小雅ちゃんのポシェット-2018/04/24(火)-母ちゃんとイオンへ-二つの物語

「母ちゃん！母ちゃん！うわああああん！」

急に立ち止まって振り返った小雅は、なぜか大泣きしながらこちらへと駆け出した。
走らない！と注意するよりも早く、私のどんっと飛び込んできた。

「どうしたの？ほら、お買い物は？」
「うわああああん！小雅、もうバッグなんていらないー！」
「えっ？バッグ？あんたバッグを欲しかったの？」
「小雅には母ちゃんが作ってくれたポシェットがあるの！だからバッグなんてうわああああん！」
「ちょっと…小雅…」
「ごめんなさい！ポシェットがあるのに、欲しがってごめんなさい！うわああああん！」
「小雅…」

私は小雅を抱きしめて、小雅が泣き止むのをじっと待った。

小雅が泣き止んだのは、実に一時間後。休憩できるスペースのベンチへ移動して、水筒のお茶を飲ませた。
小雅は泣き疲れて少し眠そうにしつつも、バッグを欲しがった理由を話してくれた。

「母ちゃん、フランスのお客さんからバッグもらったでしょう？白くて、ピカピカの硬いの」
「そうね、もったいなくて箱から出せないままだけど」
「小雅ね、ピカピカの硬いバッグに憧れたの…」

ピカピカの硬い、とは、革製の事を言っているのだろう。

「ピカピカの硬いバッグをね、持ってたらね、素敵な大人のパンダになれると思ったの…」

小雅の言葉とまぶたの動きが、ゆっくりしてきた。小雅の頭を膝へ乗せて、ここで少し寝かせることにした。

今朝、頑張って早起きしたもんね。眠いよね。
さっきは「いらない」って言ってたけど、本当は欲しいよね、ピカピカの硬いバッグ…。