年忘れ！がんばった大賞2021

盛り上がったカラオケ大会も終わり、プミに近づいてきたのは女性の飼育係だ。
ヘッドセットマイクを付けて、手にもマイクを持っている。
男性飼育係の二人は、給餌ならぬ給仕で忙しそうに動き回っていた。

「そろそろ一次会の締めだよ。挨拶はバッチリかな？」
「ﾌﾟﾐｰ　きんちょうしてきたでしゅ…」

「シャン子ちゃんなら大丈夫。動画も撮ってるからね」

マイクを手渡し、女性の飼育係はウインクをして立ち位置に戻っていった。
さっそくスマホで動画を撮り始めている。

「あーあーあー。マイクのテストちゅう」

マイクがキーンとハウリングを起こす。
家族で料理を食べていたピキ子は「やれやれ」と言いながら、プミの側にやってきた。

「先輩、大丈夫かいな　ﾋﾟｷｰ」
「あい。あっ！紙がないでしゅ！わたくちのカンニング竹山しゃんが…」
「ﾋﾟｷﾞｬｰ！ほんまか？ま、いけるやろアドリブで。客を沸かすんはうち得意やで」

ﾋﾟｷｷと笑い、プミと肩を組む。

「よっしゃ、こうなったらドカンと二人羽織でもやったろか」

関西人の血が騒ぎ出すピキ子であったが、空気が読める女ピキ子。
もちろん今の主役は一年先輩のプミだとわかっている。

その頃、ハプニングを察した父親リーリーは、双子を抱っこしながらハラハラしていた。
シンコは笑顔でﾊﾞｷﾑｼｬしながら見守っている。

「シンちゃん、シャンちゃんはどうしたのかな。ピキちゃんが心配して出てきてくれたよ ｵﾛｵﾛ」
「私達の子だもの。大丈夫よ ﾊﾞｷｯ　ああ見えて肝は座っているわ ﾑｼｬﾑｼｬﾓｸﾞﾓｸﾞ小さな頃から人前に出てたんだから」

「ああ、そうだね。美人なのはシンちゃんにそっくりだよ ﾃﾚﾃﾚ　この子達もね　ﾃﾞﾚﾃﾞﾚ」

リーリーは「ヨシヨシ」と言いながら、双子をあやした。

「えー、あー、皆さん。わたくし、カレーうどんとまさおを愛してやまない白浜ピキ子と申しますやでー」

ピキ子の声がマイクで広がり、会場は静かになった。

「ｺﾎﾝ。宴もたけなわではございますが、一次会はここらでお開きっちゅう事ですわ」
「あい。おひねりでしゅね、ピキしゃん」
「おひねりちゃうやろ、小遣い催促してどないすんねん」

ピキ子は真面目に焦り、プミを腕でつついた。
客たちはアハハと笑っている。

「あれ、なんかウケたで先輩」
「あいやー。笑われてましゅね」

「なんや冷静やな。えー、そういう訳で、こちら恩賜上野動物園を代表しまして、上野プミ子よりご挨拶申し上げます。聞いたってください」

ピキ子はプミを励ますように、肩をぽんぽんと叩いた。
小さい頃からコンビの二人。いつの間にか、背丈も同じくらいになっている。

「あーあーあー。わ、わたくち、プミでしゅ。ええとー・・・来年もひやくの年にしたいでしゅので、皆しゃん応援よろしくでしゅ。どこにいてもプミは頑張るやでっしゅ！」

ぺこりとお辞儀をすると、会場は拍手と声援に包まれた。
眼鏡をかけた飼育係達はそっと涙を拭い、女性の飼育係は笑顔でOKサインを出し、動画を撮り続けている。

「みんなーこっち見てー！記念撮影しますよー！」

女性の飼育係が手をふっている。
プミとピキ子は手招きで小雅を呼び、三人で肩を組んだ。

「ピキしゃん、ここはやはり…ｸﾞｯﾌ」
「変顔やないで？アイドルスマイルやで。小雅先輩もスマイルや」
「うーんちょっと苦手かも…」
「小雅しゃん、鼻から大きく息を吸って〜リラックスでしゅよ」
「ﾋﾟｷｰ！プミ先輩、鼻膨らみすぎや。変顔なら負けへんで」
「あはは　ピキちゃんも！」
「二人ともｸﾞｯでしゅ　プミもまけましぇんよ」

三人で顔を見合わせ、お互いの変顔を見て笑い合う。
こうして、動物達の年の暮れは今年も賑やかに過ぎていった。

 

 

――年忘れ！がんばった大賞2021　END――

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2022/01/03 追記
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