「ベビールームのとある秋の1日」
~ベビールームのウタ先生とおちびさんたち~5
ここは少人数制のベビールーム。
お母さんやお父さんがお仕事だったり、育児中に身体を休ませたかったり、さまざまな理由で赤ちゃんたちを預けることができる託児施設です。
広いイングリッシュガーデンを設えた老舗ホテルの一室にある、このベビールームは人気があり、いつも満室です。
ツキノワグマのウタ先生は、このベビールームのナニーです。
いつもは、黒のロングワンピースに白襟、白カフスに白いフリルのエプロンを身に着けているんですが、今朝はウタ先生には珍しいジャージ姿で赤ちゃんたちを待っています。
今日は特別に何かあるのでしょうか?
コンコン
「ウタ先生、おはようございます!」
「ウタしぇんしぇ、おはよごじゃいましゅ パオン」
「おはようございます!ウタイさん、アルンくん!」
「ウタ先生、この子ったら今日が楽しみすぎて、昨日の夜なかなか寝付けなかったんですよ ウフフ」
「まあ!そうだったんですね。アルンくん!今日楽しみね!」
「うん!はやく、みんなこないかなー!」
すると、エレベーターからベビールームへ続く廊下から声が聞こえてきました。
「こら!フブキ!ホテルの廊下を走ったらダメですよ!」
「はぁーい…ママ……あ!アルンだ!」パタパタパタ…
「もう。走っちゃダメって言ってるそばから」
「おはよー!しぇんしぇい!アルン!」
「フブキくん、ユキさん!おはようございます!」
「あのね、あのね、おれ、これもってきたんだ」
「あら!フブキくんのスコップ、カッコいいわねぇ」
「フブキくん!スコップかっこいいね!パオン」
「エヘヘ。あれ?アルン、スコップは?」
「ぼくはこれ!」
アルンくんはお鼻を高く上げました。
「おはな?」
「うん!ぼくはおはなで、つちをほるのがとくいなんだ!」
「すっげぇ!アルンかっこいい!あとで、つちほるとこみしぇてね!」
「うん!いいよ」
コンコン
「ウタ先生、おはようございます」
「ウタしぇんしぇ、おはよごじゃいまちゅ」
「イッちゃんさん、ホウちゃん!おはようございます!」
「しぇんしぇ!みてみて!これかわいいやろ?」
「あら、ピンク色の長ぐつにおリボンが付いてるのね!ホウちゃんはおしゃれさんねぇ」
「これな、ママがえらんでくれたんよ」
「そうなのね!とってもホウちゃんに似合ってるわよ」
「おおきに!ニコニコ」
「おはようございます」
「ウタしぇんしぇ、おはよごじゃいまちゅ プルプル」
「良浜さん、楓浜ちゃん!おはようございます!」
「ふうちゃん!おはよう!」パタパタ…
「ホウちゃん!おはよう」
「わぁ!ふうちゃんのながぐちゅ、あかいろでかわいいなぁ!」
「あのね、これね、おねえちゃまのなの」
「えー!いいなぁ、おねえちゃまのなんだ!」
女の子二人はおしゃれの話に夢中です。
それから、おちびさんたちはお母さんたちに行ってらっしゃいのご挨拶をして、丸いローテーブルの周りにある、それぞれの小さな椅子に座りました。
「さてさて、みんな、あらためまして、おはようございます!」
「おはようごじゃいまーしゅ!!」
「今日はーーみんなが待ちに待ったー」
「おいもほりーーーー!!」
「おいもほりのひーー!!」
ウタ先生が最後まで言うのを待ちきれないように、おちびさんたちは食い気味に大きな声で言いました。
そうです、今日はベビールームの秋の恒例の【お芋掘り】の日なんです。
今年からベビールームに入ったおちびさんたちにとっては初めてのことです。
「じゃあ、お帽子をかぶったら農園に行きましょうか!」
「はーーーい!!」
みんなは元気よくお返事をして、それぞれの戸棚から自分のお帽子を取り出して被りました。
小さなバケツにスコップを入れて持って、長ぐつを履いたら、さあ、お出かけです。
ホテルの廊下に出て、みんなおしゃべりしないで良い子に歩きます。
(しーっ!…だよ…)
みんなは口元に指を当てて、それぞれのお顔を見合わせます。
でも、みんな嬉しくて口元とほっぺが自然と緩んでしまうのです。
クスクス…ウフフ…クスクス…
そ~っとそ~っと静かに、でもちょっぴり足の運びが早くなってしまいます。
本当はみんなすぐにでも走り出して、ホテルのお庭に飛び出したいのを我慢しているのです。
エレベーターを降りてロビーに出ると、ロッキー支配人が出迎えてくれました。
「おや、おちびさんたち、おはようございます!フフフ」
「ロッキーしゃん!おはよごじゃいまちゅ!!」
