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(前編)〜ベビールームのウタ先生とおちびさんたち〜 【 新しいおともだち 】

わいわいタウンの皆さま、ご無沙汰しております。ベビールームです。
この度、作品を書きましたので投稿させていただきたいと思います。
ただ、この作品にはパンダさんは登場しませんので、その辺りをご了承いただけたらと思います。
また、とても長い作品ですので、お時間のあるときにでも、読んでいただけたら幸いです。
よろしくお願いします。

1️⃣ 登場動物さんたち(登場順)

🔴ウタ先生(上野動物園)ニホンツキノワグマ

🔴アヌラ(東山動植物園)アジアゾウ→うららちゃんのお母さん

🔴さくら(東山動植物園)アジアゾウ→うららちゃんのお姉さん

🔴うらら(東山動植物園)アジアゾウ

🔴ピリカ(旭山動物園)ホッキョクグマ→ゆめちゃんのお母さん

🔴ゆめ(旭山動物園)ホッキョクグマ

🔵すなすけ(旭山動物園)エゾヒグマ→2023年6月19日保護
🔴とんこ(旭山動物園)エゾヒグマ

🔵アルン(上野動物園)アジアゾウ

🔵フブキ(東山動植物園)ホッキョクグマ

🔴カーラ夫人(東武動物公園)ホワイトタイガー→ベビールームのある老舗ホテルのコンシェルジュ兼ティールームのマネージャー

2️⃣ ~ベビールームのウタ先生とおちびさんたち~

【 新しいおともだち 】

ここは少人数制のベビールーム。
お母さんやお父さんがお仕事だったり、育児中に身体を休ませたかったり、さまざまな理由で赤ちゃんたちを預けることができる託児施設です。

広いイングリッシュガーデンを設えた老舗ホテルの一室にある、このベビールームは人気があり、いつも満室です。

ツキノワグマのウタ先生は、このベビールームのナニーです。
黒のロングワンピースに白襟、白カフスに白いフリルのエプロンを身に着けて、子どもたちのお世話をしています。

赤ちゃんの頃に通っていた、アルンくん、楓浜ちゃん、ホウちゃん、フブキくんは、大きくなった今は以前とは少し生活が変わりました。

アルンくんは今も上野動物園で暮らしています。
シャオシャオとレイレイがよくおうちに遊びに来るので、お世話をしてあげたり、遊んであげたりしています。
また、お母さんのウタイさんやお隣のスーリヤさんのお手伝いをしながら過ごしています。
たまにベビールームにも顔を出してウタ先生のお手伝いもしています。

楓浜ちゃんは、お父さんの永明さんがお仕事の都合で転勤になり、それにともなって、お姉さんの桜浜ちゃんと桃浜ちゃんも中国へお引っ越ししたので、お姉さんたちの代わりに末っ子ながらお母さんのお手伝いをがんばっています。

ホウちゃんはお父さんとお母さんが転勤となったので、家に残ってひとり暮らしを始めました。
お父さんのゴーゴさんとお母さんのイッちゃんさんの代わりに、株式会社蓬莱さんの看板娘として実家を守っているのです。

フブキくんは、今年のWBCを見て大谷翔平選手やバスケットボール日本代表の河村勇輝選手に憧れて、スポーツ選手を目指すようになりました。
お父さんの豪太さんとお母さんのユキさんを説得して、スポーツ選手養成所に通うためお引っ越しをして、今ではひとり暮らしをしています。

