（お話）大人になったチーザイくんの話-2019/02/23(土)

●大人になったチーザイくんの話

僕の名前はチーザイ。
両親がいなかった僕は、幼い頃から他の人に比べて色素が薄く、いじめに遭うこともあった。
その為まともに人と話すことなど出来なかった。

そんな僕にも仲良しの子が出来た。
近所の可愛い女の子。
小さな頃から思いやりのある聡明な子だった。
僕は秘かに彼女を想っていた。
ある時彼女が、「母を楽にしたいの」…そう言って華やかな世界に飛び込んでいった。

間もなく派手に着飾った姿をテレビで見かけるようになった。
有名になってしまった彼女。
キラキラ輝いてる。
もう僕には手の届かないところに行ってしまった。

僕も家の事情で引越し、成長して仕事をするようになった。
そんなある日、何年かぶりに彼女と再会した。

「母とまた一緒に暮らし始めたの」
ずっと華やかな世界にいると思っていたが、実は違った。
彼女の母親が過労で倒れたのだ。

確かに昔から彼女の母親は働き者だった。
その為、昼間は僕と彼女でよく遊んでいたんだ。
休みの日は、美味しそうなシチューを作って僕にも食べさせてくれた。

そんな再会から２年、僕らは結婚した。
今ではすっかり元気になった彼女の母親は、僕のお母さんになった。
そして、今でも働き者だ。
動いていないと落ち着かない、と目尻にしわを寄せて笑う。

お母さんの声が聞こえる。
「小雅～これで当分足りるかい？」
「かあちゃん、もう何十枚目？」
お母さんはもうじき生まれてくる初孫にと、布オムツを縫ったのだ。
母娘の笑い声が響く。

僕は世界一幸せ者だ。

終わり