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ふたりはアイドル!ダブルP☆(七夕に願いを★編) -2022/07/10(日)

884: 名無しさん? 2022/07/10(日) 19:56:50.08 ID:EBvpocbA0

ふたりはアイドル!ダブルP☆(七夕に願いを★編)

プミ「笹の葉しゃーらしゃら♪」
ピキ「先輩、もうカメラ回ってますよ!」
笹を振り回していたプミが慌ててカメラの前へと戻る。
そう、今日は古来からの伝統行事『七夕』と呼ばれる日だ。

プミ「プミでーしゅ!」
ピキ「ピキでーす!」
プミピキ「二人合わせて、ダブルP☆でーしゅ!」

プミ「今日は七夕って事で――」
ピキ「短冊を書きました!」
二匹の掲げる短冊には『早くコンサートが開けますように!』『ファンの皆さんと会えますように!』『おりんご沢山食べたい』『妹に早く会いたい』などの願いが画面いっぱいに表示されている。
今日の放送はトラブルもなく、最後は手に持っていた笹を美味しそうに平らげた二匹の姿がアップになった姿で無難に終了すると、一息ついたピキが終了ボタンを押した。
プミ「今日はやけに『おりんご代』スパチャが多かったでしゅね?」
ピキ「あの短冊、先輩だってバレてますから……」
プミ「つい、出来心でしゅ……」

苦笑したピキはふと見上げた笹に覚えのない短冊を見つけた。
『お母さんと会えますように』
おそらく、プミが書いたものだろう。その願いが叶う事をピキは祈らずにいられなかった。

 

885: 名無しさん? 2022/07/10(日) 19:59:53.35 ID:EBvpocbA0

プミは夢を見る。子供の頃の夢だ。

プミ「お母しゃん、シャンね~、お誕生日に、弟か妹が欲しいでしゅ!」
プミはメスにしてはかなり大きい母の身体へと抱きついた。身体が大きいからか、視線が顔まで上がらない。
母「シャンちゃん、それはどうかしらね~? コウノトリさんが運んでくるににしても、3ヶ月~5ヶ月くらいかかるから誕生日に間に合わないわよ?」
プミ「プミー。だったらおりんごいっぱい使ったアップルパイがいいでしゅ!」
母「ハイハイ。分かってますよ。シャンちゃんのためにとびっきりの美味しいアップルパイを作るわね」
顔をうんと上げたプミの視界に、にっこり笑った母の口元が見える。
プミ「お母しゃん、大しゅきー!!」

場面は変わる。トイレに起きたプミの耳に両親の声が響いた。
どうやら、父親が何か怒っている様だ。

次の日、母は消えた。

テーブルの上に残された紙には何かが書かれていたが、それは後に『探さないでください』と書かれていた事を知る。
飲んだくれる父。荒れる家。勉強する時間のみ、プミは寂しい気持ちを忘れる事が出来た。

そして事件は起きた。

心の隙を点かれたのか、父が騙され、多額の借金を抱えてしまう。
借金のカタに危うく怪しい人達に売られそうになったのを伯母の麗麗が肩代わりしてくれ、難を逃れる事が出来た。
そんな時、家の押入れに仕舞われた古いVHSを発見する。
山の麓に住む昔からシャンの成長を見守り色々と世話を焼いてくれた高齢夫婦の家からビデオデッキを借りたプミは再生ボタンを押した。

世界が、変わる。

 

886: 名無しさん? 2022/07/10(日) 20:03:49.61 ID:EBvpocbA0

そこに写しだされたのは丸顔の美少女アイドル『仙女』が圧倒的な歌唱力で歌う姿だ。
プミ(凄い……!)
仙女は階段を駆け上がる如く、瞬く間に大スターへと登りつめていく。
紅白の舞台で歌い終わり、赤組が勝利した瞬間、仙女はマイクを舞台に置いた。
仙女「普通の女の子に戻ります……!」
ビデオテープはそこで終了している。