3️⃣

今朝のベビールームへの一番乗りは、東山動植物園のうららちゃんです。
お母さんのアヌラさんとお姉さんのさくらちゃんに連れられてベビールームにやってきました。

「おはようございます。ウタ先生」

「おはよごじゃいまちゅ」

「おはようございます。アヌラさん、さくらちゃん、うららちゃん。
うららちゃん、今日も元気にご挨拶できてえらいわ」

「うん!」

うららちゃんはウタ先生に褒められたので、うれしくてお鼻を高くあげてニコニコと喜びました。

「じゃあ、ウタ先生、この子をよろしくお願いします。バッグに哺乳びんなど必要なものが入ってますので」

「わかりました。アヌラさん、さくらちゃん、いってらっしゃいませ」

「ママ、おねえちゃま、いってらっちゃい」

「いってきます!」

お仕事に戻るアヌラさんとさくらちゃんは、うららちゃんにお鼻を振りました。

うららちゃんもお鼻を振りましたが、いつもお母さんとお姉さんの姿が見えなくなると、ちょっぴり寂しくなって泣いてしまうのです。

「ママ…おねえちゃま…グスン…」

ウタ先生はそれを知っているので、すぐにアヌラさんが持ってきてくれた哺乳びんでミルクを飲ませてあげるのです。

「よしよし、うららちゃん、大丈夫。先生がいるからね」

ウタ先生のひざ枕でミルクをこくんこくんと飲みはじめると、うららちゃんはいつものようにだんだんと落ち着いてくるのでした。

4️⃣

コンコン…

「おはようございます」

次にやってきたのは、ピリカさんとゆめちゃんでした。

「ウタしぇんしぇい、おはようごじゃいましゅ」

「おはようございます!ピリカさん、ゆめちゃん」

「ウタ先生、今日はゆめがお話したいことがあるそうなんですよ ウフフ」

「あら、ゆめちゃん、何かしら?」

「あのね、あのね」

ゆめちゃんはそう言うと、ピリカさんの後ろに隠れていた小さな茶色のこぐまの手をひいてウタ先生の前に連れてきました。

「この子ね、ゆめの弟なの!」

「え?弟さん?」

ウタ先生はゆめちゃんに弟がいたとは知らなかったので、少し驚きました。

「うふふ、ゆめちゃんの弟分なのよね。ウタ先生、初めまして。わたしはこの子の親代わりのとんこと申します」

ウタ先生にそう挨拶したのは、旭山にいるエゾヒグマのとんこさんです。

「この子はエゾヒグマのこぐまなんですけれど…お母さんとはぐれてしまって…。今はわたしやピリカさんが親代わりをしているんです」

「そうだったんですか…」

「さあ、すなちゃん、ウタ先生にご挨拶しましょうね」

とんこさんはそう言うと、その茶色のこぐまの肩に優しく手を置きました。
茶色のこぐまは少し硬い表情をして立ったまま、おずおずと口を開きました。

「…えと…んと…すなしゅけ…ぼく…すなしゅけ…」

「まあ!上手にご挨拶できるのね!すなすけくんって言うのね。わたしはウタと言います。よろしくね!」

すなすけくんはウタ先生に褒められたのがうれしくて、硬かった表情がゆるんで笑顔を見せました。

5️⃣

「あ!うららちゃん!」

ゆめちゃんは、うららちゃんがいることに気づくとすぐに走り寄っていきました。

すなすけくんは、いつもお世話をやいてくれるゆめちゃんが自分のそばから離れてしまったので、再び硬い表情になってしまいました。

「ウタ先生、今日はすなすけくんが初めてのベビールームなので、わたし達このままお部屋に残って様子を見ていてもよろしいでしょうか?」

ピリカさんが少し心配そうに言いました。

「ええ、もちろんです。その方がすなすけくんも安心すると思いますから、ぜひそうしてください」

ピリカさんととんこさんはウタ先生に促されて、壁際にあるソファに座って、お帰りのときまで待つことにしました。

6️⃣

「うららちゃん、あしょぼ!」

「うん!なにちてあちょぶ?」

「んとねー、おままごと!」

「うん!うらら、おままごとしゅき!」

ゆめちゃんとうららちゃんはおままごとをすることにしたようです。

おもちゃが置いてある棚から、木製のおままごとセットを取り出して、ふかふかのカーペットの上にキルトを敷いて、2人はその上におままごとのお鍋やまな板やお皿などを丁寧に並べ始めました。