「ウタ先生、おはようございます。今日は例のあれですかな?」
「はい!秋の恒例の!この子たちは初めてのお芋掘りなんです」
「それはそれは!楽しみですなぁ。では既にティールームには連絡済みなんですね」
「ええ!先日、カーラ夫人にどんなスイーツが子どもたちが喜ぶかしらって相談させていただきました!」
カーラ夫人はロッキー支配人の奥さまで、この老舗ホテルのコンシェルジュとティールームのマネージャーを兼任しています。
カーラ夫人の考えるスイーツはシンプルながらも味には定評があり、ティールームで出すとたちまち売り切れてしまうほどです。
今日これからお芋を収穫したら、ティールームでおちびさんたちが喜ぶスイーツを作ってくれることになっているのでした。
「では、みなさん、お芋掘り楽しんできてくださいね フフフ」
「いってきまーしゅ!!」
みんなはロッキー支配人にご挨拶をして、おててを振り、ウタ先生に連れられてホテルの庭にある農園に向かいました。
♪ あるこ~あるこ~ぼくらは~げんき~♪…キャッキャッ!アハハ!
おちびさんたちはおててを繋ぎ、お歌を歌いながら、大きく腕を振って元気よく歩きます。
見渡すと、ホテルのイングリッシュガーデンは、すっかり秋の景色に変わっていました。
色とりどりの秋バラやオレンジやピンク色のダリア、見頃を迎えたキバナコスモスの鮮やかなレモンイエローが一面に広がって、来る人たちの目を楽しませてくれています。
それらの花々の間を通り抜けた先に、ホテルが運営している農園があるのです。
その畑で栽培している野菜やハーブなどは、ホテルのレストランやティールームで使用していて、その見た目や味の濃さなどから、お客さまたちからとても評判になっているのでした。
その畑の一角に、今日おちびさんたちが楽しみにしているさつま芋畑があるのです。
「さあ!着きましたよ!」
「わーい!わーい!はやくおいもしゃんほるー!!」
「では、まず先生がお手本を見せるから、よく見ててね!」
「はーーーい!!」
「まずは…こうやってスコップを優しく土の中に入れて土を掘っていきます。スコップを強く入れてしまうと、お芋さんが傷ついてしまいますからね」
「はーーーい!!」
「もう少し掘ったら、お芋さんが出てくると思うんだけど…ヨイショッ……キャーーーーーーッ!!!」
ウタ先生は大きな声で叫んだと同時にドスンと尻もちをついてしまいました。
「ウタしぇんしぇーーーー!!」
「どうちたでしゅかーーー!!」
「ミ…ミミズが……」
「みみじゅ?」
みんなが土の中を覗きこむと、そこにはミミズが元気よく動いていました。
「わー!みみじゅしゃんだー!」ワイワイ!キャッキャッ!
「ダメよー!みんなミミズさんに触らないでー!」
つづく
ベビールームのお話大好き!
おちびさんたち、今日はお芋掘りなんだね
続き楽しみにしてます!
かわいいベビールームのお話きてたーー
みんな仕草も話し方も話す内容もお洋服も全部かわいすぎる
フブキくんのお↑れ↓、なんかわかります
かわいいキッズルームのお話待ってました
続きが楽しみ
続き楽しみ
分かる!w
小さい子たち見るといつのまにかわいわいスレで読んだ物語思い出すし
動物たちに見えちゃうよねw
末期かちらw
~ベビールームのウタ先生とおちびさんたち~5
「ベビールームのとある秋の1日」(2)
グワッグワッ…クワックワッ…
ウタ先生とおちびさんたちの賑やかな声を聞きつけて、アイガモさんたちがおしりを振りながら集まってきました。
「おやまあ!何やら騒がしいと思って来てみたら、ウタ先生じゃないの!そんなところにへたり込んで、またミミズが出たって腰を抜かしたんだね! グワッグワッ」
「あ!アイガモの皆さん、こんにちは。…ええ、ミミズにはいつまで経っても慣れなくて…」
「アハハハハ!あらあら、またミミズたちに驚かされたのね!」
「ウタちゃんは相変わらずだわねぇ オホホホホ」
「ほんとほんと クワックワッ」
アイガモさんたちは、毎年畑のミミズに驚いて腰を抜かすウタ先生には慣れっこです。
「さてと、ではここからはわたくしたちの出番ですわね グワッグワッ」
「おちびさんたち、見ててごらんなさい クワックワッ」
そう言われて、おちびさんたちはしゃがみ込んでアイガモさんたちをジッと見つめました。
「みなさん!では、いきますわよ!それっ!パクッ」
「それっ! パクッパクッ!」
「はいっ! パクッパクッパクッ!」
「わー!しゅごーい!」キャー!キャー!パチパチパチパチ!