プミは、仙女の様に、皆を元気にするアイドルになる事に憧れ始めた。
オーディションを受けると、その圧倒的なルックスに皆が目を奪われる。
プミの事務所に名乗りを上げた芸能事務所は多数あったが、プミは迷わず仙女が所属していた『恩賜上野スターダム』に決めた。
高齢の社長夫妻が経営する由緒あるプロダクション。社長夫妻に見守られながらもプミはPND48のオーディションを受ける。
歌は上手くないものの、父譲りのルックスにキレッキレのダンスを一心不乱に踊る姿に皆は惹き付けられ、PND不動のセンターへと登り詰めた。
だが、女の世界は甘くない。プミの人気に嫉妬したメンバーからの嫌がらせは日を増すごとに過激になっていくが、天然のプミはものともしなかった。

『血のおりんご事件』
高級りんごがPNDに差し入れされたが、他メンバー達がプミの分も食べ尽くしてしまう事件が起きる。
いつも大抵の事では動じないプミはこの時ばかりは大激怒し、机を粉砕。控え室で転げ回り、PNDの卒業、ソロ活動に専念する事を決意する。
暴れた際にドレスに付いていた造花の赤い花びらが大量に床に落ち、さながら血の様だった事からその出来事は『血のおりんご事件』と名付けられ、アイドル界の歴史に刻まれた、
この時の最後の卒業コンサートで発せられたプミの名台詞がある。
本人は「プミの事は嫌いになっても。PNDの事は嫌いにならないでください」というつもりが『PNDの事は嫌いになっても、プミの事は嫌いにならないでくだしゃい!』と口にしてしまった台詞だ。
この台詞は語り草となり、流行語大賞になった程だ。これを機にPNDの衰退が始まる。

 

887: 名無しさん? 2022/07/10(日) 20:07:04.70 ID:EBvpocbA0

そんな時、事務所の社長・カンカン氏が入院してしまい、事務所を畳む事となり、かつて『恩賜上野スターダム』に所属し、現在は自ら事務所を立ち上げた元アイドルのタンタンの『王子プロ』へと移籍した。
上を志す誰かとユニットを組みたいと思っていたプミの目に止まったのはPNDオーディション番組で研究生としてスタートしたばかりのピキの姿だった。
ピキは未熟児で生を受け、双子の妹は既に亡くなってしまった事、天国の妹が笑顔になれる、誇れるアイドルを目指したいという所に感銘を受けたプミはピキをスカウトしに向かう。
そして、結成されたのが『ダブルP☆』だ。
最高のバディ。皆の歓声。沢山のファン。眩いスポット。

手を上げて皆の歓声に応えているプミの視界は真っ暗になり、辺りは急に無音へとなる。
気づくと、プミは真っ暗闇を只一匹佇んでいた。

『寂しい』『寂しい』『寂しい』

負の感情に押しつぶされそうになりながら、プミはその場へと蹲る。
「お母シャン……!」
泣きながら声を絞り出したプミの視界に、キラキラと小さく発光する何かが入った。
生まれたばかりの羽の生えた赤ん坊がニコニコとプミの回りを飛んでいる。
「涙と鼻水を拭いて、こっちにおいでよ」
プミは涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を拭い、赤ん坊……、天使の後を追った。

 

888: 名無しさん? 2022/07/10(日) 20:09:32.59 ID:EBvpocbA0

暗闇だった場所の空には星のような数多の煌きが灯され、さながらそれは眩い天の川の様だ。やがて星は光に、辺りが照らされると見覚えのある場所へと変化する。
ここは『王子プロ』の見慣れた廊下だ。
そして、天使はプミピキ専用の一室のドアの前で止まった。
「さあ、ドアを開けてごらん」
プミはドアを開ける。

目の前にはプミの記憶の中そのままの大きな身体の母親が佇んでいた。
顔は逆光のため分からないが、間違いなく、それはプミの母だった。
「おかーしゃん!!」
溢れる想いと共に抱きついた母の毛並みも、大きさも、匂いも、記憶の中そのままだ。

