ジリリリリン ジリリリリン
早朝、電話が鳴った。
こんな時間に何だろうと思い受話器をとった。
「ああ!小Y頭ちゃんかい?おはよう僕です、休みの日にごめんね。」
新聞店の店主からだった。
「あのさ、一人今日病気でね、人が足りなくなっちゃったんだよー。
フォローお願いできるかなぁ?」
ああ、電器屋さんに並ぶ時間まで間に合うかしら?
一瞬そう思ったが1日勤務日が増えるのは正直お給料の面ではありがたくもあった。
「はい、今から行きます」
ささっと身支度をし、小雅に「電器屋さんに並ぶまでは必ず帰るからね」
と約束し、家を出た。
「ああ、もうこんな時間」
慣れない地区の配達に少々手間取り、その後の片づけをしていたら
いつもより上がる時間が遅くなってしまった。
「小Y頭ちゃん、今日はありがとう!おつかれさん!」
「はい・・!手間取ってしまいすみませんでした、ではお先に失礼します。」
そう言うよりも早く自転車にまたがり急いで小雅の待つアパートに向かった。
ドキドキしてきた…!
「小雅、ただいまっ・・!」
「母ちゃん!おかえりっ!!」
小雅はすっかり支度をしてずっと待っていた様子だった。
「小雅、ごめんね。早く行こうね。」
「母ちゃん、これ飲んでから・・!」
いつものようにニコニコ笑顔で麦茶を一杯差出して来た。
小雅のおいしい麦茶を一気に飲み干し、すぐに2人で家を出た。
キキーーッ ガチャッ
自転車の後ろの子供用シートに乗せるには大きくなりすぎた小雅を無理に乗せ
大急ぎで飛ばし、電器屋さんに着いたのは開店数分前だった。
「母ちゃん・・っ! 人が沢山いるよ!」
小雅の指さす方を見ると、入り口付近には沢山の人が並んでいた。
「ああ・・遅かったか・・」
あの特価だもの。こんな時間に来ても間に合うはずはなかったんだ。
それでも一応・・と電器屋さんに入ることにした。