カンカンカンカン…軽やかにアパートの階段を上ってくる足音が聞こえてきます。
コンコン…玄関のドアをノックする音がしました。
「はーい!はい、はい、ちょっと待ってねー!今いくからね」ヨッコイショ
カチャ…
「ただいまー!」
「おや!まあ小雅じゃないか!どうしたんだい?今日来るとは知らなかったよ」
「急でごめんね、かあちゃん。今日はね、時間が取れたから、どうしてもかあちゃんに会いたくて来ちゃったんだ エヘヘ」
「そうだったのかい」
小Y頭がそう答えると、
「お母さま、ご無沙汰してます。お元気でしたか? ニコッ 」
と、小雅のうしろから出てきた七仔が挨拶をした。
「やだよぉ、お母さまだなんて。母ちゃんでいいよ!チーザイくんも立派になったねぇ。さあさ、寒いだろ?入って、入って!」
小雅と七仔は小さい頃、近所に住む幼なじみでとても仲良しだった。
それぞれの事情で何年も会えなくなってしまった時期を経て、
大人になってから再会し結婚することになったのだった。
小Y頭は2人を部屋に招くやいなや、待ちきれないとばかりに、
「おちびさんたちは寝んねしてるのかい?」とそっと小声で聞いた。
「そうなの、ここに来る途中で2人とも眠っちゃったの」
小雅は、自分と七仔、それぞれのベビースリングの中でスヤスヤ眠っている双子の赤ちゃんを小Y頭に見せました。
「あらあらまあまあ!ますます可愛らしくなって…」
小Y頭は目を細めて双子の赤ちゃんを見つめました。
しばらくの間、じっと赤ちゃんたちを静かに眺めていると、
ハッと「赤ちゃんたちをお布団に寝かせないといけないね」と、
小Y頭は布団を用意し始めました。
「お母さん、ボクがやりますよ。お母さんは小雅と休んでいてください」
七仔は小Y頭から布団を受け取って敷き、双子ちゃんを寝かしつけました。
「じゃあ、お茶でも淹れようかね」ヨッコイショ
「かあちゃん、わたしがやるから、かあちゃんは座ってて!」
小雅は家から持ってきた沢山の手土産が入った紙袋を部屋の隅に置くと、台所に立ってお茶を淹れ始めました。
「かあちゃん、すぐに動くところ相変わらずなんだから ウフフ」
「そうだねぇ、動いていないと落ち着かない性分なんだよ」
と、目尻に皺を寄せて笑う姿も昔から変わらない。
小雅はお盆に湯呑み茶碗を三つ乗せてこたつまで運んでくると、
「そうそう、今日はね、あ、パパ、あれを出してくれる?」
と、七仔に手土産を出すように促した。
小雅は七仔のことをパパと呼んでいるようだ。
「お母さん、これどうぞ…」
七仔はプレゼントの包みを小Y頭に差し出した。
「これは?」
「これね、ちょっと遅くなっちゃったけど、バレンタインのチョコレート!かあちゃん、バレンタインデーはシンコママのお手伝いで忙しかったでしょ。だから落ち着いてから作って持ってこようって、パパと相談してたの」
「開けていいのかい?」
「もちろん!」
小Y頭は包装紙を破かないように丁寧に開けると、箱の中にはチョコレートケーキが入っていた。
「まあまあ!これは!なんて素敵なんだろう…これ手作りなのかい?」
「はい。これはセバスに教わってボクが作りました。…お口に合えばいいんだけど…」
「ありがとうね、うれしいよ!ニコニコ セバスさんはお元気?ポールさんやマリーさん、タナカさんもどうしてらっしゃる?」
「はい、みんな元気です。今も変わらずにうちでボクたちのお世話をしてくれています」
「そうかい!それは良かった」
「ポールは相変わらず心配症ですけどね ニコッ 」
「みんなとっても良い人たちなの!あ、パパ、マリーさんからの…」
「あ、そうだった…ガサガサ…お母さん、これマリーから預かってきたものなんです。どうぞ」
「マリーさんから?開けていいかい?」
「はい、開けてください」
「まあ!これは…良い香りだこと。石けんね」
「そうなの。この石けんね、マリーさんがいつも使っていて肌にとても良いから、かあちゃんにも使ってほしいってくださったの」
「あらまあ!こんな素敵な石けん、使ったことないよ。これで洗ったらツルツルになっちゃうかね」
小Y頭さんは、両頬を撫でながらおどけた表情で二人を和ませました。
アハハ! ウフフ! ニコニコ
「マリーは…母親の記憶がほとんどないボクの母親代わりだって言ってくれているんです。それで結婚したら母親は二人になるんだよって。だから今日は、しっかり親孝行をしてくるんですよ、と送り出されました」