アイガモさんたちは、土の中にいるミミズを見つけると素早く捕まえて食べてしまいました。
その動きの鮮やかなこと鮮やかなこと!
おちびさんたちは、わー!と歓声を上げ、興味しんしんでお目目をキラキラさせて見入っています。
アイガモさんたちは、ここの農園の野菜を食べ尽くしてしまう虫たちを退治するお仕事をしています。
アイガモさんたちのおかげで、このホテルで育てた野菜やハーブなどは、農薬を使っていないので安心して食べられると大変評判が良いのです。
ミミズは悪さはしませんが、何よりアイガモさんたちの大好物なんです。
「さあ!おちびさんたち、私たちがいるから安心してお芋掘り始めてごらんなさいな グワッグワッ」
「がんばってたくさん取るんですよ クワックワッ」
「楽しんでちょうだいね ホホホ」
「アイガモのおばちゃまたち!ありがとうーー!!」
おちびさんたちは張り切って土を掘りはじめました。
「おれ、いーっぱいとるー!」
「ぼく、いっぱいほるんだ! パオン」
「ホウはここにしよか」
「ふうは、ふうは、ここにしゅる プルプル」
おちびさんたちは、スコップやお鼻やおててで、夢中になって土を掘り返していきました。
「わー!アルンかっこいいー!おはなでほれりゅんだね!」
「エヘヘ。ぼくね、ママとスーリヤおばしゃんに、あなのほりかたおしょわったんだ!」
「アルンええなぁ。おしえてくれるひとがいっぱいおるねんな」
「アルンくん、しゅごいでちゅ プルプル」
エヘヘ!アハハ!ワイワイ!キャッキャッ!
みんな夢中になって掘った土があちこちに飛んでいっては、自分たちのお顔に降りかかっても、お構いなしに掘り続けました。
すると…
「あっ!!…」
アルンくんが大きな声を出しました。
みんながアルンくんの方を見ると…
「あったーー!おいもしゃん、あったよーー!パオン!」
アルンくんは、自分で掘り当てたお芋をお鼻で高々と上げました。
「わー!アルンしゅごーい!おっきいおいもしゃんだー!」
「アルンしゅごいなぁ!おっきなおいもしゃんとれたんやな」
「アルンくん、しゅごいねぇ プルプル」
「エヘヘ パオン」
「しょれ、おっきいから、おいもしゃんのおうしゃまだね!」
「ほんまや!おうさまや!」
「おいもしゃんのおうしゃま!」
ワーイワーイ!オウサマー!キャッキャッ!
「ほんなら、ホウもおっきなおいもしゃんとらな!」
「おれも!」
「ふうも、ふうも!」
みんなアルンくんみたいに大きなお芋さんを取ろうと、ますます張り切って土を掘っていきました。
「あっ!みてや!おいもしゃんとれたでー!」
「ホウちゃんも、おおきなのとれたね!」
「きれいなおいもしゃんでしゅ プルプル」
「ほんとだー!ほそながくて、きれいなおいもしゃんだね! パオン」
「じゃあこれは、おいもしゃんのおひめさまやな!」
ワーイ!オヒメサマ!アハハ!
「わぁ…ふうも、ふうも、おいもしゃんとれた プルプル」
「ふうちゃんのおいもしゃんかわええなぁ」
「わー!ちっちゃくてあかちゃんみたいだ!」
「じゃあ、ふうちゃんのは、おいもしゃんのあかちゃんだね!パオン」
アハハ!ウフフ!ワーイ!
