段階的な母子分離が開始されました [02:07:04]。
- 分離中は母親(シンシン)を探す様子もありましたが、双子の2頭で寄り添うことで落ち着いていったそうです [02:09:05]。3月19日に完全に分離し、新しいD放飼場での2頭の生活がスタートしました [02:09:26]。
2歳〜4歳(双子分離と成長)
- トレーニング:2歳から健康管理のためのハズバンダリートレーニング(血圧測定、採血など)を開始 [02:11:13]。
- シャオシャオ:活発で警戒心が少ないが、集中力が続きにくいタイプ [02:12:16]。
- レイレイ:慎重で落ち着いており、一度覚えると安定しているタイプ。シャオシャオが「勢い」ならレイレイは「考えて動く」タイプと分析されています [02:12:34]。
- 双子分離:体が大きくなるにつれ、じゃれ合いが激しくなり怪我の危険が出たため、3歳を迎える前に2頭を別々に飼育することが決断されました [02:13:31]。飼育員さんにとっても辛い決断だったと語られています [02:13:50]。
- シャオシャオの移動:レイレイは元の放飼場に残り、シャオシャオはリーリーが使っていた一番広いC放飼場へ移動しました [02:14:44]。移動後、シャオシャオは新しく入れるようになった場所の松の木に体をこすりつける行動(マーキング)がよく見られたそうです [02:15:55]。
- 現在の成長:2頭とも体重は100kg近くまで成長しましたが、まだ「亜成獣(大人の手前)」の段階です [02:17:20]。今後はレイレイの発情や、シャオシャオの逆立ち排尿(オスのマーキング行動)といった大人の兆候が見られるだろうとのことです [02:17:46][02:18:06]。
飼育の課題と改善
- 課題:シャンシャンと同様に、シャオシャオとレイレイも竹の「選り好み」が強く、好みの竹でないと歩き回る(ストレスのサイン)傾向がありました [02:19:15]。
- 改善の取り組み:
- 竹の品質向上:飼育員が竹の伐採地に出向き、パンダが好む竹の条件を直接伝えたり、新品種(四方竹など)を導入したりしています [02:20:55][02:22:05]。
- 環境エンリッチメント:餌の入ったフィーダー(おもちゃ)や消防ホースのハンモックなどを導入し、行動のバリエーションを増やす工夫をしています [02:22:38]。
石神さんは最後に、シャンシャンの経験が双子の飼育に大いに役立ち、双子ならではの経験(ツインスワッピング法など)が上野動物園の飼育技術を向上させたと締めくくりました [02:25:47]。
動画概要
はじめに — 5:53
講演1「中国パンダ基地視察報告 ~より良いパンダ飼育を目指して~」 — 9:32
講演2「3頭の暮らしの今」 — 31:50
対談「中国パンダ談義」 — 1:16:30
講演3「シャオシャオとレイレイの成長記録」 — 1:52:07
質疑応答 — 2:33:15
閉会挨拶 — 2:47:10
(敬称略)
はじめに— 5:53
• 開会挨拶(副園長 金子)・趣旨説明・注意事項。
講演1:中国パンダ基地視察報告(高岡英正)— 9:32
• 研修目的(飼育技術向上・帰還個体確認・日中連携)。
• 各基地の特徴と学び。
• 食事見直し・環境慣化計画・母子分離ステップ提案。
講演2:3頭の暮らしの今(土居利光)— 31:50
• 中国各施設の概要とアクセス事情。
• シンシン・シャンシャン・リーリーの近況観察。
• 展示設計や来場者運用の所感。
対談:中国パンダ談義(土居利光 × はな) — 1:16:30
• シャンシャン再会談・現地体験のエピソード。
• 見学のコツ、文化・観光の補足。
講演3:シャオシャオとレイレイの成長記録(石神雄大)— 1:52:07
• 誕生〜ツインスワッピング〜同居の経緯。
• 食の移行(りんご・竹)/母子分離ステップ。
• ハズバンダリーと性格差・別居後の管理改善。
質疑応答 — 2:33:15
• 渡航の安全・服装アドバイス。
• 食事や団子、匂い付けアイテムの解説。
• 飼育で嬉しかったこと・大変だったこと。
閉会挨拶(鈴木 飼育展示課長)— 2:47:10
• 連携と保全研究の重要性、今後への期待。