「きっと……、もうすぐ会えるよ」
かすかに、天使の声が聞こえた気がした。

気づくと、既に辺りは明るい。
「夢……でしゅよね……」
部屋に飾った笹は少し萎え始めている。
「これじゃあ、もうこの笹美味しくないでしゅねー……」
起きて、後悔する。
せっかく再会できた母との逢瀬が夢だったのだから。
プミは手を伸ばしながら一つの短冊が落ちている事に気づく。それはスタジオから持ち帰った『お母さんと会えますように』と書かれた短冊だった。
プミ「夢の中でしゅたが、願い、叶いましゅた……」
短冊を手に取ると、更に下に何か落ちている事に気づく。それは、小さな白い羽だった。
「天使しゃん……?」

 

889: 名無しさん? 2022/07/10(日) 20:12:58.61 ID:EBvpocbA0

ワクチンの3回目の摂取が済んでいる事もあり、久しぶりにプミは新しく建て直された実家の前へと立つ。
父の好物の『笹団子』を片手にプミは呼び鈴を鳴らした。
リーリー「シャンちゃん、お帰りなさい」
リーリーは先程まで竹酢液を製造していたのか、顔はすすだらけだ。
プミ「おとーしゃん、竹酢液のお仕事は順調でしゅか?」
リーリー「皆のおかげで、作っても作っても間に合わないよ」
数年前のダメンズ全開だった頃と比べ、今ではリーリーは別人の如く活き活きしている。

シャワーを浴びているリーリーを待つ間、新しくなった家を見回していると、チェストの上に飾られた写真が目に入った。
それは、プミの一週間で早世してしまった兄の写真だ。写真の横にはお菓子が供えられている。
プミ「お兄ちゃん、お父しゃん、すっかり元気になって良かったでしゅ」
プミはふと思い出す。昨夜、夢に出てきた赤ん坊の姿をした天使、それが兄だという事を。
プミ「お兄ちゃん……?!」

感傷に浸っていると、シャワーから上がったリーリーが居間へと戻った。
リーリー「……シャンちゃん……。お父さんは、シャンちゃんに謝らなきゃいけないんだ」
プミ「どうしたんでしゅか?」

リーリー「実は、お母さんがいなくなる前の晩……、お母さんはシャンちゃんのアップルパイを作る用意をしていたんだ。けど、リンゴを味見するだけのつもりが、どうやら全部完食しちゃってね。『僕の分は食べても良いけど、シャンちゃんの分は食べちゃダメでしょ!』って怒っちゃったんだ」
プミ「……お母シャン、食いしん坊だったんでしゅか……?」

リーリー「それはもうかなりのね……。翌日、新たにリンゴを買いに行くって言ってたからリンゴを買いに外出したものだとばかり思ってたら、テーブルに『探さないでください』って置き手紙があって。お父さんの器が小さいばかりに、シャンちゃんには悲しい思いをさせちゃって、ゴメンね」
プミ「そうだったんでしゅか……」

 

890: 名無しさん? 2022/07/10(日) 20:20:27.20 ID:EBvpocbA0

プミは初めて母親のいなくなった真相を知った。そして、その原因が自分がアップルパイをねだった事を知り、胸がズキンと痛んだ。
リーリー「シャンちゃんが責任を感じる事なんてないんだよ。いつか、お母さんに会えたら、お父さんはお母さんに謝るし、今はちゃんと立ち直った姿を見て欲しいって思ってるよ」
プミ「お父シャン……!」
プミは涙を拭うと、チケットを父のリーリーへと差し出した。