「あっ!みてみてー!おれも、おいもしゃんとれたー!」
「フブキくんのふたつ、くっついてる! パオン」
「ふたごしゃんでしゅ!プルプル」
「うえののふたごしゃんとおなじやなぁ!」
ホントダー!カワイイネー!ウフフ!アハハ!
みんなはそれからも次々とお芋を掘っていきました。
おちびさんたちが土を掘り返す度に、アイガモさんたちは土の中から出てきたミミズをパクッ!パクッ!と食べてくれました。
しばらくして、おちびさんたちが収穫したお芋さんは、大きなカゴに山のように積まれました。
「では、アイガモさんたちにお礼を言いましょうね!」
「アイガモのおばちゃまたち!!どうもありがとうーー!!」
「ウフフ わたくしたちも楽しませてもらったわ。おちびさんたち、どうもありがとうね! グワッグワッ!」
マタネー!バイバーイ!バイバーイ!
マタキテチョウダイネー!グワッグワッ!クワックワッ!
おちびさんたちはウタ先生に連れられて、またホテルに戻ってきました。
みんな泥だらけなので、ホテルの裏の従業員用の出入り口から入ることにしました。
従業員用の通路を進んでいると、ロッキー支配人が向こうから歩いてきて、みんなを見つけて声をかけてくれました。
「おや?いつものみなさんは、どこに行ったのかな?ウタ先生、今朝見たおちびさんたちは、どこですかな?」
「えー!おれ、ここにいるよ!」
「アルンのことわからないの? パオン」
「ホウはここやねん」
「ふうは、ふうはここでしゅ プルプル」
おちびさんたちは真剣な表情でロッキー支配人に言いました。
「ふふふふふ。いやぁ、みなさんのお顔が茶色になっているんでね、てっきり新しくツキノワグマの仔熊さんたちが入ってきたのかと思いましたよ」
おちびさんたちは、白い毛やグレーの毛が泥で汚れて、すっかり茶色になってしまっていたのでした。
「そうですわよ、ロッキーさん!この子たちは、私の子どもの四つ子ちゃんなんですわよ ウフフ」
ウタ先生が、ロッキー支配人の冗談に乗って言いました。
おちびさんたちは、それを聞いてキョロキョロとお互いの顔を見ました。
すると、自分がホッキョクグマなのか、ゾウなのか、パンダなのか分からないくらいに、お顔が茶色になっていたのに気付いて、お目々をまんまるくしてしまいました。
「アハハ!ほんまや!みんなのおかお、ツキノワグマになってもうてん!」
「ウフフ ぼくたちツキノワグマさんだって!パオン」
「おれ!ツキノワグマにへんしんしたんだ!」
「エヘヘ ふうもクマしゃんになったでしゅ プルプル」
ウフフウフフ!クスクスクスクス!
「ハッハッハッ!皆さん、すっかりツキノワグマさんですなぁ。そうそう、ウタ先生、ベビールームのお風呂では皆さん一緒に入るのは大変でしょうから、ぜひ従業員用の大浴場を使ってください。ちょうどいい温度にお湯を沸かしてありますから、すぐに入れますよ」
「ありがとうございます!じゃあ早速この子たちを入れてきますね!」
「ロッキーしゃん!どうもありがとうーー!!」
ウタ先生に連れられて、おちびさんたちはお風呂に入りました。
ウタ先生にお顔や体やおててやお鼻に着いた泥をキレイに洗ってもらって、みんなはようやくツキノワグマさんからホッキョクグマさん・ゾウさん・パンダさんに戻ることができました。
お風呂から出てきたおちびさんたちは、頭からふかしまんじゅうみたいにほわほわと湯気が出ているみたいに温まって、ほっぺはほんのりピンク色でツヤツヤになって、ベビールームに戻りました。
つづく
みんなかわいい!
お風呂上がりのほっぺがピンクなふかしまんじゅうな子たち、おやつを前にまたわちゃわちゃするのかな
続き楽しみです
続ききてたー!
泥んこツキノワグマのちびっこたち可愛いw
自分たちで収穫したお芋のスイーツ楽しみだね
それぞれに素敵なお芋さんを掘って、いい思い出になりましたね。
お家に帰って自慢するんだろうなぁ…本当に可愛い。
ほわほわのお饅頭になった後は、いよいよ美味しいおやつでしょうか。続きが楽しみです。