壁の隙間を通り抜けてくる風から、俺の妻の匂いが消えた。室内へ招かれて、おやつを食べているのだろう。
毛がぬっとりするこの季節、俺たちジャイアントパンダは食欲が落ち始める。しかし、まだ母乳を欲しがる愛娘がいる。
娘のシャンシャンに与える母乳を出すために、妻のシンシンは必死で食っている。食うことも母親の仕事なのだ。
接触を許されない父親としては…妻が食事に専念している間は、娘を見守る。それがせめてもの、俺の仕事だと思う。
だから俺は櫓へ登る。誰だよ、カメラの向こうで「変態親父」とか言ってるヤツは。しっかり聞こえてるからな。
木の上で垂れていると思っていたら、娘は垂れずに座っていた。竹の小枝を握っている。食うのか?遊ぶのか?俺は目を凝らす。
「あ!パパー!パパー!」
俺の視線に気づいた娘が、こちらへ振り向いて跳ねた。ケガをするほどの高さではないが、やはり一瞬ヒヤリとする。
「こらシャンシャン!そんなとこでピョンピョンしない!」
「あのねー!シャンねー!パパとおはなししたいのー!」
先に俺の注意を聞いてくれよ、娘よ。
「だからねー!カベのスキマにきてほしいのー!」
するすると木から下りていく娘を見守り、着地まで見届ける。俺も櫓から下りて、待ち合わせの壁の隙間へ近づく。
娘は壁にペタリとくっついて、隙間に小さな鼻を押しつけている。豚っ鼻になるから気をつけなさい、娘よ。
「パパー!あのね、シャンね」
「んー?」
娘の鼻先へ顔を寄せると、その鼻息で俺の睫毛が揺れた。どうやら少し興奮しているようだ。
「どうした?嬉しいことでもあった?」
「うん!あのね、シャンね…」
なんでこんなに可愛いのか。娘の鼻が。
鼻息を受けて閉じようとする自分の目蓋に、俺は必死で逆らいながら、娘の話に耳を傾ける。
「それでね、シャンね…あれ?パパ?ないてるの?」
「ドライアイ」
「どらいあい?」
>誰だよ、カメラの向こうで「変態親父」とか言ってるヤツは。しっかり聞こえてるからな。
ワロタw
>>592
いいお話ありがとうございます
毎晩投下される作品たちを毎朝目を通しています
作家さんたちありがとう
シャンの豚鼻ってリーリーの鼻と似てるよねw
親子だなって思った
シンシンの鼻とはちょっと違うw
人間で言うと高木ブーは豚鼻だけど
いかりや長介さんは鼻の穴がデカいだけなので
シャンシャンはいかりや長介タイプかと
あーシャンシャンごめんよー
もうシャンの鼻しかみえないw
時々開いてるだけ
もう大人の男の人も抱えるのが精一杯だよ