私達ジャイアントパンダにとって、厳しい夏がやって来た。日本の夏は何回目になるかしら。いつまでたっても慣れないでいる。
そんな苦手な夏だけれど、夏だからこその楽しみもある。小雅が手伝ってくれる梅干し作り、小雅と夕涼みしながらの線香花火。そして…。
「ただいまー」
「母ちゃんお帰りなさい!麦茶できてるよ!」
「ありがとう小雅、助かるわー」
帰宅すると小雅がすぐに用意してくれる、ほど良く冷えた麦茶。優しく染み渡る涼しさと、可愛い小雅の気配りが嬉しい。
「ああ美味しい!」
「良かったー。今日は特に暑くなるよって、下の空き地にいたおじさんから聞いたから、お湯呑みも冷やしておいたんだよ」
「空き地にいたおじさん?どこのおじさん?」
「知らないおじさんだったよ」
「ヒトのおじさん?パンダのおじさん?」
「ヒトのおじさん。あ、そのおじさんがね、余ってるから小雅にあげるって」
小雅が指差すのはテーブルの上、そこには小さな紙袋が二つあった。手にとってみると、どちらもカラカラと乾いた音がした。
「何か書いてあるね、こっちは“絲瓜”で、こっちが“苦瓜”…中身は種かしら?」
「種だって言ってたよ。母ちゃんがいない時に、知らない人から物をもらえませんって言ったんだけど…」
小雅が少し俯いて、しょんぼりしてしまった。
「じゃあこの種、無理やり渡されちゃったんだね?」
「うん。お母さんに見せて、お母さんが良いよって言ったら植えてねって。駄目って叱られたら捨てなさいって」
小雅は私の言い付けを守って、一度はきちんとお断りしている。それでもと無理やり渡されてしまったなら、それは仕方ないことだ。
「小雅、ちゃんとお断りできて偉かったね。食べ物だったら絶対に駄目だけど、種だから今回だけありがたく頂こうね」
「それ、何の種なの?」
「こっちは“ヘチマ”、こっちは“ゴーヤ”って書いてあるんだよ。どちらも夏の野菜だね」
「野菜なんだ!美味しいの?」
「うん、美味しいよ。観賞用だったら美味しくないらしいけど、とりあえず明日一緒に埋めよう」
「うん!」
「じゃあ母ちゃん、夕刊の配達ついでに大家さんと下のお宅にお許しもらってくるよ。どちらもすごく高く伸びるからね」
「ありがとう母ちゃん!わあい楽しみ!」
どこのどなたか分からないけれど、小雅に夏の楽しみを下さってありがたく思う。
観賞用で食に適さない品種だったら、ヘチマタワシを作ろうか。ゴーヤを輪切りにして、スタンプにして遊ぶのも楽しいわね。
それにしても、この糸を二つ並べた漢字。日本で見かける事は少ないから、何だか懐かしいわ。
「…あらっ?ねえねえ、小雅?」
「なあに?」
「この種をくれたおじさん、もしかして中国の人だった?」
「分かんない…あ!バイバイした後にどこかに電話してたけど、その時は中国語で話してたかも」
ああ、やっぱり。
通りすがりの祖国の人?大使館の人?まさか実家からの…?ううん、詮索はやめよう。小雅への親切に、感謝だけしておこう。
「じゃあ母ちゃん、今度は夕刊の配達に行ってくるね」
「うん!行ってらっしゃい、気をつけてね!」
きたーーー
続きが楽しみです
謎の中国人 執事さん?
小雅母子物語キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ヒトのおじさん、執事か?
続き楽しみーーーーー
朝刊、珍珍軒の他に夕刊も配ってたんだね
小雅ママガンバレ!
なんてかわいい娘と立派な母ちゃん!
たぶんいろんな作家さん達の作品が仲良く交差してるんだよね
小雅、朝の水やりするのかなぁ
シャンがお泊りに来たら譲ってあげそうだな
>>962
ふふ、シャンもやりたいでしゅーって騒ぎそうですもんね!
明日もう食べられるのでしゅか?とか。
私の写真のカルピスも小雅ちゃんとシャンがたけのこの里とカルピスを飲みながら遊んでたイメージがあって、その時からシャンはカルピス大好きになった妄想設定です。
キテター!
わざとらしくて間抜けなスパイおじさん
小雅の写真は撮れたのかしらんw
小雅母子物語キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ヒトのおじさん、執事か?
続き楽しみーーーーー
小雅ちゃん梅干し作りも手伝ってるんだ
偉い偉い
小雅の「母ちゃん」呼び大好き
やっぱり小雅ママ夏をうまく乗り切る方法良く知ってた!グリーンカーテン楽しみ
作った梅干しはおにぎりに入れてピクニックとかに持っていくんだろうな
シャン子も喜びそうw
同意
母ちゃん、母ちゃんって呼ぶ小雅ちゃんが激カワ