（SS） リーリー物語- 2018/04/30(月)

リーリー物語2

日本名と、日本の生活にようやく慣れ始めて暫くした後、シンシンが珍しく運動場で激しく転がっていた。
シンシンの白い毛が葉っぱや小さな木片巻き込みながら茶色へと変色していく。
「シンシン、どうしたんだい？」
オレが声をかけると、シンシンは頭を抱えながらまた転がった。
「自分でもよくわからないの。でも何故だかとても荒ぶりたい気分なの！何故かしら？！」
ニンゲンの飼育員が何人かでシンシンを見ながら話し合っている。
これは何か大変な病気なんじゃないかって心配していた矢先、シンシンの姿が見えなくなった。
それから、オレ達のパンダ宿舎を訪れるニンゲンの飼育員が増えたのをオレは知っている。
シンシンの残り香から、シンシンが近くにいる事だけは分かったのがせめてもの救いだ。

ある時、ニンゲン達の歓声が聞こえて、よく見るニンゲンの飼育員が笑いながらドアの隙間からパンダ団子をオヤツの時間でもないのにくれた。
とても嬉しそうで、何か嬉しい事があったのだけはオレにも分かった。

数日後、何故か見るニンゲン、部屋の前を通るニンゲン達皆が悲しそうな顔をしている。
とても悲しい事があったのだろうとオレは思った。
それから数日、夜中にシンシンの悲しそうな泣き声が聞こえてきて、とても悲しい気持ちになった。
何故だろう？オレの胸が締め付けられたように苦しい。

何故だかわからないけれど、オレも、とても悲しかった。