上野に春がやって来る 前編
二月三日、節分の日。小雅ちゃんと母ちゃんは、久しぶりにアメ横へとやってきました。
マレーグマのキョウコさんのおつかいで、節分用の煎り豆や小豆を買いにきたのでした。
キョウコさんが前もって注文してくれているお店へ、手をつないでてくてくと歩きます。
近所なのに意外と立ち寄らないアメ横。平日で空いてはいますが、独特の賑やかさです。
「ああ見つけた、このお店だね」
「うわああああ!すっごーい!」
そのお店は豆類だけではなく、ドライフルーツなども取り扱っている乾物屋さんでした。
どさりと店頭に並ぶ色とりどりの豆や木の実に、小雅ちゃんの目はキラキラと輝きます。
とっても美味しそうな豆もあれば、アクセサリーの材料になりそうな木の実もあります。
小雅ちゃんは食欲と創作意欲が同時に膨らんで、ほっぺたが暖かくなるのを感じました。
「いらっしゃい!小Y頭さんですよね、キョウコさんから連絡もらってます」
「ええ、節分のお豆を買いに来ました」
「明後日の休園日に動物たちで豆まきするんだって?いやあ楽しそうだなあ」
「豆まきの後はぜんざいを振る舞うんです。キョウコさん張り切ってますよ」
「ああ、それで小豆も必要なんですね」
母ちゃんと店員さんの会話が弾んでいる間も、小雅ちゃんは熱心に商品を見て回ります。
お店全体が大きな宝箱のように感じられて、百円ショップのように心がウキウキします。
――これとこれをあんこにして、三色おはぎ作れるかな?
――あの赤い実かわいい!ブレスレット作ってみたいな。
――中国産なつめ?母ちゃんは食べたことあるのかなあ。
――わ!大きなドライアップル!シャンちゃん喜びそう。
シャンシャンが中国へ引っ越してもうすぐ一年ですが、一日も忘れたことはありません。
りんごや人参を目にすると「シャンちゃん元気かな」と、思いを馳せる小雅ちゃんです。
>>644
上野に春がやって来る 後編
「結構な重量ですよ?台車を貸しましょうか?」
「いえいえ、娘が手伝ってくれますから大丈夫ですよ」
母ちゃんは煎り豆の特大袋をふたつ、小雅ちゃんは小豆の大袋をひとつ抱え上げました。
噂に聞いていた孝行娘の姿を初めて目の当たりにした店員さんは、いたく感心しました。
「良い子だね小雅ちゃん。そうだ!ちょっと待ってね」
店員さんは店先をざっと見渡して商品をふたつ手に取り、小雅ちゃんの前へ屈みました。
ひとつは煎り豆の小袋、もうひとつはシャンシャンのことを思い出したドライアップル。
「ご褒美だよ。このポシェットに入れてもいいかな?」
小雅ちゃんが許しを求めて母ちゃんを見上げると、母ちゃんは優しい笑顔で頷きました。
「ありがとうございます!いただきます」
――そう言えば節分のお豆って、シャンちゃんが鼻の穴に詰めてポンポン飛ばしてたなあ。
思い出し笑いをしたはずなのに急に涙があふれ出て、母ちゃんと店員さんが慌てました。
小雅ちゃん自身も慌ててしまって、涙を拭きたいのに小豆の大袋で手が塞がっています。
「ごっごめんなさい!ぐすっ。シャンちゃんのこと思い出したら急にっふええええん」
涙を止めようと上を向いてみましたが、かえって口が開いて嗚咽が漏れてしまうばかり。
店員さんは小雅ちゃんのポシェットからハンカチを取り出して、涙を拭ってくれました。
その翌日。少々誤った口コミが広まってしまい、乾物屋さんにお客さんが殺到しました。
『あの店の豆はパンダが泣いて喜ぶほど美味いらしい』
大勢のお客さんと接しつつ、店員さんは日めくりカレンダーをちらりと振り返りました。
今日は立春。「小雅ちゃんが福を招いて春が来たんだな」と、独りごちて微笑みました。
思いつきで書いてみました
休園日の豆まきまでは書けそうにありませんが、ちょっとだけふふっとしていただければと思っております
どなたか豆まきのことを書いてくださる作家さんがいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします(梨)
わぁぁ小雅ちゃんのお話嬉しすぎます!
すごくすごくふふってなって涙が出ました
ちょっと間違って広まった口コミも素敵ですね
キョウコさん御用達で優しい店員さんのいるこのお店の商品は実際とても美味しいのだろうと思います
梨男さん、素敵なお話をありがとうございました
プミちゃんを思い出して泣いてしまった小雅ちゃんに私まで目から汁が…
そして優しい店員さんのお店が繁盛してよかったよかった
>>646
優しい店員さんがいて良かった
ゴワゴワ列に並びましゅ
梨さんありがとうございます
梨男さん、かわいい小雅ちゃんのお話ありがとうございます
お母ちゃんのお手伝いをする姿、シャンちゃんを想ってあれやこれや考えたり、ろくでなちのお豆を思い出してとうとう泣きだしてしまったり、すべてが愛おしい
みんなが優しい世界で本当に幸せな気持ちになりました
>>646
梨男さん素敵なお話をありがとうございます
小雅ちゃんを取り巻く温かな世界にじんわり泣き笑いしながら読みました
母ちゃん呼びがたまらなく愛おしいです
手芸好きの小雅ちゃんへ
2/8のすてきにハンドメイドでパンダのアルファベット刺しゅうをやるんだって
母ちゃんと一緒に見るのかな
梨男さん可愛くて素敵なお話をありがとうございます!
小雅ちゃんがスパイス屋さんでおめめキラキラさせて色々な思いを馳せるところ、そしてやっぱりシャン子ちゃんを思い出すところ、とても愛おしいですね
シャン子ちゃんを思い出した小雅ちゃんと一緒にわたくちも涙がぶわっと溢れてしまいました
会いたいよねぇ…と
そして小雅ちゃんといえばポシェットですよね
小雅ちゃんのポシェット大切に使っているところがまた愛おしくて、スパイス屋さんと同じく何かプレゼントしたくなってしまいます
今日は上野動物園で豆まきをして恵方巻きを食べたり、キョウコさんが大鍋で作ったおぜんざいを食べているのですね
みんなの笑顔が目に浮かんできます
会わせてあげたい…
どなたかー!(切実)
それにはまず飛行機代が問題でしゅね
母ちゃんがこっそり費用を貯めてくれていたとか、プミピキ商店街の福引で当たったとかでしゅかね
泊まるところはプミちゃんちがありましゅね
輸送機ぐらい出せないかしら
と無茶ぶりw
プミ・ピキのお年玉あんたの夢をかなえたろかスペシャルに応募しましゅか?プミミ
ピギャーさんま・玉緒よりも叶えたるでー
応募するする~!!
でももしかしてお高いかなえたろか料徴収されたりする…?w
私も小雅ちゃんと同じく、思い出して笑顔になったり寂しさが募ったりしながらの日々です
遠く離れていても同じ空の下、きっとプミちゃんも小雅ちゃんのこと思ってるでしょうね
コラ@わいわい