「ゆめはねー、おかあさんやる!」

「うららもおかあさん!」

「じゃあ、ふたりともおかあさんね!」

「うん!」

2人は仲良くおままごとを始めました。

すなすけくんはそれをじっと見ていましたが、突然2人の側まで走っていきました。
それから、おままごとの道具を両方のおててでガシャン!ガシャン!と音を立ててバラバラに散らかしてしまったのでした。

「なにしゅるの!すなちゃん!」

「…ふぇ…ぇ…ん…あーんあーん」

ゆめちゃんはすなすけくんに怒りましたが、まだ小さいうららちゃんは突然のことに驚いて泣き出してしまいました。

「…すなしゅけ…こりぇ…やだもん…」

ウタ先生はしばらく3人の様子を見ることにしました。
すぐに大人が出ていってはこどもたちの成長を邪魔してしまうと思っているからです。

ゆめちゃんは、あーんあーんと声をあげて泣いているうららちゃんの頭を撫でて慰めようとしています。

一方、すなすけくんはまた硬い表情で立ち尽くしていました。

それを見ていたピリカさんととんこさんは、ピリカさんはゆめちゃんとうららちゃんのところへ慰めに行き、とんこさんはすなすけくんのところへ行って、すなすけくんを抱き上げてソファに連れていきました。

7️⃣

ベビールームの中が少し静まり返ったそのとき、コンコンと誰かがやってきました。
アルンくんです。

「こんにちは!ウタ先生、今日はシャオくんとレイちゃんはおうちでリーパパのお手伝いをするって言うから、ぼく時間あるから来ちゃった。何かお手伝いすることある?」

「ああ、アルンくん、良いところに来てくれたわ」

ウタ先生はそう言うと、アルンくんに今さっきあった出来事を話しました。

「そっか、すなすけくんは一緒に遊びたかったのかな?」

アルンくんはすなすけくんに優しく話しかけました。

すなすけくんはとんこさんに抱っこされたまま身体も表情も硬くして、とんこさんにぎゅっとしがみついています。

「すなちゃん、アルンお兄ちゃんが、すなちゃんに話しかけてくれてるよ。お返事しないの?」

「………」

「ぼくの背中に乗せてあげようか?おちびちゃんたちはみんな、ぼくの背中に乗ると楽しいって喜んでくれるんだよ」

「すなちゃん、アルンお兄ちゃんがお背中に乗せてくれるって!のんのしてみようか?ん?」

すなすけくんはチラッとアルンくんの方を見ましたが、すぐにとんこさんの胸に顔をうずめてしまいました。

「ダメかー。結構おちびちゃんたちにウケが良いんだけどなぁ パオン」

アルンくんが笑いながらそういった時、
プルルプルル
アルンくんのスマホが鳴りました。

「はい、アルンです。あ!フブキくん!うん、うん。今ね、ぼくベビールームに来てるんだ。うん、うん」

アルンくんはすなすけくんから少し離れたところへ行き、今あった出来事をフブキくんに話しました。

電話を切ると、アルンくんは少し安心したようにニコニコしています。

「さて、どうなるかな」

アルンくんは何やら楽しみにしているようです。

8️⃣

うららちゃんは、ゆめちゃんとピリカさんに慰めてもらって、ようやく泣き止み、2人で再びおままごとを並べはじめました。

ピリカさんは安心してソファに戻りました。
すなすけくんは、まだとんこさんの胸に顔をうずめたまま、ぎゅっとしがみついています。

「よほど、おままごとが嫌だったのかしらねぇ…」

「すなちゃん男の子だから。おままごとはつまらないと思ったのかしら」

ピリカさんととんこさんは少し困った顔をして、でもすなすけくんを愛おしそうに見つめました。

(後編へ続く)
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