七仔は照れくさそうに頭をかきながら言いました。
自分にお母さんと呼べる人が二人もいることに、なんて幸せなんだろう…と幸せを噛み締めていました。
「そうだよ!チーザイくんの母親はマリーさんと私だよ。だから親孝行なんて気にしないでいいから、うんと甘えて、うんとわがまま言うんだよ!」
「は…はい。甘えるってどうしたらいいのか分からないけど…ありがとうございます! ニコ」
「パパ、ほら、遠慮してたことがあったじゃない?あれ、かあちゃんにお願いしてみたら?」
小雅が七仔の背中を押しました。
「あ…あの…。もし大丈夫だったらなんですが…あの…小さい頃みたいに、またここに泊まらせてもらえないかなって…オモッテ …」
「チーザイくんね、小さい頃にここに泊まって、かあちゃんと三人で川の字になって寝たのがうれしかったんだって!」
「ああ、もちろん良いよ!今夜泊まっていくかい?」
「いいんですか!」
「もちろんだよ。いつだって泊まっていっていいんだよ」
「パパ、よかったね!」
「うん!」
「さあ、それじゃあ、お夕飯の支度しないとね!」
そう言うと小Y頭さんは台所に立ちました。
「かあちゃん!今日の晩ごはんなぁに?」
小Y頭は戸棚から取り出した箱を両手に持って、
「じゃじゃーん!!小雅とチーザイくんが大好きなクリームシチューだよー!」
「わあーい!やったー!やったー!大好きなシチューだ、シチューだ!」
「やったー!」
思わず七仔からも子どものような声が上がり、七仔はハッとして、顔を真っ赤にしています。
それを見た小雅と小Y頭は、あはは、と笑い、
七仔もつられて、あはは、と笑いました。
今夜は久しぶりに、三人と双子の赤ちゃんと一緒に夜を過ごします。
温かいお部屋で家族水入らず。
お夕飯を囲みながら、積もる話が尽きません。
いつの間にか、小雅と七仔は、すっかり子どもの顔に戻っていました。
お夕飯の後は、お気に入りのDVDを流し、チーザイくんが作ったチョコレートケーキを紅茶と一緒に味わいます。
そうして、週末の長い長い夜をみんなで楽しく過ごすのでした。
おしまい
ステキな旦那様と双子ちゃんに恵まれた小雅ちゃん
幸せいっぱいで読んでるこちらも小雅ママに負けないくらい顔がほころびました
優しいお話しありがとシャンです!
大作、有難うございます!
ほっこりして楽しませてもらいました。
読んでいてとても幸せな気持ちになりました
作家さんどうもありがとう
包装紙を破かないように丁寧に開けるところ、小Y頭さんらしくてすごく好き
素敵なお話きてたーー!!!
ありがとうございます!
チーザイくんのチョコレートケーキ食べたいなあ
素敵なお話!勿体なくてゆっくり読みました
大作ありがとうございます!
作家さん
素敵なお話ありがとうございます
ほんと大作をありがとうございます!一気読みしたので、また後でゆっくり読みます☆
超大作ありがとうございます!
コーヒーとドーナツを食べながらゆっくり拝見しました
七仔くんはパンダにしては珍しい今時のイクメンパパだね 素敵
小雅親子もみんな優しいからほっこりさせてもらえました
また時間があればお話待ってます
うわーん!優しいお話ありがとう!
素敵なお話でした
きっかけは外で遊んでいたチーザイくんを小雅親子がクリームシチューの夕飯に誘ったんでしたね
健気な親子が幸せそうにしてるのがなにより嬉しい
作家さんありがとう
小雅ちゃんとチーザイくんのお話ありがとうございます!
3人の優しい関係に気持ちが温まりました
>>417のスレをあらためて読んでみましたが
小雅ちゃんとチーザイくんの年齢差ってどれくらいなんだろう?
チーザイくんが三輪車に乗ってる時に小雅ちゃんはもう少し歳が下のように読めたから
2~3歳差くらい?
作品読んだ後にこんなことを考えるのも楽しいですw
小雅ちゃんとチーザイくんの物語を書かせていただいた者です
チーザイくんが小雅ちゃんと結婚したお話を以前読んだので、それを思い描きながら書かせていただきました
わいわいさんのところに過去スレがありますが、参考にさせていただいたスレを貼っておきますね
読んでくださり、また感想まで本当にありがとうございます!
とっても嬉しいです