クマの丘のリレークッキング　9話 〜10話-2022/10/12(水)

クマの丘のリレークッキング　9話

「シャオくんレイちゃん、そっちの大きな窓のところで読もっか」
「あいっ」
「ぐりとぐらのおはなしね、レイだいすきー」
「シャオもすきー」台風前の曇り空ではありますが、大きな窓からは優しい陽射しが広がっています。
絵本を開いたウタさんに、シャオシャオとレイレイはぴとっとくっつきました。
絵本を読み始めたウタさんの声に耳を澄ますのは、実は、もうふたりいました。
コロッケセットを外のリヤカーへ運んでいる、シャンシャンと小雅ちゃんです。「そう言えばシャンちゃん、まだカステラを焼いてあげてなかったね」
「ぐりとぐらのカステラ、まあるくておいしそうでしゅよねえ」
「母ちゃんの次の休みの日に作るから待っててくれる？」
「あいっ！ていうかこまさちゃん、シャンもいっしょにつくりましゅ」
「うん！一緒におっきなカステラ作ろ」
「みるくいっぱいいれてもいいでしゅか？」
「もちろん！ふわふわのぎりぎりまでミルク使おう」
「ゆびきりげんまんでしゅよ」
「うん、ゆーびきーげーん…」どすどすどすどすどすどすどすどすどすどす！

リヤカー越しにシャンシャンと小雅ちゃんが、手と手を伸ばしかけた瞬間でした。
真っ黒の大きなふたつの物体が、シャンシャンの背後を駆け抜けていきました。
その大きな物体は、そのまま玄関をばああん！と突き破る勢いで開け放ち…。

「なんかすっげーイイ匂いがするんだけどっ？」
「ああっ！シャオくんとレイちゃんがいるっ！」

皆さんご想像のとおり、それはエゾヒグマの双子のポンさんとポロさんでした。

「ちょっとあんたたち！おチビちゃんたちがびっくりするでしょ！」

右手に持ったトングをビシッと振りかざして、キョウコさんは大激怒です。
リーさんとウタさんは、咄嗟にシャオレイの前に大の字で立ちはだかります。

「えっ！ちょっ！何でそんなに怒るのさ？」
「今のはレッドカードだよ、ポンくんポロくん」
「だって旨そうな匂いしてんじゃん！」
「シャオくんとレイちゃんがいるじゃん！」
「それよ！ふたり合わせて捕食モードになってんの！」
「ええっ！？」

（明日以降へ続く）