プミ「数年ぶりのコンサートチケットでしゅ。見に来てくだしゃい!」
リーリー「今なら堂々と父親として応援に行けるよ! 楽しみにしてるね」

束の間の帰省を終え事務所のドアを開けると、プミは大きなものへとぶつかる。
「あら、プミちゃん、久しぶりね」
そのぶつかった大きなもの……巨体はマネージャーのシンコだ。
「シンコさん、帰ってきましゅた! お土産の笹まんじゅうでしゅ!」
「まあ、ありがとう~! ジュル」
プミからの手土産を手にすると、シンコはご機嫌に給湯室の方へと向かっていく。プミはそんなシンコの姿を見送った。
だが、その毛並み、大きさ、匂い、下から見上げたにっこりとした口元はどこか懐かしく、プミの記憶と夢を手繰り寄せる。
プミ「お…お母しゃん……?!」

いや、母が自分のマネージャーをしてるわけがない。
プミは頭を振ると、ピキが待つ控え室へと向かう。その足取りは軽い。
天使の言う通り、七夕の願いが叶うかもしれない。
そんな予感、希望がプミの心を満たしていた。

 

893: 名無しさん? 2022/07/10(日) 21:47:22.03 ID:lHyDcnVl0
>>890
おおぉぉ~!ダブルPの新作ありがとシャンです!
このシリーズの歴史に触れながら書いてくださっているので「そうそう、そうだった」と思いながら読み進めることができまちた
卒コンでの名台詞は思わず声を出して笑ってしまいまちたよw
シンコマネージャー、これからもずっとプミちゃんのそばにいてあげてね

 

894: 名無しさん? 2022/07/10(日) 21:49:33.16 ID:7+5ocb0X0
>>890
ダブルPキテター!*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)’・*:.。. .。.:*・゜゚・*
嬉しい!お久しぶりで逆に新鮮!
続き期待してよいのかな?

 

896: 名無しさん? 2022/07/10(日) 22:10:02.34 ID:m/ik17+t0
人気スターというものは光が強ければ強いほど影の部分が濃くなるものでしゅよ

 

897: 名無しさん? 2022/07/10(日) 22:24:19.10 ID:EBvpocbA0

まだダブルPを覚えていてくださってる方々がいて嬉しいです。
ありがとうございます。
最終回は一応ぼんやり考えてはいるのでいつか完結させます。
忘れた頃にまた投下すると思いますので
その時に読んで貰えたら嬉しいです!
シンコの謎が解明される筈です。

シリーズをまとめてくださってる中の方もありがとうございます。
久しぶりにまとめ見たら可愛い表紙が付いてて感動しました。

 

898: 名無しさん? 2022/07/11(月) 01:05:58.94 ID:t+ErohuY0
>>897
うわー!ダブルPだー!
懐かしい気持ちとまた続きが読める喜びで胸がいっぱいになりました
マイク、衣装、スポットライト、華やかな裏で苦悩する姿、それから葛藤、これが真のアイドルなんだーと
それから竹酢液を作るリーパパ
一気に読み進みました
続きは作家さんのペースで、待つ身としては絶対に忘れませんので楽しみにお待ちしています

 

903: 天の川竹男(アマノガワ タケオ) 2022/07/11(月) 09:44:46.05 ID:GFTUCzaZ0
ダブルP Thank you

 

920: 名無しさん? 2022/07/11(月) 17:05:39.93 ID:cltDMjlr0

わたくしも昨夜見るテレビがなかったので録画した明菜ちゃんを見ましたよ

その後ダブルPのお話読んで思わずプミちゃんと明菜ちゃんとオーバーラップしてしまいまちた >>890

 

891: 名無しさん? 2022/07/10(日) 21:12:44.22 ID:ZBLo7Oyq0
なんかシリアスなのきてた!

 

892: 名無しさん? 2022/07/10(日) 21:20:43.14 ID:IiklwKnF0
一気に貪るように読みましたァッッッ!!!

 

895: 名無しさん? 2022/07/10(日) 21:56:14.97 ID:gbYk5kMm0
ダブルP大好き!
一気に読ませていただきました
大作ありがとうございますペコリ

 

924: 名無しさん? 2022/07/11(月) 19:31:33.89 ID:S3d/NLVK0
>>897
ジェットコースターな展開にハラハラドキドキです
続き楽しみに待ってます